読書中 軟弱者の戦争論 由紀草一

 2006年 83冊 (今年も乱読しました。作品数ではなく実際の本の冊数です。)

★★ アフリカ的段階について 吉本隆明
歴史はそれが書かれた時代の産物である、とよく言われる。精神史を取り入れているということは、時代の制約を逃れ普遍的なものを作ろうということだろう。果たしてこれは可能なのだろうか。精神は時間を超越しているのではないか。久し振りに錆びた頭を動かそうとしたが、厳しいものがあった。著者の娘の表記法も変わっているが、著者のも変わっている。漢字を使わなければ難しそうに見えないと言う訳でもないだろうに。
 アフリカ的な段階を人類の原型とみなすことは、ひとりでにモルガンの『古代社会』がいう野蛮の下層、中層、上層という類別で人類の初原状態を微進過程とする考え方を解体することになる。もっとひろくいえばルソーやヘーゲルからマルクスやエンゲルスなどにいたる巨匠たちが、十九世紀前半から外在(文明史)と内在(精神史)の稀な調和を前提としてつくりあげた歴史という考え方や、分類原理を解体することになる。このことはマルクスにはいくらか気付かれていたような気がする。マルクスが未開や原始と古典古代のあいだに「アジア的」という歴史段階を挿入しようとした(これは異質または異和概念とおもえる)のはそのためではなかろうか。野蛮、未開、原始というような歴史の進展概念を外在史と内在史の調和のもとに仮設してしまえば、「アジア的」な世界は、近代主義的な進歩史観をはみ出した異物概念だといってもよい。そこは時間の停滞と反復と遅延が、季節ごとに反復している農耕の世界だからだ。歴史はいちばん先進的な西欧近代との接触点が拡大する側面からかんがえるかぎりは、この「アジア的」な社会もまた、遅ればせに西欧文明のあとから進歩すると同時に「アジア的」な停滞と退歩の精神(内在)史を蓄積していく社会にほかならない。これは外在的に進歩を追跡することが、同時に内在的に退歩を追跡することと同義だという方法を、歴史概念にする以外には解決しようもないとおもえる。そのためには、はじめに原型として「アフリカ的」な段階を設定するほかに普遍性をもちえないとおもえる。 (p.107)
 過去のアフリカ、あるいは「アフリカ的」段階の豊かな精神の表情と、現在のアフリカが当面しているきびしい文明史の局面とはどう結びつけたら理想的なのか。結びつきなどはなく修復は不可能になっていて、その不可能をつくりあげたのは西欧の近代主義と、それをなんの疑問もなく追いかけて、偶然も幸いして西欧先進国なみになった日本のような追従国の理念だということになるのだろうか。からみ合った糸がもつれて、サジを投げたくなったアフリカ問題だけがうかがえる。 (p.113)
 自力で文明化したのではなく、欧米の先進文明の洪水によって水浸しになって溺れかかった固有アフリカの問題は、ほかのアフリカ的な段階にある地域とおなじように、欧米の先進文明の植民地になるか、欧米の文明史の洪水をうけいれて、知識的なエリート層から始まって欧米化してゆくほかに道はないのか。もちろん文明史を歴史の生理と見るかぎり、自然のまま成り行きにまかせるほか方途はありえない。それが現在のアフリカ問題の根本にひそんでいる。この根本にある課題は文明的な環境が早く進んだ地域と遅く後を追っている地域とが、いずれにせよ均等化するところへ集約されることでは解決にはならない。なぜならアフリカ的な段階には人類の原型的な課題がすべて含まれていることを掘り起こしえなければ、たんに進みと遅れ、進歩と停滞、先進と後進の問題に歴史は単純化されてしまうからだ。人類は文明の進展やエリート層への従属のために存在しているのではない。人類が何であるかの課題はそんなところには存在しない。(p.114)


★★★ 禅僧が医師をめざす理由 対本宗訓
凄い人だとただただ感嘆。細かい所には幾つか疑問符が付くが、全体を考えたら、そんなことは吹っ飛んでしまいます。次は、もう一冊の著書「坐禅」を読まなければ。更に、この人の人生をもっと詳しく知りたい。これまでのことも、これからのことも。
いくら心のケアー、魂のケアーとはいえ、身体と切り離された心などどこにもない。身体と心は互いに相依(そうえ)関係であって、仏教で言えば、「心身(しんじん)一如」だ。医者は身体ののみ診て心を診ないと批判されるが、そのことは逆の意味で僧侶の側にもあてはまる。つまり心のみを見て身体を見ることができないのだ。

★★ 統計学入門 小島寛之
統計の原理を理解したいという欲望が昔からあって、何冊か本を読んだ。その度に、カイ二乗分布やt分布あたりから、ぼんやりした状態になった。書評に、この本は判りやすいと書いてあったが、確かに今まで読んだ本に比べるとかなり判りやすく書いてあった。一応こういうものだということは判った。
私たちは単なる統計学のユーザーなのですから、数学者の成果を素直に信頼して先に進むのも正しいスタンスの1つでしょう。
つまり、かなり高度な数学を理解していない人間には真に統計学を理解することは不可能なのだ。
統計学の基礎の基礎が一応理解できたこと、そしてこれ以上の理解は私には不可能だということを判らせてくれたことに感謝。もうこれ以上統計学の理論に挑戦することは止めよう。

★★★★ 日本という国 小熊英二
中学生以上すべての人の、「よりみちパン!セ」、というシリーズの一冊。ほとんどの漢字にふりがながついている。しかし、書いてあることはかなり高度なことだ。中学生に理解できるか?
200ページ弱の本なので、明治と第二次世界大戦後に絞って書いてある。近代における日本の建国時代ということで。明治時代に出来た学制、戦後の日本国憲法、講和条約などの分析は素晴らしい。特に、戦後賠償についての考察は、戦時中のアメリカにおける日系移民対する迫害と戦後補償やシベリア抑留問題と絡め、なるほどと唸ってしまった。
分厚い本だがこの著者の「民主と愛国」も読んで見なければならない。
一九四五年二月、元首相の近衛文麿が天皇に降伏交渉を始めることを進言した。しかし天皇は、「もう一度戦果をあげてからでないとなかなか話は難しいと思う」と述べて、それを拒否した。この時点で戦争をやめていれば、三月の東京大空襲も、四月からの沖縄戦も、八月の原子爆弾も、ソ連参戦やその結果としての朝鮮半島の南北分断も、なくてすんだはずだった。
冷戦が終わったのと、日本の経済成長が止まったのがほぼ同時だというのは、なんらかの関係があるのかもしれない。
日本の自衛隊は、ほかの先進国の軍隊にない特徴を持っている。それは、冷戦後の兵力削減がほとんど進んでいないことだ。
機動展開のための中継基地は世界各地に必要だけれど、もう外国に大量の部隊や広大な基地をおいておく必要はないわけだ。にもかかわらず、在日米軍とその基地は、ほとんど減っていない。・・・なんで在日米軍や日本の米軍基地は減らないのか。・・・アメリカの・・国務次官補は、アメリカ議会の下院でこう述べている。在日米軍の基地は、駐留経費の約七割を日本政府が負担しているから、「米国内におくよりも日本に軍隊を駐留させる方が安上がりになる」と。

