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これから見る予定の映画

希望の国 007スカイフォール レ・ミゼラブル 東京家族 
これは映画ではない <タルコフスキー映画祭> 愛、アムール 
もうひとりのシェイクスピア 
(広島で公開されるのか?) 



 ↓ 2012年 49本 ほぼ週1回のペース 
 ↓ サロンシネマ1:回 サロンシネマ2:回 シネツイン1:回 シネツイン2:
 ↓ 八丁座壱:回 八丁座弐:回 横川シネマ:回 映像文化ライブラリー:
 ↓ TOHOシネマズ緑井:回 バルト11:

★★ ふがいない僕は空を見た サロンシネマ2
「僕」って誰だろう。登場する男が皆、「ふがいない」ようだ。焦点が定まらない群像劇、という印象を持った。前半の、視点を変えた繰り返し、なかなか良かった。その後、視点が変わる、というか、中心人物がかわり、物語が拡散してしまった。田畑智子、魅力的です。最後の方、プラットホームで電車を待つ場面、彼女にだけ焦点が合っているいるのだが、電車が来て彼女が電車の方に消え、カメラは動かず、何処にも焦点の合っていない映像が続く、コレは何だろう。不明瞭な未来?

★★★ アウトレイジビヨンド バルト11シアター9
北野武監督作品、まあ、アウトレイジの続編、と言えるが、それぞれ独立したものとも言える。前作同様激しい言葉や銃の乱射はあるが、人の持っている優しさや思いやりが感じられる。極道の世界を描きながら、真っ当な価値観に裏打ちされている。そんな北野武の映画、大好きです。今作は錚錚たる面面が出ている中で、小日向文世がなかなかにいい味を出していました。

悪の教典 TOHOシネマズ緑井7
これも又、ポルポル倶楽部で試写会のチケットをゲット、しかし・・・ ポイント1000点を使ったのが勿体ないと思った映画でした。原作貴志祐介(この作品は読んでないが)、監督三池崇史、ということで期待したのだが、ハズレ。ただただ血飛沫、どういうことなのか?最後に、To be continued だと!映画は2時間の勝負、誰が続編など見に行くものか!
ポイントが1000点を切って、次にいい作品があってもチケット取りゲームに参加できない。悲しい。

★★★★ 北のカナリアたち バルト11シアター8
原案は以前読んだ、湊かなえの「往復書簡」。原作を読んだものの映画は観ないことにしているのだが、「原作」ではなく「原案」(確かにちょっと違っているような、昔のことなので記憶が曖昧)。そして何より、主演が吉永小百合(私サユリストです)。さらに、試写会のチケットをゲット。なので、行きました。映画として人を惹き付けるものを充分持っていると思います。ストーリー、映像の美しさ、心に響く音楽、二時間を超える長さですが、あっという間でした。利尻島・礼文島の自然は圧倒的な迫力です。吉永小百合、相変わらずいいですね。先日見た「あなたへ」の高倉健と違い、無理のない年相応の役です。これからも、年齢に合った役柄の映画に出演し続けて欲しいと熱望します。去年見た、「木洩れ日の家で」のダヌタ・シャフラルスカ(撮影当時91歳)のように。

★★★★ 最強のふたり 八丁座壱
観ているときも、観終わった後も、幸せな気持ちになる映画。実話に基づいて作られ、最後に本人たちの映像がちょっと出る。全身不随の大富豪を粗野だが憎めない黒人青年が介護をするというお話で、この設定から考えられるエピソードをうまくつないで、流れがいい。ただ、黒人青年の家庭環境の描写が中途半端だった。原題は、untouchable 、触れることが出来ない、触れてはならない、批判できない、影響されない、汚らわしい、(スポーツ選手などが)比類のない、といった意味が辞書には書いてある。どの様な思いが込められたタイトルのなのだろう。最強のふたり、という邦題は安易ではないか。

★★ 夢売るふたり シネツイン1
西川美和監督作品ということで見に行ったが、何か今ひとつ引き込まれるものがなかった。まず火事の場面から違和感があり、その後の展開もやはり無理矢理のようで、意味のよく分からない場面、それも結構過激な場面があり、結局腑に落ちなかった。で、タイトルはどういう意味なのか。夢を売ったのか。

★★ かぞくのくに サロンシネマ2
16歳の時、帰国事業で北朝鮮へ渡った息子が、病気治療のため25年ぶりに三ヶ月だけ、父母と妹が待つ日本に帰国するというお話。ヤン・ヨンヒ監督自身の体験に基づくストーリーらしいが、この設定から想像できる展開である。しかし、これ程北朝鮮を不気味な国に描く必要があるのか、疑問に思った。さらに、突然の帰国命令ですべてが中途半端、この様な現実があるのかもしれないが、映画としては救いがない。妹に託されてはいるのだろうが。ただ、役者はそろっている。井浦新は三島由紀夫よりこちらがピッタリ、宮崎美子が好演、安藤さくらはいい役者なのだろうが好みではない、京野ことみも好みではなかったが、ちょっと見直した、この役にはまっていた。

★★★ ジェーン・エア シネツイン本通り
キャリー・ジョージ・フクナガ監督作品。二年ほど前に、「闇の列車、光の旅」という映画を観たが、アメリカへの不法移民を描いた作品で、有名な文学作品をもとにした今作とは異質な感じである。シャーロッテ・ブロンテの「ジェーン・エア」は我が十代の必読書だったが、もう完璧に忘れてしまっていて、今みると、こんな内容が若者に読まれていたのかと驚いた。映画はよくできていると思う。特に、ジュディ・デンチの存在がこの映画を引き締めている。このような役にピッタリです。

★★ デンジャラス・ラン バルト11シアター8
またまた、広島ホームテレビのポルポル倶楽部で試写会チケットをゲット。でなければ、これも見に行ったかどうか微妙。予想通りのアメリカ映画。激しいアクションとカーチェイス。ちょっとひねった、しかし途中からバレバレの、ストーリー。微笑ましいエンディング。まあ、楽しめます。デンゼル・ワシントン、いい具合に歳を取っていますね。

★★★ ニッポンの嘘 八丁座弐
サブタイトル、と言うか、タイトルの一部なのかな、報道写真家 福島菊次郎90歳
凄い人です。現実にこの様な生き方をしている人がいる、というのは驚異です。何よりも素晴らしのは、今現在の生き様です。最後の方に娘さんが出てきます。コメントが最高、素敵な父娘です。つべこべ言わずに彼の写真集を見ようと思います。著書も何冊かあるようなので(今も執筆中とのこと)、読んでみようと思います。

ファウスト サロンシネマ2
アレクサンドル・ソクーロフ監督作品。エルミタージュ幻想、太陽、牡牛座レーニンの肖像、モレク神、と見てきて、これが四部作の最後、なので大いに期待していた。だから、ガッカリも大きかった。大きな賞を取っているそうだが、私にはあわない。俯瞰図から始まるのはよかったが、地上に降りると、人体解剖、映像も発想も? 画面に美しさはないし、鏡を使っているためか気持ち悪く歪むところがあるし、音楽もよくないし。悪魔が高利貸しになっているのはいいが、ストーリーに惹き付けるものは無いし、眠気を誘うし、などなど。唯一、マルガレーテ役の女の子が昔の絵から向け出してきたようで、よかった。

★★★ この空の花 長岡花火物語 八丁座弐
大林宣彦監督作品。長岡の花火、第二次世界大戦、中越地震、東日本大震災、を絡め、監督得意の幻のような人物を登場させ、時空を飛び越え、多彩な役者が登場し、実にテンポよく展開していきます。画家山下清の言葉がいいですね。「みんなが爆弾なんかつくらないで、きれいな花火ばかりをつくっていたらきっと戦争なんかおきなかったんだな」

★★ キリマンジャロの雪 サロンシネマ1
労働組合の委員長が、退職者を決めるクジに自分も含め、見事に当たったところから物語が始まる。この時同じようにクジに当たった若者がもう一方の主人公で、ふたりの人生が絡み合う。ストーリー展開が日本的だなと思っていたら、予測通りに収束していった。優しく思いやりのある人というのは全世界にいるのでしょう。

★★ あなたへ バルト11シアター8
広島ホームテレビのポルポル倶楽部で試写会チケットをゲット。でなければ、見に行ったかどうか微妙。前作(単騎、千里を走る。)でも思ったが、健さん歳を取りすぎて、役年齢とのギャップが埋められない。田中裕子との夫婦役は無理。年相応の役はないのだろうか。映画自体はロードムービーとしてみれば、なかなかに見応えがある。特に武田城址はすごかった。調べてみると結構有名なところのようです。もう一つよかったのが、田中裕子が歌う、星めぐりの歌、宮沢賢治作詞作曲で、これもかなり知られているもののようです。共演者も錚錚たる人たちで、中でもビートたけしは抜きん出ています。

