今見たいと思っている映画     最近何や彼やで映画館に行けません

 サロンシネマ 「食と農の映画祭2019 in ひろしま」(12月6日~12日)に見逃したもの
 カンパイ!日本酒に恋した女たち 山懐に抱かれて 長いお別れ
家族を想うとき(12月27日~)
 八丁座 人間失格 太宰治と3人の女たち(12月6日~) 沢尻エリカが出ているが・・
 横川シネマ 米軍が最も恐れた男カメジロー不屈の生涯(11月9日~29日)
聖なる泉の少女
 TOHOシネマズ緑井
 イオンシネマ西風新都
 広島での公開は? アートのお値段

★★ ずぶぬれて犬ころ 横川シネマ
自由律の俳人、25歳という若さで亡くなった、住宅顕信(すみたくけんしん)の物語。面白い経験の持ち主。中学卒業後、夜間の調理学校に通いながら、昼はレストランで働く。年上の女性と同棲。その後調理の道をやめ、岡山市の清掃業務に従事。宗教に興味を持ち通信教育で勉強し、西本願寺で得度。急性骨髄性白血病を発病、結婚して幼子もいたが、妻の実家の意向で離婚。病室で子育てをしたらしいが、映画ではそのような場面は無く、この辺りの描写は何となく曖昧。映画では、現在の別のストーリーが絡む。顕信の中学時代の恩師が教頭になっていて、いじめられっ子に顕信の話をする。この子が顕信に、俳句にのめり込んでいく。しかし、2つのストーリーの並列はうまくいっているとは言えない。気になったのは、教頭がいじめに気付いている(現場にも一度遭遇している)のに、何も対策を講じないのは有り得ないだろう。俳句の力で立ち直ったと言いたいのだろうか。この中学生の話の為に、顕信の物語が割を食っていると思う。

★★★ がんになる前に知っておくこと 横川シネマ
ドキュメンタリー映画、なのだろうが内容は、ナビゲーターの若い女性(なんとなくNHKアナウンサーの近江友里恵を思い出させる)がガン関係の医師、看護師、患者、などへのインタビューをするというものである。放射線診断医、腫瘍内科医、乳腺外科医、放射線腫瘍医、緩和医療医、臨床研究医、ガン看護専門看護師、ガン相談支援センター相談員、ピアサポート(仲間同士が相互に体験や感情を共有し支援しあう精神的支援活動を主体とするもの)のサポーター、マギーズ東京(英国発祥、ガンになった人とその家族や友人がとまどい孤独なとき、自分自身の力を取り戻すための場)のセンタ長、ガン経験者、など、15人にインタビュ-をする。ガンについての基礎的な知識、治療法、患者や家族のサポート、特に新しいことを学んだわけではありませんが、興味深く見ることが出来ました。QOLという言葉が繰り返し出てきて、ガンになったあと生活をどうするか、一人一人考えることが大切、そして、ガンと共存する、という言葉が印象に残っています。全体的に女性を中心に据えているのが、男として少々物足りない。

★★ 彼女は夢で踊る 横川シネマ
広島第一劇場というストリップ劇場についての映画です。監督は時川英之(ラジオの恋、シネマの天使、恋のはなシアター。広島出身)、主演は加藤雅也、他に、犬飼貴丈、岡村いずみ、矢沢ようこ、横山雄二、ちょい役で、広島のローカルタレント、松本裕見子、さいねい龍二、など。劇場は2017年1月31日に閉館したが、その後復活したり閉館したりを繰り返す。ストーリーは、加藤雅也がひょんなことから劇場に就職し(若い頃は犬飼貴丈が演じる)社長を引き継いで閉館に至るまでを、丁寧に描いている。劇場に入る切っ掛けとなった踊り子との淡い恋、がメインの流れと言えなくもない。劇場が主役かもしれない。ストリップで存在論的なことを語ろうとする部分もあるが、うまくいっているとは言えないし、その必要もないだろう。犬飼貴丈が恋する岡村いずみは魅力的、歳を取った加藤雅也の前に現れる幻覚のような岡村いずみも更にカワイイ。ストリップという題材なのに何かほんわかとしたムードがある。挿入歌の、Radiohead の Creep、松山千春の恋、が映画にピッタリだった。
7月15日から横川シネマ(8月7日まで)、7月26日から福山駅前シネマモード(8月15日まで)、で先行上映。全国公開は来年。
今日の横川シネマは半分以上の入りだった。ビックリしたが、舞台挨拶があるとのこと。折角なので10分ほど残って聞きました。横山雄二と矢沢ようこの二人が登壇。矢沢は現役のストリッパーということで踊りを披露、勿論服は脱ぎません。パンフレットを購入するとこの二人にサインが貰えるので、長い列が出来ていました。

★★★ えんとこの歌 八丁座弐
副題:寝たきり歌人・遠藤滋。えんとこ、とは遠藤滋のいるところ、という意味。縁のあるところ、という意味合いもあるようです。彼はこの映画の監督、伊勢真一の大学時代の友人、脳性麻痺で介助を受けながら生活している。伊勢は1999年、遠藤を3年間撮影した「えんとこ」という映画を作り、これはその続編。この映画には昔の映像も挿入されている。映像はほとんど、えんとこ、から外には出ない。アパートの一室のようなところでの遠藤と介助者との心の交流を丹念に追っている。遠藤の寝たきり生活は35年に及び、その間の介助者は二千を超えるとのこと。介助者の手配をだれがしているのか、映画を見る限りではよく判らないが、頻繁に登場する介助者が数人いたので、その人たちがやっているのか。介助者の繋がりで新たな介助者が来たり、募集をかけたりしているようです。金額には言及されなかったが、手当も出るとのこと。遠藤は1947年生まれ、50代後半から短歌を詠むようになり、映画でもたくさん紹介される。
自らを他人と比ぶることなかれ同じいのちは他にひとつなし
足熱し身体も熱し痛し苦しかく叫びいて今日も明けゆく
手も足も動かぬ身にて身にていまさらに何をせむとや恋の告白
激しくもわが拠り所探りきて障害持つ身に「いのちありがとう」
最後の方に、遠藤が海水浴に行く場面があります。海に浮かんで、足を動かし、いい笑顔でした。生きようとする意思と力の強さに感動しました。彼の生き様が介助者を呼び寄せるのでしょう。