★★ 身体を通して時代を読む 甲野善紀×内田樹
人間というのは多少意見が違ってもフレンドリーに振られると、まっこうから違う意見はいいにくいものですよね。
対談というものは得てしてこのようになりがちだ。早い話が、一人が書いた方が判りやすく読みやすいということにもなる。この本は、対談の面白さが出ているとまではいかないが、上に引用したような言葉が出てそこそこの面白さだ。ただ、私はどうも肉体派にはなんとなく違和感を覚える。内田樹の言うことは判るのだが、甲野善樹の言うことは理解できないことが多かった。内田が言い換えている所がたくさんあるが、ほんとうにそれが甲野の意図なのか疑問に思った。
完璧に人間の運命は決まっていて同時に自由だという実感・・・
河野先生はいま「運命」というかなり強い言葉を使われましたが、僕はもう少し柔らかい表現で「潜在的可能性」とか「ポテンシャル」というふうに言っています。人間がどれぐらい潜在的可能性を持っているのか。武道の稽古を通じてそれをどこまで開花させることができるのか。それが修行の核心だと思うんです。
まめに驚く人間はあまり驚かされない。
相手をどう呼ぶかということは呼ぶ側と屋ばれる側のデリケートで緊張したやりとりの中で、ほとんど本能的に選択される「距離感」の表明ですよね。ある意味では、「間合いを取る」という真剣勝負の場でもあると思うんです。
自分の身体が要求する食べたいものは何かに耳を傾けていればほんとうに必要な栄養素を過不足なく摂取できるのと同じで、自分が求めている知りたいことは何かを自分に向かって訊ねていれば必要なことは過不足なく摂取できるはずだと思っているんですけれど、こういうやり方は学者としては正統的ではないんでしょうね。
医者は病人が治らないことからより多くの利益を得る。警察も同じで、犯罪者が増えることでその社会的有用性が高まるどんな職業にも、自分が治癒し解決すべき問題が解決しないことからかえって利益を得るという側面があるんです。


★★★ 蛇にピアス 金原ひとみ
これとペアで芥川賞を受賞した「蹴りたい背中」、その前作の「インストール」はほぼすぐに読んだ。なぜこれを読まなかったのかははっきり覚えていないが、たぶんテレビに映った作者が気に入らなかったのではなかったか。では、なぜ今頃になって読んだのかというと、この作者の父親が大学で小説の書き方を教えていて、その講座から実際に作家が何人か出ていると何かで読んだからだ。
読んでビックリした。初めは嫌悪感を催すような内容だが、不思議と引き込まれ一気に読んだ。ずいぶん昔だが、「限りなく透明に近いブルー」の読後感と似ている。自分の存在空間とは全く違う世界に誘われて、それでいてあまり違和感もない。ザワザワした感じがあるのだけれども、なんとなく納得させられる。彼女は村上龍を超える天才かもしれない。

★★ 東京タワー リリー・フランキー
結構面白く惹きつけられたが、本を読んでいるというよりはテレビドラマを見ているような感じだった。実際テレビドラマになったようだが、単発ではなく連続にピッタリだろう。これまた近いうちにそうなるそうだ。私は見ないが。映画化もされるようで、もうご勝手にして下さい。
人間の能力には果てしない可能性があったにしても、人間の「感情」はすでに、大昔から限界が見えているのだから。

★★★ 文体練習 レーモン・クノー
この本の執筆は42年の12篇からはじまり、46編が雑誌に発表された。46年に残りが執筆され計99編が、47年に単行本として出版された。その後、73年にいくつかの断章を大幅に書き換えた新版を出した。日本語への翻訳は朝比奈弘治によって行われ、96年に出版されている。
この本は言葉に興味がある人でないと全く面白くないだろう。ちょっとした出来事を99通りの文体で書いているのだ。中にはジョイスばりの言葉の遊びがあるので、原語で読まないかぎりその面白さを味わうことは出来ない、というか、少々フランス語がわかってもダメだろう。このような特殊なものをのぞけば、翻訳でも十分に楽しめる。(特殊なものも翻訳者の工夫でその遊び心を楽しむことが出来る。)久し振りに学生時代の気分にかえり、アランロブグリエやビュトール、イヨネスコを思い出した。
この翻訳者、何ものかよく判らないが、凄い才能の持ち主ではないか。
日本語の場合は、単語に関するかぎり外来語を取り入れるのは簡単なことだ。名詞には助詞をくっつけ、動詞なら「・・・する」、形容詞なら「・・・な」といった形にすれば、語順の問題も語形変化の問題も解決してしまう。・・・・・みずからの文法体系や発音体系を根本的に崩すことなく、あらゆる外国語の単語をいくらでも自由に取り込んできたわけだ。この安易であると同時に素晴らしく柔軟な言語構造(および表記システム)が、歴史的に見ていかに外国文化の摂取に役立ったか、同時にそうした摂取が良くも悪くもいかに表層的なところに止まらざるを得ず、かつ止まることを可能にしてくれたか、といったことが・・・・・わかる。

★★ 鏡の法則 野口嘉則
帯に「読んだ人の9割が涙した!」と書いてある。確かに感動的なお話だ。文中に、何か宗教じみた話、とか、昔から宗教で言われてきたこと、とかいう記述がある。何の宗教にも入っていませんと言う人が語る内容は、何の宗教も信じていない私から見ると、間違いなく一つの宗教である。それだから価値が下がるわけではない。世の中全て信じるものは救われる。これはアイロニーではなく、文字通りの意味である。解説とあとがき、は無い方がいいと思う。一読の価値あり。