★★★ ヘルタースケルター シネツイン本通り
私、「パッチギ!」以来、沢尻エリカの大ファンです。色々世間を騒がせていますが、女優は虚構の存在なのでそのようなことは問題ではありません。なので、この映画とても楽しみにしていました。やはり、彼女は可愛いと思います。美しい、かな? 主演だから当然ですが、やたらと彼女の映像が出てきます。ファンの私でも多すぎではないかと思うほどなので、ファンでない人はウンザリしたのではないでしょうか。ストーリーは単純で、多少は社会は的なことを入れようとはしているのですが、完全に突っ込み不足、中途半端、脚本に問題があるのでは? まあ、私はエリカ様が見られれば良かったので、多くは望みますまい。終わり方は良かったですね。寺島しのぶも良かったですね。

★★★ 裏切りのサーカス シネツイン新天地
英国諜報部に根付く二重スパイの話。とても判り難いという前評判なので、珍しく予習をしていきました。入場するときも、人物相関図が載っている紙をくれます。実際に見るとそれ程でもないという感じです。そもそも難解さをウリし、リピーター割引キャンペーンなどというものをやるのはいけないのではないでしょうか。それはさておき、確かに複雑です。結局誰が二重スパイなのか。映像では一人の人物が特定されますが、本当に彼なのか。彼は大物ではありますが、もっと大物がトカゲのしっぽを切って、生き延びたのではないか、私は最後の場面を見てそう思いました。これを確認するにはもう一回見ないといけないのでしょう。

★★ 11、25 自決の日 三島由紀夫と若者たち サロンシネマ1
割腹自殺で、三島は訳の分からない作家になってしまった。不可解な衝撃的な事件を何らかの形で収まりを付けたいと昔から思っていた。で、若松孝二のこの映画に何かヒントでもあるのではないかと思い見に行った。が、なかった。(以下ネタバレですが、)最後の方で、寺島しのぶ(三島夫人役)が独り言つ、「結局何も変わらなかった」。最後の場面、彼女が学生に問う、「何が残ったの」。学生は杯を置き、両手の平を見詰める。何かを掬うような形の両手がアップになり、動きが止まり、三島の作品名のテロップが流れていく。
当時の映像を使い、時代の流れを追いながら、丁寧に作られた映画です。しかし、迫ってくるものがありませんでした。ちょっと期待しすぎたなかな。

★★★ 死刑弁護人 横川シネマ
弁護士・安田好弘のドキュメンタリー。最後の方で彼が担当した裁判の一覧が提示されるが、聞いたことのある大事件ばかりである。その中でこの映画で取り上げられているもの、和歌山毒カレー事件、名古屋女子大生誘拐事件、新宿西口バス放火事件、オウム真理教事件、光市母子殺害事件。死刑判決が多く、途中から協力を求められることも多いようだ。私は死刑を存続させるべきだと思っているが、この映画を観て考慮すべきことがあるに気付かされた。彼が言ったなかで一番印象に残ったこと、人は誰でも更正することが出来る。そうだとは言えないが、そうかもしれないとは思うようになった。

★★ オレンジと太陽 サロンシネマ2
13万人もの子供がイギリスからオーストラリアに移民させられたという事実に基づく映画。輝く太陽とオレンジの国という触れ込みだったが、実際は過酷な労働と虐待、1970年頃まで行われていたようだ。今世紀になってやっと、両国政府が事実を認め謝罪した。その子供達が大きくなり、自己のアイデンティティー求めるようになり、その手助けをするのがこの映画の主人公である。20世紀後半にこんなことがあったのかと驚いた。衝撃的内容ではあるが、映画としては今ひとつ惹き付けるものがない。人物がパターン化し、先が読めてしまうのだ。題材がいいだけに惜しい。

★★ アメイジング・スパイダーマン 八丁座弐
ポッカリ空いた時間に、ピッタリはまったので見ました。まあ、楽しめました。典型的アメリカ映画です。スパーダーマン誕生秘話、といったところでしょうか。エンドロールらしきものが始まり(数人退場しました)、謎が一つ解決されてないと思っていたら、映画再開、と喜んだら、謎を強調して本当に終わりました。続きを見に来い!ということのようです。

★★★★ ニーチェの馬 横川シネマ
以下の内容、完全にネタバレです。
原題、トリノの馬。ニーチェはトリノで鞭打たれた馬に駆け寄り卒倒しそのまま正気に戻ることがなかった、という逸話にインスパイアされて、タラ・ベーラ監督が撮った映画。はじめにこの逸話が紹介される。ニーチェの最後の言葉が、「お母さん、私は愚かでした。」、だったこと、そして、その馬がその後どうなったか分からないことも告げられる。つまり、この馬のその後を映画にしたと思っていいだろう。主な登場人物は、右手が麻痺した農夫(恐らく六十過ぎ)、その娘、馬、である。場所は、見渡すがきり何もない荒涼とした荒れ地。彼らの一日は至ってシンプル。娘が起きて着替える、井戸に水を汲みに行く、父親が娘に手伝って貰って着替える、パーリンカ(果実から作られた蒸留酒、40度以上ある)を飲む、何らかの仕事をする、茹でたジャガ芋に塩を振って食べる、着替えて寝る。映画はこれを六日間繰り返す。初日、つまり、始まりは、朝が無く、何かの仕事から帰る場面である(ニーチェと別れた後か)。物凄い風が吹く中、馬、農夫、荷車、が長回しで延々と映される。不気味な音楽が流れる。風は最後の日を除き荒れ狂い続ける。音楽も何回も繰り返される。ただ、弦楽器がほとんどだが、途中オルガンか何かに変わったようだ。二日目は、馬が動こうとしない。隣人が焼酎をくれと言ってきて、街が崩壊したとかいろいろ哲学的な話をする。ニーチェなのか? 三日目、馬が飼い葉を食べない。流れ者がやってきて井戸の水を飲む。その内の一人が娘に聖書のような本を渡す。父親が追っ払う。娘は夜にその本を読む(こんな生活をしていても、文盲ではない)。四日目の朝、大事件、井戸が涸れる。荷物をまとめて出ていくが、戻ってくる。なぜか分からない。隣人が言っていたように、街は崩壊していたのか。五日目、父親がジャガ芋を残す。これまで、娘は残していたが、父親は全部食べていた。六日目、娘は全く食べようとしない。父親が、食べなければいけない、というようなことを言うが、その父親も一口食べて、やめる。これまでと食べ方が違い、かぶりつく、すると、ガリッ、というような音、茹でてない、水がない。で、終わる。衝撃的な映画です。新藤兼人の「裸の島」を思い出しました。これを観ていなかったら、もっと衝撃を受けたと思います。共に人間の営みをそのままに映したと言えるでしょう。農耕民族と、遊牧民族の違いを感じました。「裸の島」には「ハレ」があったのに、この映画にはそのようなものは何もありません。アポカリプス? 天地創造の真逆。六日間で人は滅びる? 人の一生は結局この様なもの・・・

★★★ ルート・アイリッシュ サロンシネマ2
イラクに行った、イギリス人民間傭兵の話。ルート・アイリッシュとは、実在する、イラク市内の米軍管理区域とバグダッド空港を結ぶ、12キロぐらいの世界で最も危険な道路。友人がその道路で死んだことに疑問を持ち、調べるというのが大筋で、なかなか興味深い内容だった。謎解き的なところもあり、様々な要素が含まれていて、惹き付けられた。イギリスのテレビ俳優が多く、見慣れた顔が無かったのも良かった。拷問シーンが衝撃的、腹筋運動の機械に頭を低くして縛られた男の顔に、タオルを被せ水をかける、ちょっとの時間なのだがきっと息が出来ず苦しいのだろう。冤罪が作られるのが分かったような気がした。この辺りから悲しい結末へと進んでゆく。軍需産業の恐ろしさと共に、鑑賞後にカタルシスは無いが、いろいろと考えさせられる良い映画だった。

★★★ 百合子、ダスヴィダーニヤ 横川シネマ
宮本百合子のお話、この映画の時代は、中條百合子。彼女の著作を読んだこともないし、どんな人だったかもほとんど知らないのだが、この映画を観てとても興味を持った。そして、多分こちらが主人公、ロシア文学者の湯浅芳子、彼女も魅力的な人物だったようだ。この二人の愛を描いている。男同士は受け入れがたいが、女同士は美しく感じる、のは私が男だから? 映画は日本的な美しさに溢れている。特に感じたのが、万年筆で書かれる文字の美しさ。二人の生活は7年間続いたそうだが、描かれるのはその最初の方だけだが、それで充分だろう。ダスヴィダーニヤは、さようなら、という意味。

★★ モレク神 映像文化ライブラリー
アレクサンドロ・ソクーロフ監督特集。権力者四部作の第一作、ヒトラーを描いている。これ又、権力者らしい面ではなく、側近と共に愛人のもとを訪れたときのことで、弱々しく、女々しく、懐疑的なところが強調される。つまり、ヒトラーも普通の人間だと言っているのだ。映画の中でヒトラーが、アウシュビッツを知らない、と言っているのはどういう意図か。映像はこれも又独特、山の上にある別荘なので霧にかかっていて、青いフィルターがかかっているようだ。愛人エバの動きと共に幻想的な雰囲気を出している。
権力者四部作の第二作は先日見た。第三作「太陽」は日本公開と同時に見た。第四作「ファウスト」、広島では8月公開、楽しみです。