★★ 誰がために憲法はある 横川シネマ
最初に「憲法くん」が登場。お笑い芸人・松元ヒロが20年以上、日本国憲法の大切さを伝えるためユーモラスに演じ続けているキャラクターです。「わたしというのは、戦争が終わった後、こんなに恐ろしくて悲しいことは、二度とあってはならない、という思いから生まれた、理想だったのではありませんか。わたしの初心、わたしの魂は、憲法の前文に書かれています」。この映画では、87歳になる渡辺美佐子による一人語り。憲法前文を一気に暗唱する。そして、理想を現実に合わせる(憲法改正する)のではなく、現実を理想に合わせなくはと言う。
次の主要パートは、彼女が33年間、鎮魂の想いを込めてベテラン女優たちと原爆朗読劇の公演を続けていることについて。全国各地を回ってきたが、今年で幕を閉じる。この公演に関する映像が流され、渡辺をはじめ、他の女優たちがこの活動を通じて抱くそれぞれの思いを述べる。
最後に再度憲法くんが登場して終わる。
渡辺が原爆朗読劇をやる切っ掛け、それと憲法の絡み、判らなくはないが、強く訴えるものに欠ける。惜しい。

★★★★ 天国でまた会おう サロンシネマ2
ピエール・ルメートル原作・脚本。面白い、楽しめます、鑑賞後、なんとも言い表せないカタルシスのある映画。
戦場で生き埋めになりそうな友を助けるが、砲弾が飛んできて顔の下半分を失うエドゥアール。いい家の出なのだが、そのような状態で、父親とうまくいってないということもあり、パリに戻りたくない。一方、助けられた方のアルベール、責任を感じたのか、友情からか、エドゥアールの世話をし、パリに行って2人で暮らすようになる。程なくカワイイ女の子が加わり、なにやら不思議な生活の始まり。様々な出来事が起こり、隠された人間関係が明らかになって、あっという間の二時間。エドゥアールの話は悲しい結末なのだろうが、納得させるものを持っている。アルベールの方は、意外ではあるが終わり方が素晴らしい。このことが映画全体のトーンを穏やかにしていると思う。なお、アルベール役の、アルベール・デュポンテルが監督も務めている。

★★★ セメントの記憶 横川シネマ
一人称の語りで始まる。場所は恐らくシリア、レバノンのベイルートに働きに行っている父親が帰ってくる。2人の映像はない。その後、ベイルートの高層ビル建築現場が舞台になる。高いところから見るベイルートの街と海はとてもきれい。シリア人労働者は仕事が終わったらそのビルの地下で眠る。まるで奴隷労働。建築現場映像の合間に、爆破される建物の映像が挟まれる。人が埋もれ、その救助作業も映し出される。シリアとレバノン、破壊と創造、戦争と建築。語りも音楽もほとんどなく、映像に伴う音だけ、とても禁欲的な映画。だが、映像は美しい、と言えるか。例えば、建築現場の水溜まりを鏡にした映像。ミキサー車のドラムにカメラを置いたと思われる映像、回転するベイルートの街が延々と映される。これらはドキュメンタリーに相応しいと言えるのか。最後に、「外国で働くすべての労働者に捧げる」という文字、エンドロールの最後には、誰かの名前が出て、「君たちの世代に戦争がないことを!」、とストレートに書くならば、映像に凝らずにもう少し主張を素直に出した方が良かったのではないか。

★★★★ 僕たちは希望という名の列車に乗った サロンシネマ1
長い邦題ですが、原題は THE SILENT REVOLUTION (静かな革命)、結構いい日本版タイトルかもしれません。
東西冷戦下のドイツのお話、実話に基づいているそうです。1956年、東ドイツの高校生が偶々ハンガリー動乱のことを知ることから物語が始まる。授業中に、あろう事かハンガリーの死亡者に黙祷を捧げるのだ。授業担当者から校長、更に更に騒ぎが広がっていく。高校生がどこまで事の本質を理解しているのかは疑問であるが、若さの情熱で突き進んでいき、それぞれの家庭の問題も炙り出される。尋問は卑劣である。卒業試験を控えていても、若者は純粋だ。最後にどっぷり体制派だった父親が息子を救うのは感動的だった。いい映画です。


『猟奇的な彼女』に出てくる台詞とのこと。原作もドラマも映画も、日本でのテレビも、全く知りません。

★★★ 主戦場 横川シネマ
副題:ようこそ、「慰安婦問題」論争の渦中へ(ようこそバトルグラウンドへ)
英題: SHUSENJO : The Main Battleground of The Comfort Women Issue
「従軍慰安婦」論争を、様々な視点から追求するドキュメンタリー、です。左も右も著名な人物がインタビューに応じています。杉田水脈、藤岡信勝、ケント・ギルバート、櫻井よしこ、などなど。ミキ・デザキ監督が日系アメリカ人ということ、当時大学院生であったこと、などのためでしょうか。その為、公開してから、商業映画だとは思っていなかったということで公開差し止め請求が行われたりしています。
映画ほぼそのようなインタビューで構成されています。監督はひたすら聞き役に徹します。ただ、色々な関連映像が流され、構成・編集の妙で、左右が論争しているようにも見えます。最後の方に、日砂恵ケネディという女性が登場、櫻井よしこの後継者と目されていた人物で、今は右を離れていて、そのような話をします。映画はどちらの陣営が正しいとは言っていませんが、この辺りが結論でしょう。
この映画を観ていて考えさせられたのは、日本は、日本の政治は変な方向に進んでいるのではないかということ。本当に憂慮すべきことでしょう。
なお、タイトルの「主戦場」とは、慰安婦問題の主戦場がアメリカに移っているということを表しているようです。アメリカの彼方此方に慰安婦像が造られていることが取り上げられています。