★★ ナイチンゲールの沈黙 海堂尊
400ページ超をグイグイ読ませる。確かに面白いのだが、歌と脳の関係に「?」がつく。医者が書いているのだから根拠はあるのだろうが、最後まで引っ掛かった。しかしその他はうまく書かれていて、十分楽しめた。ミステリーというよりはファンタジーと思えばいいのかも知れない。映画に向いているのではないか。

★★ 文学賞メッタ斬り! 大森望・豊崎由美
本当にいろいろな文学賞があるものだと感心した。
対談形式で13 ROUND から成っていて、それぞれに文学賞の心得と言う纏めがついている。
その一つ:「文学賞は、作家のためにある (読者のためにあるのではない)。
知らない文学賞もたくさんあるが、文学ジャンルにも「?」というものが増えているようだ。もちろん聞いたこともない作家や作品がわんさか出てくるが、南米のマジックリアリズム、メタフィクション系、というジャンルがまだ存在していることにはちょっと驚いた。
「純文学系で一番美しい受賞歴ってどんな流れか考えてみました。まず《文學界》か《群像》の新人賞をとってデビューして、初ノミネートで即芥川賞受賞。できれば野間文芸新人賞と三島賞でトリプル受賞を狙ってほしい。少し年を取ったら、うーん、とりあえず川端康成文学賞は欲しいところでしょうか。」「短編でね。」「で、長編で讀賣文学賞小説賞と野間文芸賞のどちらかを。そのあと谷崎潤一郎賞?川端賞、谷崎賞、泉鏡花文学賞のいずれかは欲しいでしょう。で、純文学のあがりは、なんといってもノーベル賞(笑)。これに尽きますよ。」

★★ 池上彰の新聞勉強術 池上彰
多少のトリビアはあったが、ごく常識的なやさしい本でした。
新聞の広告は見開きの右ページに多い、と書いてあったがそうでもないのでは?

★★ のり子44歳 いま、伝えたい 白井のり子
この人のことはすっかり忘れていました。ここ数年熊本に行くことが何度もあったのに少しも思い出すことがありませんでした。これは本人が望んだ生き方が成功していたということでしょう。それなのになぜ今、日の当る所に出てきたのか。それは本を読めば分かります。なるほどと思いました。講演を聴きに行きたいと思います。話すことに慣れたら、もっとたくさん書くことが出てくるでしょう。次の著作も楽しみです。映画をもう一回撮るのもいいのではないでしょうか。

★★ 在日の耐えられない軽さ 鄭大均
イスラエルに渡ったユダヤ系アメリカ人と北朝鮮に渡った在日に共通するのは、アウトサイダーからインサイダーへという無徴化のもくろみが逆に有徴化を強化してしまうという皮肉であるが、両者にはなにか共通する錯誤のようなものがあったのだろうか。わたしは80年代半ばに記したエッセーで、ユダヤ系アメリカ人にも、在日朝鮮人にも自分の「ユダヤ人性」や「朝鮮人性」に対する信頼が強すぎたのだと指摘したが、たぶんこの指摘は妥当なものであろう。
多くの在日二世が関心を寄せていたのはライフ・チャンスの問題であり、誰かが、日本に住むというなら、日本の国籍を取得すればいいのだ、それはなにも恥ずべきことではないのだといってくれればよかったのだが、民族組織も在日論もそういう当たり前のことをけっしていってくれないのである。

以前読んだこの著者の「在日韓国人の終焉」という本はとても分かりやすかった。思っていても日本人が在日に言えないことをあっさりと言ってしまったのだ。この本も同じ趣旨で、さらに過激になっているようだ。身内に対する批判にも鋭いものがある。現実論としては全くその通りだが、理論的にも正しいのかは分からない。そもそも理論なんか必要ないのか。この著者の主張を踏まえ、反対の立場に立つ人の意見も聞いてみたい。

★★ 態度が悪くてすみません 内田樹(たつる)
内なる「他者」との出会い、という副題がついている。
面白いことは面白いのだが、全体を貫くものがないので読みにくい。読む速度が上がらない。
私たちがものを書くのは、「もうわかっている」ことを出力するためではなく、「まだ知らないこと」を知るためです。自分が次にどんなことばを書くのか、それがここまで書いたセンテンスとどうつながるかが「わからない」ときのあのめまいに似た感覚を求めて、私たちはことばを手探りしているのです。
シティ・ガールたちは防衛のために身体感受性の感度を下げることを余儀なくされる。不快な感覚情報の入力を遮断することで、かろうじて彼女たちはタイトでストレスフルな都会社会を生き延びているのである。
思春期の子どもたちが、自分の中で、いくつもの声やいくつもの欲望やいくつもの身体的なざわめきがとりとめもなく行き交うのに疲れ果てて、「できあいの型」にはまることで、そのストレスをまぬかれようとする行き方
1960−70年代のベトナム戦争のときもアメリカは危機的だったが、「ベトナム反戦運動」というものがあり、公民権運動、ヒッピー・ムーブメント、ロックミュージックなどの「対抗文化」がかろうじてアメリカを支えた。今のアメリカにそのような対抗的な支えは存在しない。

おわりの方に面白いものが多く、特に構造主義についてのものは今までに読んだ中で最も分かりやすいものだった。

★★★ ウルトラ・ダラー 手嶋龍一
この本は、「ドキュメンタリー・ノベル」と銘打ってある。どのように分類するかは別にして、ともかく面白い。334ページ、長さを感じることなく一気に読める。そして、ゴルゴ13を思い出させる。話題がタイムリーで、後半次第に現実から離れるところも似ている。ただ残念なのは、男女関係が何か不自然、伏線が露骨、展開が荒い。とは言え、このあたりもゴルゴ13と似ていて、読んで面白い。