★★★ ル・アーブルの靴みがき シネツイン本通り
アキ・カウリスマキ監督。暗い作品が多く、これもそうだが、終わり方には希望があった。簡単に言うと、アフリカからイギリスへ母を求めて少年が密航する話である。それをル・アーブルの靴みがきをはじめとする人たちが助けるという縦糸と、靴みがき夫婦の暮らしという横糸が絡み合って、ゆったりとストーリーが流れてゆく。何故少年を助けるのか、直接には語られず、この辺りが彼我の文化の違いかと思った。これこそが映画の楽しみだろう。

★★★ 自転車と少年 シネツイン本通り
最後には見て良かったと思わせる映画だった。少年の言動に違和感を感じたのは私の想像力の欠如か。父親に捨てられた父子家庭の子供がどんな精神状態になるのか、想像を絶するのだろう。里親になる女性の描き方も少し足りないように思う。

★★ 牡羊座 レーニンの肖像 映像文化ライブラリー
映像文化ライブラリー、アレクサンドロ・ソクーロフ監督特集。
タイトル通りレーニンを描いた作品だが、晩年の一日を描いている。つまり、権力者らしくなく、右半身不随で半ば惚けていて、哀れな感じが漂う。スターリンらしき人物が出てきて好対照である。映像が独特、良く言えば絵画的、悪く言えば不鮮明、全体に緑のフィルターがかかっているようで、落ち着いた雰囲気と同時に多少の狂気を感じさせる。

★★ ドライブ 八丁座弐
今ひとつ、感情移入が出来ず、物足りなさを感じた。キャリー・マリガンは確かに可愛い。この様な女の為なら、何でもしてやろうと思うのは分からないでもない。しかし、主人公からはそのような情念は感じられず、ただ残酷な男のように見えた。今旬の二人の共演であるが、ライアン・ゴズリングの方にチョット疑問符。スーパー・チューズデイの時よりもよくない。
ところで、キャリー・マリガンを見ていて、NHKニュース7気象情報担当の岡村真美子を思い浮かべた。同じ種類のかわいさではないだろうか。

★★ ミッドナイト・イン・パリ サロンシネマ1
ウディ・アレン監督作品。1920年代の、古き良き時代へタイムスリップするお話。良き時代、というものは人によって違うわけで、この主人公とそこが一致しないと、困ったことになるでしょう。私は幸い楽しめました。ただ、著名な人物が私のイメージとずれていてちょっと残念でした。終わり方がいいですね。

★★ 鬼に訊け シネツイン本通り
宮大工西岡常一の遺言、というサブタイトルが付いている。実は、この映画の監督、山崎佑次がこのタイトルの本を書いていて、以前読んだことがある。西岡常一の「木のいのち木のこころ」という本も読んだ。なので、この映画を見に行くかどうか悩んだ。結局見に行って、エンドロールに、これこれのビデオを編集したと出て、なーんだ、となった。まあ、確認作業をやったようなもので、それはそれでよかったのかと、自分を慰めております。

★★ スーパー・チューズデイ サロンシネマ1
タイトルから判るように、アメリカ大統領選挙の話。それも、ダーティーな裏側を見せるという趣向である。さもありなんという気もするし、イヤイヤ現実はもっと酷いのではないかと疑ったりもする。ジョージ・クルーニーが監督、大統領役で出演もしている。先日見たファミリー・ツリーよりもこちらの方がピッタリしている。ライアン・ゴズリングはいい役者だと思う。その魅力を十分生かし切れていない。近々公開される「ドライブ」、期待してます。

★★ しとやかな獣 シネツイン本通り
1962年の映画。「新藤兼人100年の軌跡」の一環、原作脚本を担当。監督は川島雄三。主演・若尾文子、となっているが、実際には、伊藤雄之助・山岡久乃、それに、川畑愛光が中心と言えるだろう。殺人まではしないが(とは言え、自殺に追いやられる人物がいる)、悪いことする人間ばかりが登場する。その最たるものが若尾文子というわけで主演なのでしょう。それでも嫌な感じがしないのは、展開のテンポの良さに負うところが多いと思う。そして、謡曲のような音楽が不思議な雰囲気を醸し出しています。脚本がいいのか、監督がうまいのか、まあその療法でしょうが、面白い映画です。

★★ ファミリー・ツリー 八丁座弐
簡単に言うと、母親が事故死して、残された父親と娘二人が家族の絆を取り戻すという映画。family tree とは、家系(図)、先祖と子孫、という意味。原題、the Descendants は、子孫、末裔、(先祖からの)伝来物、という意味。となると、先祖伝来の土地を売るか売らないか、開発か自然保護か、という話もこの映画の重要なポイントかも知れない。父親役のジョージ・クルーニーはオーシャンズの印象が強く、見るまではこのような役に少し違和感があったが、なかなかの好演だった。長女役の女の子も魅力的。そして、最後の場面がとてもいいですね。

★★ ブリューゲルの動く絵 サロンシネマ1
原題は、THE MILL & THE CROSS 、製粉所と十字架。製粉所の風車と十字架が中心になっている。日本語のタイトルから判るように、ブリューゲルの「十字架を担うキリスト」という絵が描く世界を動かし、解説したような映画である。始めの三分の一ぐらいは台詞が殆ど無く、結構緊張感が漂う。しかし次第に散漫になっていき、訴えかけるものが弱くなる。このような映画は意味を持たせようとしてはいけないのではないだろうか。CGの出来がよくなかった。

★★★ アーティスト 八丁座壱
台詞がないと表現が繊細でなくなるのは間違いないでしょう。それでも敢えてこの映画を撮ったということは、これでしか表現出来ないものがあったと思われます。そして、その試みは成功しました。映画を観てよかったと言う気持ちになりました。これこそが映画の魅力です。印象に残った場面、コップを置いたときに音が出るところ、まったくの無音が暫く続くところ、最後に何の違和感もなく台詞を聞こえるところ。いい映画です。

★★ 旅芸人の記録 サロンシネマ1
3時間52分の大作。長さよりも難解さに困惑した。ストーリーそのものは複雑ではない。1939年から1952年までのギリシャが描かれている。侵略あり内戦ありの壮絶な歴史である。その時代を旅芸人一座の絡みで読み解いてゆく。ほとんど解説的な説明のない場面が連なって、個々のシーンの意味合いが理解出来ない。特に、一座の人数が多く、役者の顔の区別が付かないのには困った。相変わらず、長回しが多く、流れがよくて映画に入り込みやすくなっている。また、音楽が秀逸で、特に民族音楽っぽい歌やアコーディオンの哀愁を誘う音色が心に響いた。

★★★ マーガレット・サッチャー 八丁座壱
鉄の女の涙、というサブタイトル。原題は、The Iron Lady 、何故「涙」を加えたのか? それは兎も角、いい映画です。アルツハイマーになったサッチャー、というか、幻覚に苦しむ、と描いているようにも私には思えたサッチャー、そのサッチャーを中心に、彼女の回想場面が挿入され、面白い構成になっています。最後は全てが夢の世界へ溶融していくという、私好みのエンディングです。メリル・ストリープがサッチャーに似ているといわれていますが、そうでしょうか? いえ、そもそも似ている必要はないと思います。充分にうまく演じています。若い時を演じた、アレキサンドラ・ローチも魅力的でした。今日本はこのような政治家を必要としているのではないでしょうか。

★★★ 戦火の馬 八丁座弐
マイケル・モーバーゴの小説を映画化したもの(舞台化もされたようです)。第一次世界大戦時、イギリスの馬が運命に翻弄される話。実によく出来た映画、出来すぎ、と言ってもいいぐらいです。幾つかの映画が出来るほど色々な話が詰め込まれています。そして、それらが馬を中心に見事に繋がっていくのです。はじまりの緑輝く丘陵地帯、最後の夕日に映える馬、などなど、映像の美しさも申し分在りません。音楽も映像に寄り添い、目立たないながらも魅力を引き立てています。いい映画です。

★★★ サラの鍵 シネツイン本通り
サラというユダヤ人の少女が、幼い弟を、逮捕されないように納戸に隠し鍵をかける、少女は収容所に入れられ、弟は・・・という設定の映画。フランス映画であるが、メインテーマではないにしても、当時のフランス政府がナチのユダヤ人狩りに協力していたということを取り上げている。狂言回しは、現代のジャーナリスト、彼女の家族と、ユダヤ人少女の家族が、空間的な繋がりで結ばれ、過去と現在が交錯してゆく。ストーリーは自然に流れているようであるが、善意の人の登場に助けられている部分が多い。現実にその様な人も存在したのだろうが。当然ハッピーエンドとはならないが、救いが垣間見えるいい終わり方だと思う。

★★★★ 灼熱の魂 シネツイン新天地
物凄く心を動かされました。よく出来た映画です。緻密な、綿密に練られた、ストーリーです。ちょっとやりすぎという感じがしないでもありません。冒頭、荒涼とした山岳地帯(?)にある建物で、少年たちが丸刈りにされています。一人がアップになり、恐ろしい目つきでカメラを睨むのです。踵が映され、コレがポイントになります。現在と過去が入り乱れ、現在も過去もそれぞれが入り乱れます。いろいろな?が浮かんできますが、それが牽引役となり、ストーリーに入り込み、感情移入してしまい、かと思うと、一歩下がって物語を組み立てたりしています。最後には?が見事に解き明かされ、スッキリすると共に、あまりの凄惨な筋立に戦慄するでしょう。ただ、ラストの場面には救いがあります。原作は戯曲だそうです。原作者はレバノン出身、だから、舞台はレバノンだろうと思われます。しかし、これは重要なことではありません。宗教対立も部族対立も特定する必要はありません。この映画が描いているのは人間だからです。人間の心を描いているのだと思います。それも、優しく、寛容な、全てを受け入れる心です。