★★ 天才作家の妻 サロンシネマ2
作家がノーベル賞を受賞したところから物語が始まる。予告編で示されているとおりに、過去の回想を織り交ぜながら、ストーリーは展開していく。なので、あまりハラハラどきどきはない。予告編がこの映画を壊しているのではないか。終わり方も、逃げている感じ。妻が息子に、帰ったら全てを話す、と言っているが、果たして・・・ 期待が大きかっただけにちょっと残念でした。



座席に書いてある、映画の名言。
風の谷のナウシカ、のよく意味のわからない台詞。

★★★★ 二人の女王 メアリーとエリザベス イオンシネマ西風新都
世界史の教科書にちょっと書いてあるようなことを膨らませて、見事なドラマに仕立てている。二人の女王に対して普通持っているイメージを崩さずに、人間味豊かな人物を作り出しているのは見事。二人がさほど美形になっていないのは史実なのか、衣装や装飾品が豪華なので、見ている方には一層物足りなさを感じる。スコットランドの自然は想像以上に過酷そうだが、それだからこそ圧倒的に美しい。イングランドもまた、それとは対照的な風景が心を打つ。音楽も魅力的で、見所満載の映画である。
余談だが、この映画の上映は広島ではここだけ。先日見た、ヴィクトリア女王、もここだけだった。ところが、3月になって、横川シネマで上映。昔はマニアックな映画はサロンシネマ、最近は横川シネマ、になっていた。横川シネマのあとサロンシネマという流れは時々あるが、イオンシネマ西風新都から横川シネマという流れは恐らく初めてではないか。まあ、二人の女王、という映画はマニアックとは言えないだろうが。

★★★★ グリーンブック サロンシネマ1
この映画、アカデミー賞で、作品賞(監督はピーター・ファレリ)、主演男優賞(ヴィゴ・モーテンセン)、助演男優賞(マハーシャラ・アリ)、脚本賞、編集賞の5部門にノミネートされ、作品賞、助演男優賞、脚本賞を受賞しています。最近、アカデミー賞はあまり信じていないのですが、これは傑作だと思います。タイトルは、1936年から1966年まで毎年出版された黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブック、のことです。粗野なイタリア系アメリカ人の運転手と黒人天才ピアニストが人種差別が激しい南部での演奏旅行を描いています。実話に基づく (inspired by a true story) と初めに出てきますが、基本的なことは事実のようです。歴史的な正確さに欠ける、白人の救世主的な描写になっている、ユーモアで差別は描けない、といった批判もあるようですが、そんなことは全く気になりませんでした。素晴らしい映画だと思います。まだの人は是非。



座った座席の前に。ブレードランナー、の台詞。英語では:
All those moments, will be lost in time...like, tears in rain...Time to die.
日本語訳に批判もあるようですが、字幕なので仕方ないでしょう。

★★★ ヴィクトリア女王 イオンシネマ西風新都
インドの青年が女王に記念品を渡すためイギリスに行き、女王と親しくなる、というお話。映画のはじめに、ほぼ (mostly) 史実に基づいた話、の字幕。映画の最後には、青年の死後日記が発見されたという記述。イギリスでは、青年に関するものが焼却される場面があるので、この日記をもとに映画が作られたのでしょう。ありそうな話だとは思います。ジュディ・デンチの存在感は圧倒的です。衣装も宮殿も、あらゆるものが豪華絢爛、贅沢の極み。その中で寂しい女王。まさにありそうなお話です。終わり方が秀逸。

★★★ ぼけますから、よろしくお願いします。 横川シネマ
監督・撮影・語り、信友直子。東京在住で数多くのドキュメンタリー番組を手がけている娘が、呉市で暮らしている両親を、泣きながら撮った1200日の記録。母、87歳、認知症。父、95歳、耳が遠い。見ていて強く思ったのは、母は、他の誰でもなく、父を求めているということ。その父は耳が遠いので母の要求を聞き流す。見える限り、父は補聴器を付けていないようだ。色々心を打つ場面が、様々なことを考えさせる場面が、続く。最後の場面は、運動をしなければといっていた父がそれを実行しているところ、二人が仲よさそうに散歩をしている。なんとなくホッとする終わり方である。
映画館で気になったこと。二人の遣り取りはたまに滑稽なことがある。そこで女性の笑い声が聞こえる。笑うところではないだろう。映画館を出る時、おばさんの台詞、「おもしろかった」。こんな感想があるのか!

★★★ 日々是好日 八丁座弐
黒木華主演、お茶の映画。公開前に、共演の樹木希林が亡くなったので、一層注目が集まった。10月13日公開で、なかなか見に行けず、もうダメかと思っていたら、八丁座が今月17日まで、3ヶ月のロングラン。7日に行ったのですが、ほぼ満席でした。
映画は茶室の場面が多く、お茶そのものの季節の変化、部屋の建具の交換、窓から見える景色の移り変わり、がほとんど。外の現実世界は時々挿入され、その対比が興味深い。例えば、主人公が長年付き合っていた男に裏切り行為をされ、もうすぐ結婚だったのに許すことが出来ず破談。ということが突然挿入される。そのことにはあまり深入りせず、彼女の心に傷はお茶に、お茶の先生によって癒やされる。その後も、新たな恋の話はあるのだが、全くフォローなし。最後はお茶の世界に深く進んでいくという感じで幕。このような静かな世界があるということにはちょっと感動。
樹木希林は勿論、多部未華子も好演。主人公の父親役、鶴見辰吾がいい雰囲気だった。


***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** 

2017年、見た映画は、17本。去年に比べれば少し増えました。しかし、昔のことを考えると、そして、今の方が自由な時間がたくさんあるはずなのに、どういうことか。見たいと思う映画はたくさんあります。なのに、映画館へ行こうという気が起こらないのです。何故なのか自分でもよく判りません。今年は行こう、と思ってはいます。1月に見たいものが三本あるのですが、果たして・・・