★★★ 「新中流」の誕生 和田秀樹
この種の本では最も説得力がある。女性の社会進出がもたらした結果は良い面ばかりではないという論調は最近増えてきた。これは今後大いに検討すべきことだろう。この本は結論というか提言に難点がある。もっと実現できそうなことを言うべきだ。それと、専業主婦についての記述は本当なのか?
アメリカは世界でいちばん専業主婦の多い国だった。と言うよりも、専業主婦が当たり前になった最初の国である。賃金労働に就かず、家庭で家事や育児などに従事する専業主婦自体が、アメリカで中流層の形成される過程で生まれたのだ。七〇年代の男女同権運動の中で女性が働くことが普通になることで、短期間で数千万人単位の労働力が増えたのではないか。労働力がたとえば五割増えれば、単純に計算すると賃金は三分の二に減る。実際は買い手市場になるのでもっと値切られる。・・・アメリカの中流は崩壊したのだと思われる。
日本の金持ちは日本製品を買わない。お金があると国産高級ブランドの御幸毛織のスーツを買わずにアルマーニやダンヒルを買うし、ヨーロッパのブランド物のバッグを買う。着物さえほとんど買わないし、車もトヨタでなくベンツだ。これでは、日本に金持ち層ができても日本の産業は潤わない。一方で貧乏な層が増えると、中国製品やその他のアジアの製品を買うのでやはり日本の製品を買わなくなる。階層分化すると、国の基幹産業が崩壊してしまうシステムだということだ。これはアメリカと同じ構造である。
九〇年代の日本の敗北は金融だけでなく、三〇年かけて作ってきたメイド・イン・ジャパンのブランドイメージも崩した歴史でもあったと私には思える。終身雇用や年功序列という賃金体系をやめてしまったことも含めて、バブル以降の日本企業は悪循環の連続である。社員の愛社精神によって、高い品質を保っていたのに、質に対するこだわりや評価を犠牲にして、安い労働力を求めて、中国などに生産拠点を求めて、中国でも作れる物の印象を与えていく。中流を崩壊させて、自国市場をシュリンクさせ、さらに安くしないと売れない構造を作ってゆく。日本の強さの秘密は意外にそういうところにあったのかもしれないと見直すことなく、貧富の差を付けるほうがいいのだという決め付けを疑わない。また、安くしないと売れないと思い込んだ。
これまでも見てきたように中流社会の良さはたくさんある。人びとはより良いものを求め、治安状況も安定していた。格差がそれほどなく、「あきらめ組」が少なくて教育レベルも高かった。それが短期間で崩れていく過程で、格差社会になり、治安も不安定になっている。教育レベルが下がり四割の子どもが学校外では勉強しないという事態にまでなっている。正社員雇用率が低くなって、安い物をこぞって買う国民性にもなった。差を付ければいいという政策に走ってしまったことで、いろんなものが崩れてしまったのだ。


★★ 憲法九条を世界遺産に 太田光・中沢新一
お笑い芸人と大学教授の対談。本のタイトルとこの二人の組み合わせはウケ狙いとしか思えないが、仕組んだ人間はともかく、この二人は結構真面目(失礼)。爆笑問題がどのような芸人かを、また、日頃の言動についても、全く知らない、知ろうともしない者がこの本を読むべきではなかったのかもしれない。発想の面白さ、ある意味ついていけないところもあったが、まあ楽しめました。
戦争をしていた日本とアメリカが、戦争が終わったとたん、日米合作であの無垢な理想憲法を作った。時代の流れからして、日本もアメリカもあの無垢な理想に向かい合えたのは、あの瞬間しかなかったんじゃないか。日本人の、十五年も続いた戦争に嫌気がさしているピークの感情と、この国を二度と戦争を起こさせない国にしようというアメリカの思惑が重なった瞬間に、ぽっとできた。これはもう誰が作ったかという次元を超えたものだし、国の境すら超越した合作だし、奇跡的な成立の仕方だなと感じたんです。
エジプトのピラミッドも、人類の英知を超えた建造物であるがゆえに、世界遺産に指定されているわけですね。日本国憲法、とくに九条は、まさにそういう存在だと思います。


★★ 世界の日本人ジョーク集 早坂隆
あとがきにフランシス・ベーコンの言葉が引用されている。
「冗談はしばしば真実を伝える手段として役立つ」
まえがきには、「気軽に楽しんでいただければ幸いである」と著者は書いている。
当然この両方を狙った本でまあ楽しめました。ただこの手の本は一気に集中して読むのには向いていない、と私は思う。それで読み終わるのに結構時間がかかった。
新製品が世に流通するまでには、全部で四つの段階がある。まず、アメリカの企業が新製品の開発をする。次にロシア人が、「自分たちは同じ物を、もうすでに三〇年まえに考え出していた」と主張する。そして、日本人がアメリカ製以上のクオリティのものを造り、輸出し始める。最後に、中国人が日本製のものに似せた偽物を作る。
日本とはやはりしんぴのくにである。神道の信者が約一億五〇〇万人。仏教徒が九五〇〇万人。そして、「あなたの宗教は?」との質問に、約半数が「無宗教」と答える。
グローバリズムとは何のことか:イギリス王室にいた女性がエジプト人と恋に落ち、パリでドイツ製の車に乗っていたところを、日本製のバイクに乗ったフランス人のパパラッチに追い回され、その結果起きた事故のこと。

★★ データの罠 田村秀
各種調査の解説とそこから出てくるデータの読み方がまず説明される。調査の設問の立て方、選択肢の作り方、といった基本から、サンプルの抽出方法、回収率の大切さ、などの解説が続く。
その後具体的な話が出てきて、なかなか興味深いこともあった。
今、テレビの視聴率調査はビデオリサーチ一社だけになった。これで信頼できるのだろうか?
具体的な数値目標を設定するケースは、官民問わず多い。本来は実現したい目的があって、それを達成するために目標が設定される。しかし、現実には数値で示された目標をなんとか達成しようとして、ありとあらゆる手法が使われる。結局、本来の目的がおざなりにされ、数値目標の達成という手段が目的化しがちである。
公共投資が民間の需要を創出する効用はあるが、大都会の公共事業はほとんどが用地代に消え、結果として土地成金を増やすだけになっている。東関東自動車道では1キロメートル当たりの建設費752億円のうち土地代が700億円、大分では50億円のうち9億円が土地代だった。
欧米の街の豊かさは、個々人の住生活に一定の縛りをかけて、住宅の集合化、共有化によって醸成されている部分が大きい。日本の場合、建築自由の代償として公園などの公共空間は貧弱となっている。社会資本の整備を本格的に始めた時期が遅かったということもあるが、何よりも人々の住まい方の違いが、街並みを貧弱にしている。