★★★ ものすごくうるさくて、ありえないほど近い TOHOシネマズ緑井4
空いた時間帯にピッタリだったので観ました。そんなに期待していなかったためか、チョコッと感動。9.11はアメリカ人の心に深い傷を残したのだと改めて印象づけられました。ちょっと変わった男の子、その子と父親の普通とは言えない関係、このような設定の方が描きやすいのでしょうが、普通の状況を取り上げたら、感動はもっと大きかったのではないかと思います。善意の人ばかりが登場し、観ている方にストレスはないけれど、こんなに物事がうまく進むのかという疑問は残り、でもしかし、まあアメリカ的明るさで前に進め、でいいのかも知れないかな。

★★★ 永遠と一日 映像文化ライブラリー
テオ・アンゲロプロスにしては分かりやすい映画。ただ、詩人、詩、ギリシャ語が重要なテーマになっているので、問題意識すら持っていない部分が多いのかも知れない。明日病院に入院する(恐らくもう戻って来られない)詩人の今日一日、主に、難民の少年との交流を描くのが大きな流れ、これに詩人の回想が挿入される。相変わらず印象的な映像が多く、雪に埋もれるアルバニア国境に晒されている死体(?)、バスの中の演奏会、一風変わった結婚式、など。驚いたのは、得意の長回しで、現実から空想に繋がっていくこと。これは素晴らしい。最後の方で主人公の詩人は「明日の長さは?」という質問を二人にする。幻想に現れた19世紀の詩人ソロモスは答えない。死んでいる彼の妻が答える。「永遠と一日」。彼は病院に行くのを止めたのではないだろうか。

★★★★ 霧の中の風景 映像文化ライブラリー
久し振りに映像文化ライブラリーに行きました。時々みたい映画はあるのですが、ほとんどの上映が一日だけなのでなかなかいけませんでした。今月は、テオ・アンゲロプロス監督特集、ちょうど都合のいい日時だったので見ることが出来ました。以下、ネタバレバレです。
11歳の少女と5歳の弟が、会ったことのない父親を捜しにドイツへの旅に出掛けるという、ロードムービーのような仕掛けです。この姉弟が暗い道を走ってくるところからこの映画は始まります。ほとんどこのトーンで、モノクロのようです。アップが少なく、長回しが多く、これぞ映画の醍醐味だと思います。また、象徴的なところも多く、特に印象的なのは、瀕死の馬がひきずられて息絶える場面、降ってくる雪に見とれて動きを止める人々、海から引き上げられる人差し指の先が欠けている巨大な像の手首、これらは映画の流れの中で見ると違和感なく心に染み込んでいきます。メインテーマの父親に会いに行くという設定は早々に否定され、姉弟もそのことは感じていると思われます。父親が象徴するものを求めているのです。二人は人生そのもののような旅を続け、つらい試練を乗り越え、ついに川が隔てる国境を越えるのです。その時に一発の銃声。二人は対岸に渡り濃い霧の中を進みます。恐らく川は涸がんと彼岸を隔てる境なのでしょう。弟が、いつもは姉に聞かせてもらっていたお話を、ここでは自分がします。「初めに混沌があり、次第に光が現れた」、というような話、創世記です。すると霧がはれ、小高い丘の上に形のいい一本の木が見えてきます。それに駆けより抱きつく姉弟、美しい場面です。残念なことにフィルムが古く、雨が降っていました。これには伏線があります。途中で出会った旅芸人に映画のフィルムをもらうのですが、そのフィルムは真っ白なのです。旅芸人が言います、「白の向こうに木が見えるだろう」。いい映画です。久し振りに心がワクワクした映画でした。
映像文化ライブラリーは65歳から無料です(一般は500円)。だから、そうだと思われる人がたくさん来ています。上映が始まってから来る人、途中で堂々とトイレに行く人、寝て鼾をかく人、などが結構います。私も無料になるのを楽しみにしているのですが、こうならないように注意しようと思います。
今月の特集、もう二本あります。「こうのとり、たちずさんで」は以前見たのでパス、「永遠と一日」の方は見に行こうと思っています。

★★ 麒麟の翼 TOHOシネマズ緑井2
ある映画評に、東京が主役とも言える、とあったので、見に行こうという気になった。しかし、主役とは言えないし、脇役にもなっていないと感じた。主役級の麒麟像は高速道路の下で飛べそうにないし、日本橋七福人は駆け足でよく分からないし、商店街の雰囲気にも個性がないし、ラストシーンは麒麟を飛ばせようという工夫には敬服するが、スカイツリーではなく、ありきたりでも富士山にいって欲しかった。ストーリーは、原作者がシリーズ最高傑作と言っているという宣伝文句だが、そうだろうか。確かに展開は面白いが、いろんな人物の行動に説得力が欠けている。そして、一番残念なのが、魅力的な登場人物がいないことだ。ちょっと出来のいいテレビドラマを見ている感じがした。

★★★★ ゲーテの恋 サロンシネマ2
サブタイトル:君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」
映画だから実際とは違うのだろうが、ゲーテの青春がこんな感じだったかも知れない、と思わせるところは凄い。言い換えると、人の青春には似たようなところがあるのではないか。特に青春時代の悩みはそうではないか。大きな流れから、ちょっとした感情の動きまで、とても共感出来た。町や自然の描写も重厚で、特に建物は、豪壮なものも庶民の家も、素晴らしい出来映えである。ロッテ役のミリアム・シュタイン、何やら儚さを持っていて、とても魅力的です。

★★ 源氏物語 TOHOシネマズ緑井4
期待を裏切られるかな、とチョット恐れながら行った。やはり、ちょっと裏切られた。実際平安時代がどんなものだったかは分からないが、光源氏も藤原道長も気品に欠けた。大層お金がかかったという土御門邸のセットも豪華さがなかった。女性陣にも、優美さ、艶めかしさが感じられなかった。サブタイトルに、千年の謎、と付けて、紫式部を重ねたところは面白いが、二つの世界を行き来するのは安倍晴明だけ、この設定では勿体ない。

★★ 孔子の教え サロンシネマ2
孔子は実際どんな人物だったのか、分からないのだろうが、この映画の描く孔子は、何か違うと感じた。私のイメージだろうが、彼の残した言葉と合わないような気がする。もう一つ大きいのは、孔子を演じた、チョウ・ユンファ、様々な役をこなすうまい俳優なのだろうが、このような人物には合わないのではないだろうか。戦闘場面も多く、こちらでも見せ場を作ろうとしたことが、映画全体の焦点をぼかすという結果になったと思う。

★★ ミッション:インポシブル/ゴースト・プロトコル TOHOシネマズ緑井1
スパイ大作戦以来、このテーマミュージックを聴くとワクワクします。今作も充分楽しませて貰いました。世界中を飛び廻って各地の美しい景色を映し出し、これでもかというぐらい何度も窮地に陥ってハラハラさせ、最後にはイーサン・ハントの過去を垣間見せ、さすがアメリカ映画、サービス満点です。ポーラ・パットンも魅力的でした。

★★★★ ヒミズ シネツイン本通り
園子温、四作目。素晴らしい。過激さが押さえられ、といっても結構激しいのだが、はみ出した部分がなく、一体感のある世界を創り出している。なんといっても俳優がいい。染谷将太は勿論、二階堂ふみ、凄く魅力的である。二人の置かれている状況は尋常なものではないが、見ているうちに何故か引き込まれ自分にも起こりうる、起こったかも知れない、きっと起こった、と思ってしまう。飲み込まれていく過酷な暗闇、もがき苦しみそこから抜け出そうとする、微かな最後の力、感情移入してしまいます。ともすれば陳腐になりそうなラスト、感動的です。



 ↓ 2011年 52本 週1回のペース 
 ↓ サロンシネマ:21回 シネツイン:12回 八丁座:8回 
 ↓ 横川シネマ:8回 TOHOシネマズ緑井:2回 バルト11:1回

★★★ エンディングノート 横川シネマ
癌になった父親を、実の娘が傍らで撮り続けたドキュメンタリー。基本的に癌が判ってからの映像だが、昔の家庭団欒の様子も挿入される。父親の性格に負うところが多いのだろうが、全体的に深刻にならないように、暗くならないように、サラッと仕上げられている。監督の娘が父親の立場で語りを担当して、コミカルな味を出そうとしているが、半ば成功、というぐらいか。そもそも、父親の声が女の声になっているので、途中何度も間違えそうになった。エンディングノートもそのものを全ては公開していないようで、全体像が見えなかったのが残念。参考にしたかった。先日親しい友人が、この父親と同じステージ4の胃がんで亡くなった。どうしても重ねてみてしまった。表面的にしか判っていないが、正反対の対応だったと思う。病気を治そうとする、「終活」を行ない残された時間を楽しむ、どちらがいいとは言えないだろうが、大いに考えさせられた。