★★★ きみの鳥はうたえる 横川シネマ
佐藤泰志の小説をもとにした映画、「海炭市叙景」(2010)、「そこのみにて光輝く」(2014)、「オーバー・フェンス」(2016)に続く、四作目。僕(柄本佑)は、アルバイト先で知り合った静雄(染谷将太)と一緒に暮らしている。そこに、僕の現在のアルバイト先の同僚、佐知子(石橋静河)が絡んできて、一夏の青春が描かれる。特にこれといったストーリーがあるわけではなく、ひたすら遊び、飲んで踊る、といったところか。三角関係(四角関係)、職場の人間関係(店長は萩原聖人)、静雄の母親(渡辺真起子)が絡んだり、といったことはあるが、本筋ではない。なので、大きく心を動かされるということはないが、見終わってからじわじわと迫ってくる。
タイトルは、ビートルズの Your Bird Can Sing から、劇中で使われてはいるが、映画との絡みはよく判らない。それよりは、佐知子がカラオケで歌う、オリビアを聴きながら、が映画の雰囲気と合っていた。
佐藤泰志原作の映画としては、四作中で特に抜きん出たものではないが、静的な名作といったところか。
石橋静河、調べてみました。石橋凌と原田美枝子の次女。(朝食を食べながら)私が見る唯一のテレビドラマ、朝ドラの「半分、青い。」に律の奥さん役で出ていたとのこと、そういえば確かに。役柄が違うので気付きませんでした。

★★★★ カメラを止めるな! TOHOシネマズ緑井3
監督&俳優養成スクール・ENBUゼミナールの《シネマプロジェクト》第7弾作品、といわれても何のことかよく判らない。要するにマイナーな映画で、広島だったら横川シネマで上映するような作品(以前ならばサロンシネマということだったのだが)。案の定、早くから横川シネマでの上映がきまっていて、見に行こうと思っていたら、東京でも海外の映画祭でも評判になり、シネコンでも上映ということになった。監督は上田慎一郎、これまでは短編で異彩を放っていたそうだが、これが長編第一作。オーディションで選ばれた無名の俳優を使った。ストーリー(といえるかどうかは疑問だが)は、不思議な映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影、​本物を求める監督は中々OKを出さず42テイクになる場面も、そのうち撮影隊に本物のゾンビが襲いかかり、大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。というような展開で前半が終わり、エンドロールが流れる。このゾンビ映画のタイトルは、ONE CUT OF THE DEAD、これは海外でのタイトルにもなっている。前半は40分弱のワンカット。それから後半が始まる。この部分について書くとネタバレになってしまうが、前半のメイキング映像のようなもの、前半のストーリーの流れが変なところの理由がよく判り、実によく練られた脚本だと思う。血なまぐさいシーンが苦手でなかったら是非見るべき映画だと思います。TOHO、横川シネマ、以外にも、イオン、109シネマズ、でも上映中、10月には遅まきながら、サロンシネマでもやるようです。

★★★ フジコ・ヘミングの時間 サロンシネマ1
ピアニスト、フジコ・ヘミングの日本人監督によるドキュメンタリー。昔同僚が、耳の聞こえないすごいピアニストがいると言っていたのをよく覚えている。が、その時はさほど興味を引かれなかった。今回、予告編を見て、ちょっとズレたような感じの人物で、面白そうだったので行ってみる。まず驚くのは、80を過ぎているのに元気で世界中を飛び回り年間60回ほどもコンサートを開いていること。当たり前だがピアノもうまい、というか、聞かせる。ブレイクしたカンパネラは流石。映画は、世界中の魅力的な都市が紹介され、心震える音楽が流され、これだけでも充分。世界各地に家を持っていることにも驚く、4・5軒は出てきたか、どれも趣がある。少しずつ明かされる彼女の人生にも感動する。ナレーションはほとんどなく、字幕で最低限の情報が流され、多くはピアニストのおしゃべりが占めている。印象的だったのは、南米のコンサートで、ピアノをぼろくそに貶していたこと。で、たいていのコンサートで弾いていたピアノは、ベーゼンドルファだった。彼女は何歳まで活動するのか。CDを聞いてみよう。

★★★★ ラブレス 八丁座壱
隣のおばさんは寝ていたが、一度も睡魔に襲われることがなかった。単調な映像がないわけではないが、何か引きつけるものがあった。冒頭の雪景色の川の映像、物語が始まると雪が消えている季節で、ラストはまた雪が積もっていて初めの場面と見事に繋がる。ストーリーは離婚を控えた夫婦が子供を押しつけ合っている状況でスタート。それぞれに新しい恋人がいて、その描写も結構長い。どこにポイントがあるのか判らなくなる。で、子供が消える。警察に相談するが相手にされず、ボランティアに頼む。このボランティアがすごい、人数も多く驚くべき捜査能力を持っている。この捜索場面もかなり長い。そして結局は・・・ なにやら現代の縮図を見ているようである。母親がスマホ漬けなのには驚く。ロシア人のしゃべりにも驚愕。言語の特性か。静寂な場面も多いので、その対比が面白い。なかなかいい映画だと思う。ラブレス、ではなく、実は、ラブ希求、なのでは・・・


私が座った席。フォレストガンプ、の台詞が書いてあります。

★★★★ 万引き家族 八丁座弐
6月初め公開の話題作、やっと行けました。評判に違わぬいい映画です。まず、役者がいい。特に子役の二人。ラストシーンの女の子の目線、最高の終わり方です。次に、映像が美しい、キレイというのではなく、嵌まっているという感じ。家族が花火を見るシーン、見えないので音を聞くのだが、この絵が素晴らしい。そして、ストーリー展開が見事。家族が、寄って立つ所が不安定なはずなのに、しっかりまとまっている(ように見え)、ひとつの事件をきっかけに、それぞれの人物の過去が明らかになっていく、全てが判るわけではない、その不明が残す余韻によって我々に考える余地を残す。家族とは、善悪とは、幸せとは・・・