グーグル完全活用本 創藝舎
新たな発見もあったが、既に知っていることも多かった。まだ検索の重要さを知らないということか。

★★ なぜ悪人を殺してはいけないのか 小谷野敦
タイトルに関する内容がこの本の全部ではない。色々なことについて論じられている。著者本人が最後に配置されている「カナダ留学実記」書いているが、「着想は素晴らしいが論証が出来ていない」と言われてとのこと。この本は正しくそんな感じがする。更に、とてもCONTROVERSIAL(議論を喧嘩腰に吹っ掛ける)だ。これまで読んだこの著者の本ではあまり感じることがなかったことだ。書き方にゆとり・遊び心がなく、読んでいて楽しくない。まあそのような意図はないのだろうが。

★★ 誰が教育を殺したか? 夏木智
現職の高校教員が書いた本で、実態がうまく書けている。第1部教育の風景は是非多くの人に読んでもらいたいものだ。発想も素晴らしく共感できる所が多々ある。しかし、この著者の『前提』はユニークで、第2部には反発を感じる人も多いだろう。
人びとは(自分にとっては明らかな)強固な前提の上に構成された議論が好きなのである。だが、それでは見かけは議論でも、実質は宗教である。食い違う議論を外から見ていると、それは、たいてい疑われない前提の食い違いから起きている。そこが疑われないかぎり、いつまで議論をしても宗教戦争がつづくだけなのだ。
入学試験が「学歴」の保証として信頼されているのは、教育者と評価者が切り離された評価だからである。
人間のもつすべての能力に関して、生まれながらの大きな格差がある。人々は、その格差の存在を認めても、格差の大きさを理解していない。この格差は、非常に大きなもので、少なくとも「教育」によって解消できるものではない。

教育は関係者以外には一過性のもの、なのではないか。議員さんには票につながらないもの、と言われている。もっと皆が教育の重要性に関心を持たないと、現場の実情を知らない所での議論ばかりで、何時まで経っても良くならないだろう。

★★ 旅の極意、人生の極意 大前研一
大前研一は食わず嫌いだった。そもそもビジネス書はほとんど読まない。この本は書評で見て読む気になった。15の旅が紹介されているが、あまりに高級すぎて、ゴルフ・スキーはやらないと決めている貧乏人には、行こうという気すらおこらなかった。(タイ、プーケット島のアマンプリはちょっと食指が動いた。)この本の面白いところは、前書きやコラムのように挿入されている A History of Ohmae という部分だ。著者の旅に絡んだ経験が書いてあり、ちょっと感動した。なかなか凄い人物だと思った。

★★★ ニューヨーク地下共和国 梁石日
(上)、482ページ、(下)、449ページへ。
(下)になってからの展開には驚いた。また、そのために最後は収拾がつかなくなったという面もあるだろう。話の内容からしてこのような終わり方も仕方ないが、もう少しカタルシスが欲しい所だ。ほとんど男女の話がなかったのに(上)の最後の方に出てきた。必要なのか、と感じたが、ラストで多少効いているか。長い本だったが十分楽しめた。映画化されるか?見に行くことはないが。

★★ 美しい国へ 安倍晋三
この手の本を読むのは初めて。図書館で割りと短期間で借りることが出来た。そんなに人気がないのかもしれない。内容はさすがに右の人だと思わせる。外国では、小泉前首相を charismatic と評価し、安部新首相は Nationalist と形容しているそうだ。ちょうどこの本を読んでいる間に、施政方針演説があり、カタカナが多いという論評があったが、この本も正しくそうだ。ヒドイ例をひとつ:「プルーデントな認識」、これは普通の日本人には分からないだろう。もう一つ気になったのが、天皇制擁護の観点から聖武天皇の大仏建立についての記述である。詔の美辞麗句だけを引用し、実際がどうだったかを全く書いていない。これはいけません。この種の本が出されるといつも話題になるゴーストライターの存在だが、いるだろうという印象を受けた。結構楽しませてもらいました。

★★★ 思想としての全共闘世代 小阪修平
この種の本ではなかなかよく書けた本だとは思う。それは当事者が書いたものだということによるのだろう。この世代ではないものが書くとどうしても世代論としてまとめようとするので当事者が読むと強烈な違和感を持ってしまう。全共闘世代と言おうと団塊の世代と言おうと、要は人数が一番多いのだ。そこになにか共通のものを見出そうということは無理ではないか。
安田講堂を権力と対峙する象徴にしたてあげるといった政治的象徴主義の発想はもともと全共闘にはなかった。
安田講堂と京大の時計台の攻防は同じだったのか。時計台の上の砦は機動隊導入の直前に作られた。つまり象徴である。何の象徴かはいまだによく分からない。
全共闘世代の出発点は、戦後民主主義のタテマエと実際の間のずれをうそくさいと感じ、そのずれ、つまり自分の頭の中の世界と実際の生き方とを一元化することで戦後民主主義を批判したことだった。だが、直截に自分の生にかんする観念を実現しようとする試みが根本的に不可能であることが明らかになったのが八〇年代であり、そこにポストモダンが流行する必然性があったのかもしれない。それは生と知の間に、戦後民主主義的なずれとはまた別種の「ずれ」がさしはさまれざるをえなかった、ということでもある。
全共闘運動は、この本の言い方を借りれば、「巻き込まれた」一人一人にとって、それぞれ固有のものだった、と言えるだろう。その出発点は、“このままでいいのか”と言う問い掛けだったと思う。終着点はまだ遠い。

★★★ まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん
最新直木賞受賞作。なかなかうまい作品です。初め多田・行天コンビに感じた違和感も、少しずつ二人の過去が明らかになるに連れて無くなって行き、すんなり読めるようになりました。短編集ともいえる構成がうまくできている反面、物語の大きな展開を阻害しているのは仕方のないことか。