★★★ 恋の罪 サロンシネマ1
園子温、三連続。この作品も実際に起こった事件を下敷きにしている。タイプの違う三人の女が交錯しながらストーリーは展開していく。女のサガの凄まじさ、を描いていると言ったらいいか、ただし、一人だけ結論が出ていない女がいる、多分この後、破滅の方に行くのだろうが。結局一番印象に残ったのは、大方斐紗子演じるお婆さん。女の凄さ、そして、パワフル。監督が描きたかったのは彼女ではないか。

★★★ 愛のむきだし サロンシネマ2
以前横川シネマで上映。四時間の映画であの椅子はつらい、というだけではありませんが、行きませんでした。今回、冷たい熱帯魚に感動したので、思い切って挑戦。途中10分の休息があり、そんなに長いとは思いませんでした。しかし、冷たい熱帯魚の後では、ちょっと物足りなさを感じざるをえません。新興宗教に相対するもの、強く激しいもの、がないので、新興宗教の恐ろしさが浮かび上がってきません。正しい宗教でもいいし、あるいは、ひどく凡庸な俗物でもよかったと思います。多分監督はそこに愛を、むきだしの愛を置いたのでしょう。むきだしの度合いが弱いという気がします。満島ひかりはいい女優だとは思いますが、この映画のキャラクターには合っていないという印象を持ちました。とブツブツ言ってはいますが、見応えのある映画でした。園子温の新作も見に行こう。

★★★★ 冷たい熱帯魚 サロンシネマ2
園子温監督の作品、初めて見ました。引き込まれました。あっという間の2時間半でした。しかし、この映画、一般には受け入れられないだろうと思います。欲望むき出しで、倫理観なし、エロさは左程ではないけれども、グロさは半端ではない。だからこそ、これが現実の世の中、現実の世界の底に潜む真実、という気になります。ほとんどが予想に反する展開、特に最後の、「人生は痛いんだよ!」という主人公の悲痛な叫びを、その娘が笑い飛ばすところは圧巻です。どの役者も素晴らしく、中でも「でんでん」意外なはまり役です。一つだけ残念なのが、ラストに主人公の妻と娘が登場する必要性は判るのですが、そこに至る展開にもう一工夫、少しの説明が欲しかった。急に妻と娘が映った時の違和感、結構残りました。

★★ カンパニー・メン シネツイン新天地
タイトルは、会社人間、ぐらいの意味でしょうか。この不況の世の中、アメリカも日本も変わらないのだな、と思いました。世間体を気にするところ、自殺をする人間が出るところ、そして、所謂エリートコースから外れて、たくましく、人情味豊かに暮らす人。結局最後に会社人間が復活というのはちょっと残念なストーリー展開ではないでしょうか。まあ楽しめる映画ではありました。ケビン・コスナーがあのような役でもきまっていて、少し驚きでした。

★★★ フェア・ゲーム シネツイン本通り
イラクに大量破壊兵器は存在しない、と公表したCIA職員の、実話に基づいた映画。この様な作りの作品にしては、そしてアメリカ映画にしては、カタルシスが少ない。対象が大きすぎて充分に描けなかったのか。それにしてもアメリカは、自国の利益のために、他国ばかりではなく自国民をも葬り去ろうとするのか。「ゴーストライター」もそうだったが、アメリカの悪意を描く作品が多いのは何故?

★★★ サンザシの樹の下で サロンシネマ1
私の好みの、チャン・イーモウの作品、行かねば。
今回は文化大革命の時代、実話にもとづく純愛物語です。監督が探してきた主役女優は、チョウ・ドンユイ、またまた可愛い子を見付けています。文革の理不尽さをちょっと皮肉りながら、メインストーリーは驚くほどの純愛です。最後は泣けます。でも、初恋の来た道、の方がいいかな。

★★★ ゴーストライター シネツイン新天地
元英国首相の伝記を書くために雇われたゴーストライターが、恐るべき秘密に迫っていくお話。その秘密が、現実にあってもおかしくないと思わせるところが凄い。アメリカの政策は、巧みにオブラートに包まれてはいるが、最終的に自国の利益になることしかしない、ということでしょう。今問題のTPPもそうかも知れません。

★★★ タケヤネの里 横川シネマ
青原さとし監督、ドキュメンタリーです。竹と人間の壮大な営みを描きます。高崎市の伝統工芸・竹川編からはじまり、その原材料である、皮白竹(かしろだけ)の産地、福岡県の八女市・うきは市、へとカメラは移動します。そして、竹皮を使った様々な製品、竹に関わる人々が描かれます。効率を追い求める現代社会の歪みが静かに指弾されているようです。
竹林の美しさ、竹皮で作られた品々の素晴らしさに心が和みました。

★★★ 朱花(はねず)の月 横川シネマ
“朱(あか)”は色褪せやすく、“心”は移ろいやすく
映画に出てきたこの言葉、深く心に染み込みました。そして、映画のテーマを表わす以下の歌・・
「香具山は畝火(うねび)ををしと耳成(みみなし)と相あらそひき神代よりかくにあるらし古昔(いにしへ)も然にあれこそうつせみも嬬(つま)をあらそふらしき」(中大兄皇子)
この、色々に解釈出来る歌も、映画で二・三度幻想的な雰囲気で朗読され、独特の効果を出しています。映画全体も、相変わらずユニークな河瀬ワールドです。私は、こういう世界が、この様な映画が、大好きです。あまり音楽がなく、自然の音がバックグラウンド、情景は適度に人の手が入っているものが多く、話は結局落ち着くところに落ち着くしかないという、消極的かつ積極的な諦観。こんなことを言うと、監督が怒るかな。

★★ ステキな金縛り 八丁座壱
幽霊を裁判の証人として呼ぶ、という奇想天外なお話。劇場が笑いの渦に巻き込まれるのかと思っていたが、そこまで笑わせる映画ではなかった。構成がしっかりしていて、最後まで弛むところもなく、エンドロールに出てくる写真まで見事だった。四人の主な登場人物がはまり役だし、次から次に大物俳優が出てきて場面場面がしまっていた。よく出来た娯楽作品です。

★★ ひろしま サロンシネマ1
1953年の映画。当時の様々な事情で広く公開されなかったようです。数年前広島平和映画祭で、又横川シネマで、単発的に上映されたりはしたが、今回は、福島原発事故で放射能の恐ろしさに注目が集まり、再上映の機運が高まったとのこと。どこまで広げることが出来るのでしょう。
映画は力作です。あの時代にこれだけの作品が作られたとは驚きです。被爆後の状況がかなりリアルに再現されています。さらに、希望の光も見えるようになっていて、よく出来た作品になっています。
大根の芽が出るかどうかという場面を見ていて、既視感に捕らわれました。仕事柄、原爆平和に関する映画を昔沢山見たのです。この作品もきっと・・・

★★ ミケランジェロの暗号 シネツイン新天地
ナチスにユダヤ人、とくれば重たい映画に思えるが、この作品にはコミック的な要素がふんだんにあり、突っ込みどころは多々あるが、全体的にはなかなかのエンタテインメント作品になっている。でも、何かが足りない。逆に言うと、何でもかんでも詰め込みすぎた、だから、中途半端な感じがする。などというのは欲張り過ぎか。そういえば、色々な意味で美しさもなかった。

★★★ 猿の惑星:創世記(ジェネシス) TOHOシネマズ緑井3
1968年の「猿の惑星」第一作は衝撃的でした。その後シリーズ化されて四作ほど作られましたが、評判もよくなく、見ていません。2001年にティム・バートン監督、マーク・ウォールバーグ主演で「猿の惑星」が制作されましたが、猿が人間を支配するという設定が同じだけの、全く別物でした。今回のものは、創世記とあるように、第一作の状況に至る経緯を描いたもので、実に上手く出来ています。話の流れもいいし、メイクもCGも不自然さを感じさせません。人間はこういう具合に滅亡していくのかも知れないと思いました。この先、又シリーズ化の動きが出るのでしょうか。見たいような、でも、いい加減なものは作って欲しくないと思います。

★★ 一命 TOHOシネマズ緑井2
狂言切腹から起こる、武士社会の悲劇、矛盾、体面と建前、見終わった時に何を描きたかったのかがハッキリしない。ささやかな抵抗が終わり、破綻した部分の排除が行なわれ、何もなかったかのように旧に復する。これが体制というものか。
前半がよかっただけに、後半のパターン化が残念。満島ひかり、いいですね。

★★★ 木洩れ日の家で シネツイン新天地
モノクローム。独居老人を描いたポーランドの映画。主演は、1915年生まれ、撮影当時91歳の、ダヌタ・シャフラルスカ。もう一つ主演と言えるのが、木々に囲まれた木造の家。そして、老女と一緒に暮らしている犬が名脇役。素晴らしい演技、魅力的な様々な表情を見せてくれます。こういったものが、モノクローム画面二もかかわらず、というか、それだからこそ、素晴らしく輝いています。ストーリー自体には目を見張るものはないのですが、映画全体には新鮮な美しさが感じられます。ラストの、木洩れ日の家を包む森の映像は感動的です。