★★ ジェイン・ジェイコブズ 横川シネマ
副題、ニューヨ-ク都市革命計画。原題、CITIZEN JANE Battle for the City 、市民ジェインが街のために戦う。
タイトルや予告編を見て、大好きなニューヨークについての理解が深まり、美しい都市美を見ることができるのではないかと期待した。後者に関しては期待外れだったが、前者についてはまさにこの映画のメインポイントで、まじめすぎる内容、様々な人の証言、解説、などが多く、言葉に重点が置かれ、映画としての魅力はそがれている。とは言っても、ニューヨークの美しさは随所に織り込まれ、廃墟となったビルの破壊場面は迫力があった。映画の大きな流れは、ニューヨーク開発のプロ、ロバート・モーゼスの計画に対して、ジェイン・ジェイコブズたちが反対するというもの、それがかなり成功して、今のニューヨークがあるということである。翻って日本のことを考えると、ジェインのような人物がいなくて、東京などの大都会を中心に、日本の都市が本来持っていた魅力が失われてしまったということになる。最後はこんなことを考えてしまいました。日本橋の上の高速道路を撤去する計画があるが、果たしてどうなるか。

★★★★ ザ・ビッグハウス 横川シネマ

ザ・ビッグハウスとは、名門ミシガン大学のアメフトスタジアムの通称、全米最大で、10万人超を収容できる。映画はこのスタジアムの三日間を追ったドキュメンタリー、監督は想田和弘、あの観察映画のを標榜している人、これが第8弾、私が見たのは、牡蠣工場、港町、の二作です。三作の中では今作が一番、だと思います。飛行機からのスカイダイビングで始まり、ダイバーが超満員のスタジアムに降りて、セレモニー開始、チアガール、大人数のマーチングバンド、などなど物凄い迫力です。で、試合が始まるのですが、映像はその日の朝に逆戻り、試合に向けての様々な準備の様子を追います。その後も試合そのものよりは裏方の動きを中心に据え、試合後は、後片付け、翌日の試合への準備、と続いて二日目へ。一番印象的だったのは、最後にあった大学学長のパーティーでの演説。因みにミシガン大学は世界大学ランキングで21位だそうです。さもありなんです。撮影は2016年の秋、大統領選挙の最中、スタジアムの外を通る選挙カーが何度も写されました。観客が通る道での宗教活動も多く、アメリカという国の現実がこの映画から窺い知れます。多くの人に見て貰いたい映画ですが、横川シネマは今日が最終日、近頃、サロンシネマが横川シネマの二番煎じをやることがあるので、ひょっとして。

★★ 四万十 横川シネマ
サブタイトル、いのちの仕舞い。四万十川流域の人々を医療の面を中心に支えている内科医を追ったドキュメンタリー。
いのちの仕舞いとは、つまり、死。食べることができ、苦しむことなく、周りの人と話ができ、馴染みの人の中で最後を迎えること、が「いい仕舞い」。そのために医師は奮闘する。訪問治療がメインで、患者は喋れない人が多い。その映像は単調で、周りからイビキが聞こえてきた。しかし、折々挿入される四万十の景色は圧倒的に美しく、時に激しいこともある。最後に、お約束のごとく、看取りの場面が出てくる。この場面を予測し、期待していたが、思いの外あっさりしていてすんなり進行した。これがまさに自然死なのかもしれない、と思う。動けなくなってから死に至るまで、どのように過ごしたらいいのか、色々考えさせられた。

★★ ルイ14世の死 横川シネマ
かの有名なルイ14世が死に至る数週間を描いた作品。なので、舞台はほとんど王の寝室、動きが少なく、ストーリーもないようなもので、眠気に襲われる。それを追い払ったのは、音楽、レクイエム(キリエ)のようなものだと思う。それまでほとんど音楽がなかったので一層効果的だった。この辺りで印象的だった王の台詞:鶏肉が・・・ゼリー寄せの・・・食べたい! 後半は大学の医者が来たり、聖職者が来たり、孫(後のルイ15世)を薫陶したり、動きが出て面白くなる。王が亡くなると、解剖が行われる。当時普通のことだったのだろうか。どうやら誤診をしていたような侍医ファゴンの台詞:「次はもっと慎重に診断しよう。」、で映画はプッツンと終わる。なにやらどんでん返しという趣です。

★★ 終わった人 イオンシネマ西風新都7
定年退職後を描いた作品、紋切り型で、戯画化しすぎている。落ち込んだり高揚したりが極端。ストーリー的にもご都合主義が目立つ。まあ、それだからこそ楽しめるものにはなっている。面白い台詞が幾つか、散る桜残る桜も散る桜(良寛の辞世の句だそうです)、思い出と戦っても勝てない、卒婚。結局、人はどう生きたらいいのか、つまり、どう死んだらいいのか、だんだん切実になります。

★★★ 港町 横川シネマ
二年前に見た『牡蠣工場』の監督、恩田和宏の最新作。台本やナレーション、BGM等を排した、自ら「観察映画」と呼ぶドキュメンタリー。因みにこれまでの観察映画は、『選挙』(2007)、『精神』(2008)、『Peace』(2010)<観察映画番外編>、『演劇1』(2012)、『演劇2』(2012)、『選挙2』(2013)、『牡蠣工場』(2015)、この『港町』が第7弾。
参考までに、観察映画の十戒は以下。
1.被写体や題材に関するリサーチは行わない。
2.被写体との撮影内容に関する打ち合わせは、原則行わない。
3.台本は書かない。作品のテーマや落とし所も、撮影前やその最中に設定しない。行き当たりばったりでカメラを回し、予定調和を求めない。
4.機動性を高め臨機応変に状況に即応するため、カメラは原則僕が一人で回し、録音も自分で行う。
5.必要ないかも?と思っても、カメラはなるべく長時間、あらゆる場面で回す。
6.撮影は、「広く浅く」ではなく、「狭く深く」を心がける。「多角的な取材をしている」という幻想を演出するだけのアリバイ的な取材は慎む。
7.編集作業でも、予めテーマを設定しない。
8.ナレーション、説明テロップ、音楽を原則として使わない。それらの装置は、観客による能動的な観察の邪魔をしかねない。また、映像に対する解釈の幅を狭め、一義的で平坦にしてしまう嫌いがある。
9.観客が十分に映像や音を観察できるよう、カットは長めに編集し、余白を残す。その場に居合わせたかのような臨場感や、時間の流れを大切にする。
10.制作費は基本的に自社で出す。カネを出したら口も出したくなるのが人情だから、ヒモ付きの投資は一切受けない。作品の内容に干渉を受けない助成金を受けるのはアリ。
なので、監督が何を訴えたいのか明確ではない。何かこういう現実があるということだけはヒシヒシと伝わる。そこから何かを引き出すのは観客の役割のようだ。『牡蠣工場』では感じなかったのだが、この作品では被写体が写されていることを強く意識していて、その意向がかなり反映されている。その被写体(女性)は、それまでの流れ、漁師から魚屋・消費者へ、から外れ、港町の生活、精神性の方に進んでいく。初めの単調で眠気を誘う漁師の場面と打って変わって、この年老いた女性は、高齢にもかかわらず動きもおしゃべりも精力的で迫力がある。ただ、この人物に焦点が絞られすぎてしまったのがちょっと残念。この映画は初めカラーで撮っていたが、最終段階でモノクロにしたとのこと。これは成功している。最後のカットが海に沈む夕日なのだが、ここだけ色がついていた。
次の観察映画第8弾は、2018年6月公開予定の『ザ・ビッグハウス THE BIG HOUSE』。監督はアメリカ在住で、アメリカンフットボールのスタジアムが舞台のようです。広島では、横川シネマで7月公開とのこと。