★★★ なぜ、人を殺してはいけないのですか ヒュー・ブラウン
北アイルランドでIRAに対抗するイギリス系のテロ組織加わった少年。人を殺しはしなかったが悪行の限りを尽くし自分は殺されそうな目にあう。刑務所で『ベン・ハー』を見て宗教に目覚める。出所後学校に通い宣教師になり、日本へ。といった人の半生の自伝です。実に凄い人です。面白くためになり感動的なのですが、最後の方ちょっと宗教臭さが鼻につきます。それでも素晴らしい言い言葉:
笑わせるのではなく、笑われて得意になっています。(日本のお笑い芸人に対する批判)
お互い愚かな弱い人間同士、赦し合い、愛し合わなくてはなりません。一人では生きていけない人間が、幸せになる唯一の知恵であり、古今東西共通の、最高の教えだったのではないでしょうか。

★★★★ 英語教育はなぜ間違うのか 山田雄一郎
日本の英語教育批判の本として、今まで読んだものの中で一番だ。我々が英語に対して持っている劣等感・強迫観念など実に鋭い。ALTに関する分析もまさにその通りだ。英語教育の専門家がいっているこのような意見を、英語教育の方向を決める人たちにはどう思っているのだろう。今、小学生に英語が導入されている。この本にも書いてある通り、理念なきもので、百害あって一理なしだ。バイリンガルに関しての考察も面白い。
日本語を通してのしっかりとした基礎知識やものの見方が備わっていなければ、英語で表現すべき考えも生まれてこない。
これからの日本人は英語ができなければならないという漠然とした思い込みは、かえってわれわれの英語学習を視野の狭いものにする恐れがある。学校英語教育の目的を英会話能力などに限定してはいけない。外国語の学習は、もっと豊かなものにつながっている。英語を丁寧に学習すれば、それまで見えなかった日本語が見えてくる。英語という言語が持っている広い世界は、われわれのものの見方に新しい視点を加えてくれる。
大いに問題になったのは、「国際化」論議における、この語そのものの概念である。国際化は、かつては「植民地化」と一致し、日本では、欧米主義的近代化と一致し、また最近では「アメリカ化」とあまり変わらない面ももっている。
論理的に納得した上で練習に励む、または、練習を通して論理を発見する――言語学習は、この二つの協力がなければ成立しないといってもよい。


★★ 歪められる日本現代史 秦郁彦
右よりの本である。この手の本に共通するのは、相手のちょっとした事実誤認を徹底的に追及し、それをもって全体の信頼性に疑問を投げかけるというものである。全体的主張への議論はなく、争点を避け逃げていると非難するだけである。ただ、事実関係が事細かに書いてあるので反論するのは素人には困難だ。著者は、半藤一利に近いと自ら書いているが、著書を読む限りそんな感じはない。
この本の中にある、ハインリッヒ・ハイネの言葉:
「人間は歴史から何ものも学びえないということを歴史から学ぶ」

★★★ たそがれゆく日米同盟 手嶋龍一
次期支援戦闘機・FSXをめぐる日米の軋轢を扱ったノンフィクション。91年に出された本の再版。初めは、「ニッポンSFXを撃て―たそがれゆく日米同盟―」というタイトルだったが、今回はタイトルと副題が入れ替わっている。FSXについての日米の確執の底流に流れているものをあぶりだし、実に面白い読み物になっている。当時は日本の政治家も官僚も自立の気概をもってことを進めていたようだ。その方向性はともかく、今のアメリカ追従の人々より、その姿勢は素晴らしい。だんだん政治家もパフォーマンスだけで中身が無くなっていくようだ。

★★ 陰日向に咲く 劇団ひとり
作者はコメディアンだと思っていた。と言っても、テレビでも見たことなし。映画「嫌われ松子の一生」で見た。特に印象なし。この本は本屋の店頭で見ていた。小説だとは全く思っても見なかった。インターネットの書評でべた褒めだったのと、たまたまこの直後手に入ったので読んでみた。
「道草」「拝啓、僕のアイドル様」「ピンボケな私」「Over run」「鳴き砂を歩く犬」の五編からなる連作短編集で、何らかの登場人物がちょこっと次に繋がっていく。うまい繋がり方もあるが、無理矢理という感じが強い。このことも含め全体的に若さが出すぎている。もう少しかどが取れるとよくなるだろう、次の作品がどうなるか注目。

★★★ イン・ザ・プール 奥田英朗
表題作以外に、「勃ちっ放し」「コンパニオン」「フレンズ」「いてもたっても」。
神経科医・伊良部一郎を狂言回しにした短編集。取り上げられる病気は、不定愁訴→水泳依存症、陰茎強直症、被害妄想、携帯電話依存症、強迫神経症。患者もヘンなのだが、それ以上に医者がヘン。デブ、マザコン、注射フェチ。良く言えば、おおらか。さらに、看護婦もヘン。これらの登場人物が繰り広げる、コメディです。病気は深刻そうですが、コメディです。とても楽しめました。

★★ チーム・バチスタの栄光 海堂尊
久し振りにミステリーを読んだ。『このミステリーがすごい!』大賞、第4回2006年対象受賞作だそうです。確かにグイグイと読ませて面白いのだが、肝心の動機に説得力がない。登場人物のユニークな個性、ストーリー展開のうまさが際立っているだけに惜しい。

★★★★ なぜ日本人は日本語が話せるのか 今井邦彦
「ことば学」20話、というサブタイトルがついている。書名はその中の一話である。なぜ日本人は日本語が話せるのか、は、なぜ人間は言葉を話せるのか、と同じである。「人間には普遍文法が生まれながらに備わっている」というチョムスキーの説が紹介されている。仮説ではあろうが、説得力はある。
その他にも興味深いことが書いてあって、なかなか面白い本である。二つほど具体例を。
人間の言語の特徴:超越性(過去や未来について語ることができる)・創造性(単語や文)・構造を持つ(そのものを形作っている要素の結びつきについて一定の決まりがある)・恣意的(単語[その音]とその単語が意味するものやことがらの間に必然的な関係がない)
言語の「意味確定度不十分性」:表現したいことをもれなく表現することはできない
このようなことを意識して言葉を使うべきだろう。著者は書いてなかったが、コミュニケーションの成立は人の善意によるところが多いのではないだろうか。

あらすじで読む世界の名著No.2 小川義男 編著
読む本がなくなり図書館で目に付いたので借りた。このシリーズは確か4冊目だが、これが一番出来が悪い。ダラダラと筋を追うだけで、その本をどう捉えているのかという世界観を感じられないものが多かった。その為、昔読んだ本が生き生きと蘇るということがなかった。
多分高校生の頃読んでとても感動した「武器よさらば」、あらすじを読んでいて、こんな話だったのかと驚いた。ン十年前のことだから仕方の無いことか。