★★★ 東京オアシス 八丁座壱
舞台挨拶付き先行上映に行きました。見終わった時、カモメ食堂からのシリーズが徐々に先鋭化していると感じました。舞台挨拶では、普段と違って上映後だったのに、内容についての突っ込んだ話はなく、ちょっと期待外れでした。しかし、その後反芻している内に、最初のパートのドライブ、そして最後のパートの小林聡美が颯爽と歩いて行く姿、がふしぎな統一感と共に蘇ってきます。主人公にとって、東京はオアシスなのでしょう。そして、かなりの人にとってもそうなのかも知れません。私にとっても・・・・・

★★★ プッチーニの愛人 サロンシネマ1
ドリーア・マンフレーディという名の、プッチーニの愛人と疑われたメイドが、服毒自殺に至る経緯を描いている。しかし、この映画のテーマはそれではなく、プッチーニの創作態度だと思う。彼の曲作りは女性を必要としているようなのだ、この場合はドリーアではなく別の女性。だから、映画全般にちょっと悲しく暗いムードが漂っている。更に、台詞が殆どない(聞こえない)ので、独特の神秘的な雰囲気を醸し出している。聞こえる音は、音楽(ピアノ)、言葉は手紙を読む声。久し振りに映画を見たという気になった。

★★ ツリー・オブ・ライフ 八丁座弐
テレンス・マリックの映画は、シン・レッド・ラインとニュー・ワールドを見ました。ともに深い思想を持った映画です。この映画も同様なのですが、それを強く出し過ぎています。始まってしばらくは、父と子の物語、子が父親の年齢近くになるまでの物語が、時間の流れとは関係なく細切れにテンポよく展開し、信仰と世俗、自然と人工、の対比も美しく描かれます。ところが、ここまでにもチョコチョコ挿まれていたアブストラクトな映像が、延々と続くようになります。それは、人類の誕生、地球の誕生を表象しているようです。30分位だったのではないでしょうか。長過ぎます。もう一つしつこかったのが、子供の悪さに関してです。この二つ、全体的な時間配分のバランスを考えると、異様な長さだと思います。これを除くと、テンポもよく、映像も奇麗、役者も味があり、かなりのいい映画です。始めと終わり、そして途中にも、子宮を思わせる赤い映像が黒いスクリーン中央に映ります。これは何かのはじまりを連想させるいい絵だと思いました。そして、まるで死後の世界を描いているかのような最後の海辺(?)の場面も象徴的で心を動かします。で、最終的に思ったのは、この映画はキリスト教を理解していないと、納得出来ないのではないかということです。タイトルからして、エデンの園に生えている木だし、父と子の葛藤、兄弟の葛藤、父性と母性の対比、などなど、まさにキリスト教的だと思います。
一つ判らないのが、二男が何故死んだかです。父母は言及しないし、長男の回想にも出てきません。アベルとカインに関係するのか? あのような形(手紙?電報?)で通知されるのは、戦死?

★★ シャンハイ バルト11スクリーン8
今年初めて試写会が当たりました。しかも、久し振りに応募したものが見事に。又こまめに申し込んでみようかな。金を払って見に行ったかどうか微妙なところです。
まあ楽しめる映画です。この様な歴史もあったんだろうと思わせますが、日本人としてみると、チョット違和感があります。悪役をやらされている感じで、根本にある歴史認識が違うのでしょう。遠くて近い戦争だと思いました。コン・リーは魅力的だったけど、菊地凛子は冴えない役でした。

★★ 蜂蜜 サロンシネマ2
2010年、トルコ・ドイツ映画、同年ベルリン国際映画祭グランプリ。
森で暮らす養蜂家の物語。冒頭森の情景で始まる。遠くの茂みから男とロバが現れ、回りを窺いながら近づいてくる。ロープを高い木に投げかけ、登り始める。半分ぐらい上がったところで、ロープを引っかけた枝が折れる。落下する男を上から撮った映像、男のアップで中断(この後始まる物語がここに繋がる)。この間すべてがゆっくり進行し、台詞も音楽もなく、自然の発する音だけ。全編こんな感じです。ストーリーも、蜂蜜が採れなくなったので森の奥に巣をかけに行った男が事故あう、ぐらいです。主人公の男の子が学校で勉強する場面もかなり出てきますが、父親の不在で吃音がひどくなる、ぐらいの変化でしょうか。それぞれ小さな動きとは言えないかも知れませんが、映画としてはシンプルで、体調によっては気を失いかねません。これは絵画、あるいは、詩、といった方がいいのかも知れません。特に最後の象徴的な場面の美しさは秀逸です。
後で知ったのですが、この作品、ユスフ(主人公の男の子の名前)三部作の最後だそうです。第一部は壮年期、第二部は青年期、を描き、時間を逆に辿っています。全部見たらスッキリするのでしょうか。

★★★ 一枚のハガキ 八丁座壱
新藤兼人、99歳の作品。今回は自ら最後と言っているようです。それにしても凄い。原作も脚本もやり、99歳でこんな映画が撮れるのか。ただただ感嘆です。
自らの体験をもとにしているようですが、戦争の不条理さ、生きることの大切さ、生きる上で大切なこと、など彼が一生描いてきたことが、この作品でもうまくでています。役者たちも好演です。ただ、大竹しのぶは一寸アクが強すぎではないかと思いました。
水を運ぶ場面、「裸の島」を思い出しました。これが人の営みなのでしょう。

★★★ テンペスト シネツイン本通り
シェイクスピア作品の映画化。原作と大きく違うのは主人公が女になっているところ。これは成功している。また、自然の情景が美しい。何処かにハワイでロケしたと書いてあったが、私が持っている偏狭なハワイのイメージとは違っていた。しかし、この作品の舞台にはピッタリで、それらしい雰囲気を醸し出している。シェイクスピアらしい、少し大仰な台詞が多いが、さすがに響きが美しい。ヘレン・ミレンが複雑な人物を的確に演じ、娘役のフェリシティ・ジョーンズはまことに可愛い。

★★★ ブラック・スワン 八丁座弐
見に行くべきか悩み、結局最終日に、偶々時間がとれたので行きました。
まず最初の、白鳥が悪魔に魅入られる場面、素晴らしい動きで心動かされました。そして最後の黒鳥の踊り、圧巻です。ちょっとホラー気味、ポルノ気味のところは気になりましたが、現実と幻想が入り乱れ、不思議な世界、女の情念のオドロオドロしさ、など虚構空間の魅力をよく描いていると思います。ナタリー・ポートマンをあまり美しく撮っていないところもいいですね。

★★★ 神々と男たち サロンシネマ1
1996年アルジェリアで起こった事件(真相は明らかになっていない)を題材にしている。イスラム教圏にあるキリスト教修道院、イスラム教徒が住む地域に溶け込み共存していたが、武装イスラム集団と政府軍の内戦に巻き込まれる。フランス本国からの帰還指示、修道士たちはどう対処するか、という辺りを中心に描かれる。史実だとはいえ、結末が悲しいが、よく出来た映画です。修道士たちの最後の晩餐といった場面での音楽、白鳥の湖、不思議な感じでした。なお、原題は、DES HOMMES ET DES DIEUX 、つまり、日本語タイトルとは逆で、男たちと神々、です。HOMMESは英語の man と同じで、男という意味と共に人間という意味もあります。映画の内容を考えると、人間と神、の方がいいような気もします。もう一つ、キリスト教もイスラム教も一神教なのに、DIEUX は複数形、特定の宗教の神ではなく、一般的な神、となると、やはり、人間と神、でしょうか。

★★★ アメイジング・グレイス サロンシネマ1
この映画を見に行こうという正にその日(7月16日)、朝日新聞朝刊(Be on Saturday)の「うたの旅人」にこの曲が取り上げられていた。元々は奴隷貿易への後悔と神への感謝を表現したものだが、様々な歌い継がれ方があるものだと感心した。
映画は、この歌の作詞者(元奴隷貿易船の船長、その後牧師)に影響を受けた政治家が、奴隷貿易廃止のために戦う姿を描く。よく出来た映画だとは思うが、主人公は金持ち、戦う黒人も出ては来るが、全体的に上から目線になっている。歴史はこの様に動くしかないのか。

★★★★ ナンネル・モーツアルト サロンシネマ1
最近、ショパン、マーラーと音楽家を扱った映画続きです。ただ、今回は、あのウォルフガンク・アマデウス・モーツアルトではなく、その姉のお話です。史実かどうかは別にして、とてもよく出来た作品です。ストーリーも音楽も舞台も素晴らしく、当時の世界に引き込まれます。特に、ベルサイユ宮殿には圧倒されます。また、主演女優、マリー・フェレ、実に魅力的です。実年齢も役柄と同じ位のようですが、落ち着いて見えます。当時はそんな感じだったのでしょう。良い映画です。
「プッチーニの愛人」という映画も近々来るそうです。見に行かねば。