★★★★ LUCKY 横川シネマ
九十歳の老人の日常を淡々と描く。演じるのは九十歳の、ハリー・ディーン・スタントン。彼のために作られた映画と言えるのかもしれません。撮影が終わって、去年の9月、九十一歳で亡くなっています。
朝起きて、ヨガをし、ミルクを飲んで、ダイナーで珈琲を飲みながらクロスワードパズルを解き、バーでブラッディ・マリアを飲む、という主人公の毎日です。彼と店の経営者や客はお互いをよく知っていて良好な関係を保っています。しかし、死が近づいていることを自覚し始め、不安になっているようです。これにどう対処するかがこの映画のキモと思われます。戦争中に死が迫っている少女が微笑んだという話を聞き、彼の態度に変化が現れ始めました。たくさんの名言が語られますが、覚えることが出来ません。「死に向かい合うには微笑みが必要だ」、これが一番心に刺さりました。
バーで、陸亀が逃げたという話題が出てきます。映画の冒頭、亀が画面の左へ消えていく場面が思い出されます。そして、映画の最後、亀が左から登場します。九十歳の老人、長く生きている亀、大きいサボテン、象徴的なラストです。

★★★★ モリのいる場所 イオンシネマ2
老人のドアップの顔で映画は始まる。何かをジッと見つめている。「これは何歳の子が描いたのか?」 後ろに侍っている者たちに聞く。聞かれた方は困惑する。見つめていたのは、熊谷守一の「伸餅」という絵。この映画の主人公の絵です。因みにこの質問をした老人は、林与一演じる昭和天皇、だそうです。
仙人のような風貌をした画家、モリは自宅の庭から外に出ることなく、動植物を飽きることなく観察し、静かに過ごしているのかと思えば、続々と人がやってきたりする。妻と碁(のようなもの)をし、夜は絵を描いている(ようだ)。このような日常を淡々と描き、生きるとは何かを考えさせられた、これは私の特殊事情によるのかもしれない。
庭はかなり広いと思わせるように映像化されているが、最後にそうではないということが明らかにされ、それによって逆に、モリの偉大さが伝わってくる、と私には思えた。

★★★ 孤狼の血 TOHOシネマズ緑井3
広島を舞台にしたヤクザ映画、仁義なき戦いを引き継ぐものか。昭和が終わろうとする頃の話で、暴力団担当刑事のきわどい捜査を描く。暴力団と癒着しているようで、実は正義の味方、という一時期はやったストーリー、と言えるだろう。結局そのやり方を肯定、賞賛している、と見える。今現在から見ると一種のノスタルジー、これは現代人に受け入れられるのだろうか。松坂桃李の熱演で、郷愁は生き延びると思われる。
オール広島ロケで、豪華俳優陣に混じって、さいねい龍二や泉水はる佳などがちょろっと出ている。移転前のサロンシネマも出てきて懐かしかった。

★★★★ 北の桜守 八丁座壱
吉永小百合120本目の映画。明日上映終了、なんとか見に行けました。
いい映画です。吉永小百合、大女優になりました。今回心底そう思います。映画の構成も巧い。劇場の舞台で演じられる一風変わったシュールな芝居、実写映像では表現しづらい心の動きを象徴的に現前させる、実に心憎い演出です。樺太脱出から、時代が飛び、そこから回想の形で、欠落部分が補われて行き、観客の興味を引きつけながら、最後に心を満たしてくれます。いい映画です。

★★★ 花筐 八丁座弐
大林宣彦監督作品。『この空の花』、『野のなななのか』、に続く戦争三部作の最後、とのことです。昭和15年頃のお話で、確かに戦争がテーマではありますが、その状況での若者の感情の動きを描いたものといえるでしょう。これまでにも増して空想的、叙情的、観念的、な大林作品で、次第にその世界に引き込まれていきます。残念なのは、最後にストレートな表現が多くなり、それまでの雰囲気を壊してしまいます。まあ、伝えたいメッセージが湧き出てきたのかもしれません。俳優陣が豪華、メインの男優では、窪塚俊介、満島真之介、長塚圭史、柄本時生、女優では、矢作穂香、常盤貴子、山崎紘菜、門脇麦。その他、村田雄浩、武田鉄矢、入江若葉、南原清隆、根岸季衣、池畑慎之介、片岡鶴太郎、白石加代子、髙嶋政宏、など。唐津市が協力したそうで、唐津くんちの様子が盛りだくさん、美しい自然景観もたくさん出てきます。ただし、一部加工されているように感じました。