★★ 東大教授の通信簿 石浦章一
この本は、学生と読む『三四郎』、の中で触れられていた。総合評価を見ると、大変満足、ほぼ満足に、普通である、を加えて八割を越す学生が授業に満足しているという結果が得られました。ここが取り上げられていて、「普通である」を加えて満足といっていいのか、「普通である」の割合はどれくらいなのか、という突込みが入っていた。成城大学vs東京大学、石原千秋vs石浦章一、はこの二冊の本で見る限り、成城・石原の勝ちである。東大の方は敢えて醜い部分を出しているのだろうが、それにしても教員も学生もその意識の幼稚さに唖然とする。日本の未来がとても不安だ。
今の学生と私たちの時代で何が違うかというと、話しを聞いて書き取ることができない、ということです。
教育とは難しいものです。学生による授業評価、参考になりました。

★★★ 学生と読む『三四郎』 石原千秋
この著者の本は4・5冊読んだが、多少同工異曲の感があるものの、それぞれに十分楽しめる。この本はタイトルほどには『三四郎』、つまり文学中心ではなく、著者と関係の深い成城大学を舞台にした現代大学論として読める。
教室だけでしか勉強しない学生は、「優秀」には見えるかもしれない。しかし、教室の外で勉強しなくなった学生たちは、「教養」がないように見えてしまう。一方、教室に失望した学生たちは、どこでも勉強しなくなる。
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この本の中で言及されていたので、「東京ブックマップ」という本を市の図書館で借りて眺めてみた。書店街マップ・大書店ガイド・専門書店ガイド・大図書館ガイド・専門図書館ガイドの5つのパートからなり、さすがに東京だと思った。東京に住んでいたら役に立つだろう。
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『三四郎』を読む前の訓練で田山花袋少女病」を取り上げていた。未読だったので読んでみた。対立する二項(見る・見られる/都会・田舎など)で解読していたが、確かにおもしろい素材である。青年・中年/理想・現実/捨て去りたい過去とまだ執着していたい過去などなど。主人公には未来がない、が、だからといって死なせるのはどうだろうか。語り手の位置のブレが気になった。

★★★ ユダの福音書を追え ハーバード・クロスニー
幻の「ユダの福音書」発見から発表に至る紆余曲折を追ったノンフィクション。もちろんキリスト教ユダヤ教の話もあるが、メインはパピルスに書かれた古文書である。エジプトに於けるこのような古文書などの遺物の扱いやその取引のやりかた、欧米に於ける売買の仕組み、など知らない世界を垣間見ることが出来た。その世界でこの古文書が辿った運命は想像を絶するものであった。ただ書き方がハリウッド映画みたいで、無理に盛り上げようとしているように思えた。展開それ自体が衝撃的なのだから、もっと素直にストレートに書いた方が心を動かされると思う。
肝心の福音書の内容であるが、まだ完全には解読されていないようでだ。しかし、凡そ予測された範囲のもので、本物が出てきたということが重要なのだろう。とはいえ、キリスト教にとっては大問題であることには違いない。

★★★★ 漢文の素養 加藤徹
漢字・漢文で日本の歴史・東洋の歴史を見ていくという本。専門知識とそれに付随する範囲の知識はもちろんだが、ものの見方が素晴らしい。漢字・漢文は、特に古い時代の日本においては、言語そのものと言っていいだろう。これが如何に歴史に影響を与えたかを見事に記述している。忠臣蔵に関する考察もなかなかに興味深いものだった。多少我田引水的なところもあるが許容範囲だろう。
文字記録に対する抑制、という現象は、どの民族にもあった。・・・仏教の経典の多くが漢訳仏典では「如是我聞」という言葉で始まる・・・『旧約聖書』の神の名前も、その正確な発音を文字に写すことを禁じられたため、YHWHという、「聖四文字」の子音しか伝わらず、どう母音をつけて読むか、不明になってしまった。
日本でだけ、漢字が複数の字音をもつ理由は、「棲み分け」という日本文化固有の現象による。[権力者の交替、元号]
日本漢語=和製漢語(日本人の生活に密着した独特の漢語、中国人には分からない:一応、家来、尾籠)+新漢語(近代西洋の概念や文物を翻訳する過程で日本人が考案した漢語、中国や朝鮮に輸出された:科学、進化、経済、自由、権利、民主主義)
現代中国語の「高級語彙」は、実は、半分以上が日本漢語である。例えば、中国語で「中華人民共和国憲法規定的権利和義務」というとき、純粋な中国漢語は「中華」「規定」「的(の)」「和(と)」だけ
大正時代以降、日本人の漢文的教養は、基本的に「消費財としての教養」となったまま、今日に至っている。(二千年前、「威信財」として日本に入ってきた漢文:「生産財としての教養」だった江戸時代)

★★ 世界で一番おもしろい地図帳 おもしろ地理学会[編]
地理に関する雑学の本。ちょっとした話がたくさん載っていて、細切れの時間によい。なるほど面白い、といったものから、そんなこと知ってるよ、ふ〜ん、・・・などいろいろ。
◎海底ケーブル。
モールス信号が発明されたことがきっかけ(1837)。
1851年、ロンドンとパリ間に開通(明治維新の17年前)。明治維新の2年前、イギリスとアメリカ間に完成。その後、インドからシンガポール、ジャカルタ、バンコク、香港まで伸ばした。その香港からはデンマークの会社が出島のある長崎まで通していた。だから明治政府の使節団がニューヨークから東京に電報を打ったら、ヨーロッパ経由で長崎まで数時間で着いたのに、長崎から東京までは飛脚で3日かかった。

◎時差。
東西に長い国では複数の時間帯を持つ。世界一東西に長い国はむろんロシア。経度差170度。ほぼ地球の半周分。ロシアには11の時間帯がある。中国は経度差60度。普通に考えると4つの時間帯があってもいいのに、1つだけ。それも人口の多い大都市がある東が基準になっている。西域では朝ごはんを昼に食べるということになる。