★★ マーラー/君に捧げるアダージョ サロンシネマ1
マーラーの音楽は聴いていたが、どのような生涯を送ったのかは全く知らなかった。初めの方で史実に忠実ではないが大切な所は伝えるというような字幕が出たが、まさにそのような映画だと思う。大芸術家は多かれ少なかれ激しい精神の持ち主だろうが、マーラーは予想外の人物だった。つまり、音楽のイメージと合わないのだ。といっても、それは私の勝手な思い込みであって、どうでもいいことではある。マーラー夫人役の女優が、何とも妖艶である。それに対して、マーラー役の男優が固い。ちょっと残念。

★★★ マイ・バック・ページ シネツイン本通り
川本三郎の原作を以前読みました。我が青春時代のことなので、映画も見ようと思いました。ただ、原作はノンフィクション、映画はかなり変えているようです。その為、松山ケンイチ演じる梅山が薄っぺらい人間になっているように思います。妻夫木聡は好演で、最後の場面は予想通りになるのですが、まあそれしかない上手い終わり方でしょう。細かい所にも時代を感じさせ、音楽も我らの世代の心を振るわせます。いきなり出てくるのが、ピンキーとキラーズの恋の季節、途中、平山みきの真夏の出来事、も聞こえたような。エンディングは、ボブ・ディランの My Back Pages を奥田民生と真心ブラザーズがカバーしてます。『あの頃の僕より今の方がずっと若い』、いいですね。

★★★ ショパン 愛と哀しみの旋律 サロンシネマ1
ショパン生誕200年を記念して、母国ポーランドの監督が作った映画。ショパンの生涯を忠実に再現しようとしたそうです。実際にショパンが暮らした土地、ワルシャワ、パリ、マヨルカ島、ノアン、などでロケをし、演奏者にも一流をそろえています。美しい景色、19世紀を彷彿とさせる街並みや屋敷、華麗な音楽、これだけでもいい映画になっています。ちょっと残念なのは、恋多きショパンが語られず、ジョルジュ・サンド(とその子供)中心という感じがすることです。まあ、それだけショパンにはサンドの影響が強かった(と監督が考えている)ということでしょうか。サンドを演じた女優は50過ぎのようですが、なかなかに魅力的です。フランスが舞台なのに英語を使うのはどうなのでしょう。ショパンのポーランド人使用人が、(ずっと英語を話していて)ポーランド語を使った後フランス語も喋れると言ったのには、かなりの違和感がありました。

★★★ アレキサンドリア サロンシネマ2
ローマ帝国の末期(紀元400年前後)、エジプトのアレキサンドリアにいた女性天文学者を描いたもの。実在の人物とのことだが、これだけ昔の人だと圧倒的に創作部分が多いだろう。その割りには、超人的な人物にしていない所は好ましい。最後に死を受け入れる所には凡人には見られない崇高さを感じるが。主演のレイチェル・ワイズは適役だし、他の役者もなかなか決まっている。映像も美しく、セットもCGもよく出来ていると思う。しかし、史実とはいえ、虐殺で終わるのはちょっと悲しい。

★★★★ サラエボ,希望の街角 サロンシネマ1
ボスニア紛争から15年、見た目は歴史を感じさせる町が蘇っている。郊外の自然も美しい。しかし、人々の心には傷跡が残っている。簡単に言うと、一組の男女の恋物語だが、内戦の記憶が微妙な影を落とす。そして、懸命に生きる二人の歯車がかみ合わなくなっていくのは仕方のないことなのか。終わり方が実にいい。振り返る彼女は何を見ているのか。この女優はすごく魅力的だ。携帯のカメラ機能を使ったはじまりが、斬新でこの女優の魅力を的確に引き出している。又、はじまりの音楽が暗示的で、映画のムードに合っていないようで、二回目の登場でピッタリはまる。とてもいい映画だと思います。

★★★ 100,000年後の安心 横川シネマ
原題は INTO ETERNITY (永遠へ)だが、上手い邦訳だと思う。高レベル放射性廃棄物の処理を扱ったドキュメンタリーで、今秋公開予定だったが、今回の福島原発の事故をうけ、緊急上映になった。
フィンランドでは、高レベル放射性廃棄物を、固い岩盤の地下500メートルに処分場を作り、10万年間保持するという計画が進行しているそうだ。原発問題一般にもちょっとふれ、この計画の始まりから現状まで、興味深い内容である。惜しむらくは、今現在の状況よりも、10万年後の問題点についてしつこく追求しすぎだと思った。
ブログにパンフレット(こちら)。

★★★ わたしを離さないで シネツイン本通り
様々な議論を巻き起こす状況を作っておきながら、この映画が描くのは、その状況についてではなく、その状況に於ける人々の動きである。厳密に言うと、人ではなく、クローン人間である。ただ、区別する必要はない、というか、区別できないと言った方がいいか。
主要登場人物三人は自らの運命を受け入れていて、それに抗うことはない。これは悲しいことでもあり、不思議なことでもある。我々の人生も実は同じと言えるのかもしれない。だからこの映画に引きつけられるのだろう。ならば、我々の人生は悲しいのか。いや、そうではないだろう。
キャリー・マリガンが円熟した女性になっていた。プライドと偏見、ウオール・ストリート、の時よりも惹き付けるものを持っている。わくわくドキドキした。役柄のためか、キーラ・ナイトレイの持っていた小悪魔的な魅力を感じることが出来なかったのが残念。

★★ トスカーナの贋作 サロンシネマ1
本物を証明する意味で贋作にも価値がある、と主張する男と、贋作をも展示するがラリーを持つ女が、偽りの夫婦を演じるというお話。夜にたどり着けない男と女、という宣伝文句がついているが、何のために夫婦役をやっているのか、分からない。だから、映画に入り込めない。ジュリエット・ビノシュの不思議な魅力が何とかこの映画を救っている。

★★★ ヤコブへの手紙 サロンシネマ2
田舎の牧師館で手紙による相談を受けている牧師がいる。彼は目が見えないので、手紙を読んで、返事を書いてくれる人が必要だ。終身刑で服役していた女性が、恩赦を受け、行く当てもないのでこの牧師館にやってくる。この二人と、時々やってくる郵便配達人で、話が進行する。かみ合わない二人が何時しか・・・という、ありそうなストーリーだが、なかなかに見る者を引きつけるし、感動的でもある。郵便配達人が謎めいていて、解明されないまま、と言うか、重きを置かれないまま終わるのに、ちょっと不満が残る。

★★★ アブラクサスの祭 横川シネマ
アブラクサスは、神のみならず悪魔をも含めたものを象徴する、至高の神。映画の中では呪文として唱えられる。アブラカタブラ、の語源とも言われる。
ウツの悩める僧侶が、昔やった音楽に取り組むことで、心の平静を得るというお話。監督の加藤直輝は東京芸大大学院の映像研究科監督領域一期生で北野武らの指導を受けたそうで、これが初監督作品。落ち着いたいい映画である。主人公が、「因果が切れていない」ことを確認する場面、そしてクライマックスのコンサートシーン、終わりの情景、何れも素晴らしい映像です。

★★★★ シチリア! シチリア! サロンシネマ2
あの「ニューシネマパラダイス」の、ジュゼッペ・トルナトーレ監督の作品。音楽は、いつもコンビの、エンリオ・モリコーネ、相変わらずいい音楽です。この2作品、シチリアを舞台にし、監督の自伝的要素が感じられる。ただ、ニューシネマパラダイスが映画をメインテーマにしているのに対して、シチリア!シチリア!は一人の男の成長に伴う、様々なことを描いている。そして、ストーリーは次第に普遍性を帯びて、見ている者の心を強くとらえる。更に、シチリア!シチリア!の方は、構成が実に巧みである。初めの方の、子供が走っている場面はそこへの回帰を予測させるのだが、最後の方の転換は意外であり且つ成程と思わせる。巧くやられたと思いながらも笑みがこぼれる、そんな感じです。見ていない人にはなんのことか分からないだろうが、素晴らしい映画です。この二作とも、子役の使い方が抜群です。

★★★ 英国王のスピーチ 八丁座弐
現エリサベス二世の父、ジョージ六世の話。きつおん症に苦しみながら、第二次世界大戦に参戦する時の演説をやりとげるまでを扱っている。スピーチ矯正の専門家との遣り取りが、深刻でありながらかつコミカルにも描かれ、観るものを映画の世界に引き込む。実話の持つ力もあるのだろう、最後のスピーチの場面は感動的である。

★★★ 海炭市叙景 サロンシネマ1
佐藤泰志という若くして自死した作家の、未完の連作短編小説をもとにした映画。五つのエピソードからなっていて、海炭市(函館がモデル)という町での出来事だから、何となく繋がっている感じ。最初の話が、時間のスパンも広く、実に上手くできている。このストーリーが一応終わったところで、つまり、かなりの時間が経過して、「海炭市叙景」というタイトルがやっと出てくる。観ている方は、ここで期待が物凄く高まる。その高まりは少し期待外れになるのだが、それでも、二時間半という上映時間があっという間だった。海炭市のことを描いているのだが、それが何処にでも当て嵌まることになっているのは素晴らしいと思う。しかし、その方法に違和感があった。変な言い方だが、普通は帰納法で一般論を導くのがすんなり入れるやり方だと思う。この映画は演繹法で、一般論が先ずあって、それを海炭市に当てはめた、という印象を受けた。だから、理性に訴える方向を持っていて、感情を揺さぶる力が弱いのではないだろうか。中里あき演じるおばあさんが抜群だった。