★★★ 希望のかなた サロンシネマ2
アキ・カウリスマキ監督の作品ということで見に行きました。期待に違わぬ良い映画です。難民問題に一石を投じたということでしょう。ちょっと残念なのは、ストーリーが御都合主義になっていること。解決困難と思われることが、ちょこっとの説明でスンナリいってしまう。もう少し過程の描写が欲しいところ。良かったのは音楽。幾人(組)かのミュージシャンが出てくるが、どれもとても素晴らしい。哀愁に満ちていて、かつ、動きが感じられる。心に響いて、ワクワクさせる。ただ、エンドロールのバックミュージックが早く終わり、アレッと思うぐらい無音で文字だけが流れ続けた、少し変。


***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** ***** 

2017年、見た映画はなんと、11本、だけ。働いていた頃50本も見たことがあるのに、時間があるはずの今、どうなったのか。見ようと思う映画はかなりあるのに、映画館へ足が向きません。何事にも意欲が減退しているのを感じます。まあ、無理して見ることもないでしょう。

★★★ ギフテッド サロンシネマ2
原題、gifted、すぐれた才能のある。数学に驚異的な才能を持つ少女のお話。片目の猫と父親(と思ったら、叔父だった)と暮らしている。この様な状況に至る経緯が徐々に明らかになっていく。起伏があって面白い展開ではあるが、多少無理な心の動き、予定調和的な解決、その割りにはハッキリしない結末がチラホラ、一寸残念、もっと丁寧に描いて欲しかった。とはいえ、なかなかにいい映画です、特に主演の女の子が素晴らしい。

★★★★ 米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー 横川シネマ
瀬良亀二郎(1907~2001)。沖縄立法院議員、那覇市長、衆議院議員。戦後、米軍と戦ったこの男を追ったドキュメンタリー。タイトル通り、アメリカが恐れる活躍をし、人気もあったようだ。彼の活動を通して戦後の沖縄を見ると、アメリカの酷さ、日本政府の無責任、を痛感する。戦後すぐから存在する問題点がいまだ解決せず、時々噴出するのがよく判った。気に入った台詞が幾つもあったが、残念ながら思い出せない。
監督は、「筑紫哲也NEWS23」でキャスターを務め、筑紫哲也の薫陶を受けた、佐古忠彦、初作品。テーマ音楽は坂本龍一。語りには大杉漣。製作はTBS、テレビ放送されたドキュメンタリーを、追加取材、再編集、アメリカ取材、保存されていた未公開映像やインタビューを交えて映画になった。
平日の昼過ぎ、狭いロビーではあるが人が一杯、座席もかなり埋まっていて、30人は超えていたのでは。横川シネマとしては、非常に多いと言えるでしょう。

★★★ セザンヌと過ごした時間 八丁座弐
セザンヌとゾラがこんな関係だったとは! 当然事実とは違っているのだろうが、ありうると思わせるのはすごい。環境の異なる二人が、芸術ということで繋がり、長く友情を保ったということは、心を揺さぶる。実際のセザンヌはもう少し生前に認められていたのではないだろうか。物語としてはそれでいいのかもしれない。二人それぞれの煩悶、そして二人の友情と確執、考えさせられた。この映画のもう一つの見所は、プロバンスの景色の美しさ。実に素晴らしい。まさにセザンヌの絵である。最後、セザンヌが丘を歩いて登り、向こうにサント・ヴィクトワール山が見える。途中何度も出て来たこの山が映画のラストを締める。エンドロールのバックはセザンヌの描いたこの山の絵数枚。見事。ところで、この映画の原題は、セザンヌと私。どちらのタイトルにしても、私(ゾラ)の視点で捉えられるという感じを与えるのだが、そうは思えない。映画の中味はいいが、タイトルはあまり良くないと思った。

★★★ エリザのため 横川シネマ
ルーマニアの映画。ほぼ英国留学が決まっているのに試験当日暴漢に襲われ動揺する娘、なんとか娘を留学させようと奔走する父親、を描いた作品。話が展開する中で、ルーマニア社会の不正義・不公平が浮き彫りになっていく。父親は公明正大に生きて来たのに、不正に巻き込まれてしまう。とはいえ、娘を思う気持ちは純粋で、この点は救いであり、明るい未来を予感させている。ラストは娘の笑顔で、エンドロールにかけての音楽が明るくていい。ただ、解明されなかったことが多く、消化不良気味なのが残念。家のガラスに石を投げたのは、母親は、父親の愛人とその子供、娘の恋人、父親と裏取引をした副市長は、など、中途半端なまま、私の想像力が欠如しているのか?

★★★★ ムーンライト 八丁座弐
久し振りにいい劇映画を見ました。激しく心を揺さぶるような所はありませんが、見おわった時に心が満たされている感じです。黒人少年の成長を描いています。3つのパートに分かれ、俳優が変わります。3人の顔は似ていませんが、雰囲気には共通するものがありました。少年は麻薬中毒で体を売っている母親と暮らしています。最初のパートに、ひょんなことから少年の父親替わりのようになる麻薬の売人が出て来ます。味のある俳優です。どうやら死んだようで次のパートには出て来ません。少年はいじめられっ子で高校に行っても状況は変わりませんでした。唯一親しい友達がいて、ムーンライトの夜の砂浜で・・・ 最後のパートで少年はもう大人になっています。パート2の最後に事件が起こるのですが、その後のことがここで明らかに、そして、ただひとりの親友と再会するのです。この映画の良さは、ストーリーのよさと共に、映像美があると思います。アップが多用され、俳優がみな芸達者です。被写界深度の浅い映像が多く、極端なものは、二人の顔が大写しになっているのに、一人にピントが合っていて、もう一人は少し霞んでいます。背景は判るが前景に注目させるという効果だけではない何かをもたらしているようです。映画全体に深い趣が生じています。

★★★ アイ・イン・ザ・スカイ 八丁座弐
世界一安全な戦場、という副題が付いている。簡単に言うと、ドローンを使ってテロリストを攻撃する話。攻撃直前に、目標地点の傍にパン売りの少女が現れる。この少女をどうするかで、司令部にいる軍人や政治家では結論が出ず、上へ上へと指示を仰ぐことになっていく。この作戦は英米共同なので、両国の上層部にまで判断を求める。誰も責任を取りたくないと言うことか。結局攻撃は行われ、少女に被害が及ぶ。最後の場面で、政治家が「安全な場所で行われた恥ずべき作戦だった」と非難するが、これに対し軍人は「戦争に行ったことがなく、その代償を知らない軍人はいない」と穏やかに行って部屋を出て行く。印象的なシーンだ。廊下で、部下から孫のオモチャを渡される。会議前に間違えて買ったものを部下が取り替えていたのだ。この現代的なオモチャに対して、亡くなった少女のオモチャはフラフープだった。始まりも終わりもこの少女の映像である。

★★★★ ウィーナー 横川シネマ
ドキュメンタリーです。オバマに続く民主党のエースとも言われたアンソニー・ウィーナー。女性と性的なメッセージや画像を送り合う「セクスティング」という訳の判らないことをやっていたことが暴露され辞職。その2年後、再起をかけニューヨーク市長選に立候補、ここから密着取材が始まったようです。好調に支持を伸ばし、一時は支持率トップへ。ところがまたしても同じ疑惑が浮上、最後まで撤退しませんでしたが惨敗。奇妙な性癖は結局いまだによくなっていないようです。この男の奥さん、夫を許し市長選でも一緒に戦います。ヒラリー・クリントンの側近だったそうで、夫の捜査で夫婦のメールを調べられたため、ヒラリーからの問題になったメールが発見され、再捜査の要因になったとか。ということは、ウィーナーの愚かな行為が、トランプの勝利に繋がったという面があるのかも。それにしても、ウィーナーは悲惨な状況になっても取材を許したのはどうしてなのか。最後のインタビューでは、ありのままの自分を知って貰いたかったというようなことを言っていました。そして、この映画が公開されたと言うことは、アメリカの自由さの表れでしょうか。反面、ウィーナーの失態を執拗に追いかけるマスコミの醜さは酷いものです。日本のマスコミを越えていると思います。この怖さ・愚かさが一番印象に残りました。

★★ 海は燃えている 横川シネマ
監督はイタリア最南端の島、ランベドゥーサ島に一年半住み、その姿を撮影した。初めに少年が出て来て、自然の中で遊び回る情景が描かれる。家で静かに暮らす老女、海に出る漁師、ラジオのDJ,など、島の人々はごく普通の生活を送っている。一方、この島はアフリカに近く、チュニジアのすぐ東に位置する。つまり、地中海を渡る難民の玄関口でもある。悲惨な難民船の状況や救助の状況もまた詳細に描かれる。船倉に転がる死体など、テレビには出てこない陰惨な場面もある。この二つのことが、同じ島で起こっていることとしてこの映画に出てくる。が、まるで別の場所で起こっていることのように交錯することはない。その対比が狙いではあるのだろうが、うまくいっていないように感じられた。何らかの絡みが必要ではないだろうか。

★★★ 人生フルーツ 横川シネマ
津端修一という建築家、都市計画家の晩年を記録した、東海テレビのドキュメンタリー、の映画化。住宅公団で団地造成に関わり、広島大学の学園都市計画にも携わったそうです。映画は、90歳の修一さん、奧さんの英子さん87歳の日々の生活を記録していきます。自然との共生を目指し、自分が計画した愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンの一角にある平屋の自宅が舞台です。ミニ雑木林を造り、野菜70種、果実50種を栽培しています。飄々とした修一さんも凄いが、何でも出来る英子さんも、控えめなだけに一層素晴らしい人だと思えます。このような生涯を見ると、どうしても我が身をふり返らざるを得ません。
映画の始まりと最後、そして途中でも繰り返された言葉:風が吹けば、枯れ葉が落ちる。枯れ葉が落ちれば、土が肥える。土が肥えれば、果実が実る。こつこつ、ゆっくり。
映画にビラには以下のように書いてあります。人生フルーツ、Life is Fruity. 人生は、段々美しくなる。
樹木希林のナレーション、味があってよかった。

★★★ ヒッチコック/トリュフォー サロンシネマ2
「ヒッチコック/トリュフォー」という本が映画になりました。トリュフォーがヒッチコックに手紙を出し、実現したインタビュー、それが伝説の本になり、今伝説の映画になろうとしています。二人のインタビューの音声、10人の映画監督の語り、で構成され、それに符合する二人の代表的な映画の映像も流れます。
ヒッチコックの映画で、牛乳の白さが際立っているところ、実は中に豆電球が入っていたのだそうです。
テレビのヒッチコック劇場はよく見たのですが、映画はさほど見ていません。なので、よく判らない所もありましたが、全体としては話が面白く、二人の映画への思い、10人の映画監督の説明も腑に落ちるものが沢山ありました。特に、マーティン・スコセッシの話は興味深いものでした。
ヒッチコックの映画、これから見ようと思います。

★★ この世界の片隅に サロンシネマ1
見に行こうと思いつつ新年になり、先日キネマ旬報の一位になって、俄然注目を集めています。10時15分からの上映、10時頃行って、券を買うのに20人ぐらいの行列、私が買っている時に、残り20名ぐらいです、のアナウンス。その時既に20名以上は並んでいたので入れなかった人がいたでしょう。因みに、19時からの上映は満席、のんさんの舞台挨拶があるのです。もう一回、12時45分からの上映も満席でした。で、私の座席は・・・
 
最後列のここ。初めてでしたが、なかなかいい席です。
映画は、期待が大きすぎました。静かな、穏やかな映画で、キネ旬受けする、玄人受けするものと言えるでしょう。見る人がそれぞれに自分に引き付けて味わう映画と思いました。しかし、私にはその元になるものがないようです。とても印象に残った場面があります。兎の形の波が立つ海(幼馴染みとの思い出の場面)、空襲の時主人公が絵の具があったら描いた空想の場景、玉音放送を聞いてほとんど感情を爆発させることのない主人公が泣いて怒る時。ただ、それらが繋がって作り出すものがないのです。
エンドロールの最後の最後に、この映画のクラウドファンディングに参加した人の名前が延々と流れます。これがあったからこそ映画が出来たのでしょうが、そこまでやる必要があるのでしょうか。制作側の感謝の気持ちの表現とはいえ、何か偏っている感じがしました。


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