★★ ウォール・ストリート 八丁座弐
タイトルの通り、ウォール街の金融を題材にした、騙し合いの中に、愛を絡めた、実にアメリカらしい映画。昔、同じオリバー・ストーンが監督した「ウォール街」の続編とのこと。それなりに楽しめるのだが、アメリカ独特なのか、この映画がそうなのか、怒りと寛容、同意と反発、といったものの基準に齟齬を感じて、ストーリーにのめり込むことが出来なかった。キャリー・マリガン、何処かで見た顔だと思ったら、「プライドと偏見」に妹役で出ていたそうで、とっても魅力的でした。

★★ 玄牝(げんぴん) 横川シネマ
老子の道徳経第六章にある、「谷神不死。是謂玄牝。玄牝之門、是謂天地根。緜緜若存、用之不勤。」、「谷神(こくしん)は死せず。これを玄牝(げんぴん)と謂(い)う。玄牝の門、これを天地の根(こん)と謂う。緜緜(めんめん)として存(そん)する若(ごと)く、これを用いて勤(つ)きず。」、「万物を生み出す谷間の神は、とめどなく生み出して死ぬ事は無い。これを私は「玄牝(げんぴん) – 神秘なる母性」と呼ぶ。この玄牝は天地万物を生み出す門である。その存在はぼんやりとはっきりとしないようでありながら、その働きは尽きる事は無い。」、からタイトルをとったそうです。
ということで、自然分娩のお話です。「垂乳女」という映画で自分の出産場面を公開した河瀬監督、この映画でも見ようによってはかなり衝撃的な出産場面を公開しています。愛知県岡崎市にある吉村医院が舞台で、説明は一切無く、吉村正医師と妊婦たちが主役です。彼女たちは自然分娩を宗教のごとく信じて、壁に向かってスクワットをしている光景が頻繁に出てきます。薪割りもするのですが、これもスクワットのようです。吉村医師はかなり高齢のようで、淡々と話をしますが、内容は結構過激です。すごいと思ったのは、出産では死があっても当然だ、という言葉でした。彼の言うことはほとんど正しいと思うし、自然分娩が好ましいというのも、確かにそうなのでしょう。女性たちの表情がとても生き生きしていて、出産直後の喜びと感謝の言葉が非常に印象的です。
最後の方で、医師の娘が、家庭を顧みなかった父親を非難する場面があるのですが、この映画にはそぐわない不必要なものだと思いました。

モンガに散る シネツイン新天地
体調がイマイチだったためかどうか、何がいいのか分からなかった。物語に入り込めず、突き放してみてしまった。男の友情が、結ばれるときも、壊れるときも、心を振るわせるものがなかった。

★★★ 冬の小鳥 サロンシネマ2
70年代半ば、韓国の孤児院が舞台。父親に捨てられた9歳の女の子が、現実を受け入れられず苦悩しながらも、最後は未来に向かって飛び立つ、というお話。原題は、全く新しい生活、何故冬の小鳥なのかは映画を見れば納得する。監督のウニー・ルコントが、韓国からフランスへ養子に行ったという自らの体験を下敷きに制作した。主演のキム・セロンが光っている。父親といるときに笑顔が素晴らしい。この笑顔が、最後に見られ、我々は安心して映画の終わりを迎えることができる。基本的に思いやりのある人物ばかりが登場し、見終わった後の気持ちが清々しい。

★★★ 息もできない シネツイン新天地
チンピラと女子高生の心の交流を描いた作品。ともに家庭が崩壊しているが、そこが拠り所であることは、自覚していようがいまいが、疑いの余地はない。ハッキリとは分からなかったが、男の家庭は、父親のために、母と妹が亡くなっている。父は、服役後も、反省はしているようだが、それが男を更にイライラさせる。女の方も、母親が死んでいる。父親はベトナム帰りで精神を病んでいる。この様な男女の状況は、かなりのリアリティを持って迫ってくる。実に上手い撮り方で、フラッシュバックなど、時間を前後させるやり方が効果的である。反発しながらも惹かれあう二人が、心を通わせる場面が素晴らしい。だんだんネタバレになるが、結末がありきたりである。つまり、主人公を死なせてしまうのだ。よくあるパターンで、ヤクザが足を洗おうとすると、最後の仕事で失敗するというやつだ。ここは、二人が交流を深めるという方向で終わってほしかった、と個人的には思う。もう一つ残念だったのは、カメラの手ぶれが多いこと、映像は見えにくいし、長いと気分が悪くなる。

★★★ セラフィーヌの庭 サロンシネマ1
実在した画家・セラフィーヌを描いた作品。天使のお告げでひっそりと描き続けていた絵が、ひょんなことから画商・ウーデの目にとまり、世に知られていくというストーリー。第一次世界大戦の勃発で、ドイツ人のウーデがフランスから逃げて行ったり、世界大恐慌で金回りが悪くなったり、なかなかスムーズには行かない。セラフィーヌ役のヨランド・モローが素晴らしい。フランスの美しい自然の中で、荒削りの芸術家という雰囲気が漂っている。特に最後の場面の美しさは何とも言えない。偶々、下の「白いリボン」と同じ時代で、ウーデ役のウルリッヒ・トゥクールが「白いリボン」にも出ていた。

★★★ 白いリボン シネツイン本通り
不思議な映画でした。第一次世界大戦前夜、ある男爵が治める地方で、不可思議な事件が次々と起こる。映画は、そのほとんどに解決を与えないままに終わる。その時代の不安な雰囲気をよく表しているし、更に、いつの時代にも存在する不条理な状況にも繋がっている。白黒の画像が怪しい世界を的確に表現している。2時間半近い作品であるが、すごく早く感じた。

★★★ 酔いがさめたら、うちに帰ろう。 横川シネマ
漫画家・西原里惠子の(元)旦那、写真家の鴨志田穣が書いた同名の本を、東陽一が映画化。おおまかに言うと、アルコール依存症との戦い、といえるが、それにまつわる諸々のことが巧く取り込まれていて、とてもいい映画になっている。人は一人では生きていけない、という当たり前のことが、しみじみと感じられる。浅野忠信も勿論いいが、永作博美が素晴らしい。禁酒病棟の個性的な面々が映画に広がりを、香山美子が落ち着きを与え、藤岡洋介と森くれあの二人の子役が明るさと希望を発散し、つながっていく未来を象徴する。最後の海岸の場面で、親子四人が一直線に並ぶ光景は感動的です。

★★ ソフィアの夜明け サロンシネマ1
去年の東京映画祭で、グランプリ、監督賞、主演男優賞をとった、ブルガリア映画。
ブルガリア!年間10本ぐらいしか映画をとらないそうです。
ソフィアの街は暗い感じです。そういう場所ばかりを選んだ訳でもなさそうです。映画の雰囲気と一致しています。麻薬中毒から抜けようとしている兄、ネオナチのグループに入った弟、二人の話です。説明的な部分はほとんどなく、淡々とした描写が続きます。最後にほんのちょっと「夜明け」を感じさせるところもありますが、全体的に元気の出ない映画です。これがブルガリアの現状、世界の現状なのかもしれません。

★★ 乱暴と待機 シネツイン新天地
何かいわくのある女二人と、彼女たちにくっ付いている男二人、この二組のカップルが近くに住むことから物語が始まる。ユニークな四人の登場人物だが、役者も個性的だ。浅野忠信、美波、小池栄子、山田孝之。これといったストーリーはないのですが、何か妙に面白い映画です。「永遠の愛は疑ってしまうけど、永遠の憎しみなら信じられる」、というセリフにこの映画のすべてがあるように思います。エンドロールに流れる、相対性理論と大谷能生の歌、もう一度聞きたい。

★★ バーレスク 八丁座 弐
田舎娘がショーの世界で成功をおさめるという、話としては単純なもの。ちょっぴり恋のお話し、お金(経営)のこともスパイスとして効いているが、この映画の魅力は何と言っても歌と踊りである。クリスティーナ・アギレラ、シェール、の歌は圧倒的で、ワクワクする。なかでも、アギレラが田舎で一人、都会での成功を夢見て歌う曲、シェールがミキサー二人とのリハーサルで、まだ頑張るぞと自らを鼓舞する曲、非常に印象的です。

★★ 金正日花(キムジョンギリア) 横川シネマ
東京で行われていた未公開映画祭が広島の横川シネマで開催中。いろいろ見たい作品がありますが、これだけはということで行きました。
金正日花とは、実在する花で、彼を讃えるために作られたベコニアの一種だそうです。作ったのは日本人とか。因みに、金日成花もあるそうです。金正雲花もできるかな。
映画は、脱北者のインタビューを中心に作られていて、北朝鮮のプロパガンダ映画などが挿入されています。内容は予想通りで、目新しいことはありません。
女性警察官(片方の足が不自由そうに見えます)と上流階級の令嬢のような若い女性二人の、踊りのような動きがところどころ挿入され、映画の主張が抽象的になってしまいます。
これはドキュメンタリーでしょうか。