★★★ 男の子の脳、女の子の脳 レナード・サックス
男女には身体的に差がある。これは間違いない。のみならず、脳に差がある、と著者は主張する。生後にも差が生じるであろうが、そもそもその構造や機能が違うのだ。肉体的にも精神的にも異なる男女が、社会的な平等を求めるのはいいが、生物学的差を無視しすぎている。この本の主張にはとても説得力がある。特に教育分野でこの差異を意識した方法が求められる。
取っ組み合いやけんかをすることで、若いオスたちはゲームの規則を教えられるのだ。若いオスの霊長類がほかのオスとけんかできる機会をもたなければ、そのオスはおとなしく育つどころか、より暴力的なおとなになる。そうしたオスが、遊び半分で攻撃性を発揮しながらほかのオスとつきあっていく方法を習わずにいると、怒りは内に封じ込められ、やがて爆発する。わたしたちのいとこがそうだとすれば、それは人間にもあてはまるのではないか。
教育関係者の多くは相変わらずジェンダーを、生来の生物学的特性ではなく、社会的につくられた役割だとみなしている。だが証拠を検証した結果、こうした見方は「いちじるしく不完全」だといえる。ジェンダーは、「より根源的な、人間のアイデンティティと社会的意味の中心にあるものだ。――その理由としては、ジェンダーが生物学的に決定されたもので、脳の構造や機能と結びついていること、また成人期への移行に深く関わっていることなどがあげられる」


★★★ 包帯クラブ 天童荒太
久し振りの、本当に久し振りの小説でした。この作家、上手いですね。今でも「永遠の仔」は最高の推理小説だと思います。推理小説という範疇に閉じ込めてもいいのかという疑問は残るのですが。
この作品も構成が素晴らしく、文体もスッキリしていて、読者を仮想空間にすっと引き込みます。
読後の満足感はかなりものです。しかし、ちょっと引っ掛かります。「包帯クラブ」という活動がそれで自己完結していいのだろうかと。そこから一歩でも先へ進まないといけないのではないかと。
時代がそんなことを求めないのでしょう。功利的な世の中を在るものとして受け入れ、傷を受けたら包帯で和らげる、それで生きて行こうとするのでしょう。
極端に振れた振り子が当分元に戻りそうにない今、このような小説が売れるのでしょう。

★★ 日はまた昇る ビル・エモット
サブタイトル:日本のこれからの15年
この手の本は読んだ後に感動がない。ナルホドと思うことがあればいいのだが、多少はあるが、多くはない。結局そんなものなのだという一種の諦観みたいなものを感じる。
日本にはもっと競争が必要だと言っている。競争原理がすべてを解決するのだろうか。
堀江氏はアウトサイダーかもしれないが、多くの投資ファンドは強いコネを持った元官僚や、一九九〇年代の銀行業界メルトダウンのときに職も忠誠心も失った三十代四十代の人物によって運営されている。たとえばM&Aコンサルティングには三人のパートナーがいるが、二人は元官僚(通産官僚だった村上世彰氏と警察庁にいた滝沢建也氏)で、三人目(丸木強氏)は野村證券出身である。このファンドに早くから投資し、重要な取り持ち役を果たしたのは、当時は富士通総研の理事長でその後日銀総裁になった福井俊彦氏だった。2006年4月発行のこの本にこのような記述がある。
この国は、まずは直面している経済的政治的問題の大きさを否定し、その後は漸進的な調整を続けるというかたちで、もたもたとあがいてきた。一五年たったいま、あいかわらず自民党が安定多数をとって政権の座にあり、社会は依然として安定していて、トヨタは世界一の自動車企業だ。変わったと言いつつ変わらない、それが日本なのではないか?
靖国問題に関してはいい事も言っているし、とんでもない事も言っている。中国に対する見方は説得力がある。A級戦犯は戦没者ではない、というのは正しくその通りだ。

★★ ネオ共産主義 的場昭弘
とても広い意味で共産主義を論じた本。旧約聖書までさかのぼり、ユダヤ教との対比が行われている。共産主義という言葉をこのような意味で使うことの妥当性には疑問を感じるが、書かれてあることは至極もっともなことである。宗教的なにおいを感じるが、人間の主義主張は宗教みたいになるのは避けられないことかもしれない。
共産主義と言われていた国々が消滅し、資本主義国が市場原理オンリーになった今、人間の持っている悪い面だけが見えてきて、嫌な世の中になっている。競争だけでは誰も幸せにはなれない。
社会主義という言葉ができるには、個々人が旧来の村社会から解放されること、すなわち市民社会の成立が前提となります。個人が農村から解放され、都市へと流れこんでいく上で何が必要になるか、それは資本主義的な経済の力です。つまり、社会主義は資本主義が登場しなければあらわれない概念であり言葉なのです。
資本主義に欠落したもの、それは欲望によって蓄積された富を、全体で分かち合うためのメカニズム、言い換えれば、他人と喜びを共有するためのメカニズムです。新しい共産主義は、そうした他者との喜びを実現するものでなければならないでしょう。

★★ マラソン幼稚園 鉄村和夫
教育とは何の関係もない人がひょんなことから幼稚園経営を始める。幼稚園児が、42.195kmを走るということで話題になったが、当然これは仕上げであって、ここに至るまででの取り組みが凄い。それを淡々と書いている。ちょっと物足りないくらいである。読んでみて、マラソンよりも富士登山のほうが素晴らしいと思った。第三者の意見も聞きたいと思う。この本の最後に、取材後記(どうして後記なのか?)というのがあって、全くの無駄、しょうもないものだった。
走るときの目標は三つ。まずは「継続は力なり」ということで、「毎日走る」、「ゆっくり走る」、そして「楽しく走る」ですね。
その子どもの器の大きさや良さは、小学校に上がるまでに決まります。


★★★ ユダ イエスを裏切った男 利倉隆
ユダという人格のかなりの部分までが内部崩壊の不安に苛まれる集団の強迫観念から生まれている。ユダは彼らが受け入れることのできないものを引き受けた「影」なのだ。抑圧しなければならない集団のかげであった。
ユダの謎に迫る本。多方面への言及があり、好奇心を満足させてくれる。著者の教養の深さが感じられる。エピローグの「ユダよ、語れ」は、これまでの実証的な記述とは打って変わって、というか、それを踏まえたユダという人物についての著者の結論が見事な文で語られる。

★★ 日本共産党 筆坂秀世
そんなに意外性はないが、面白い共産党批判である。しかし、書いている人間が共産党の元ナンバー4と言うことは、とても変な感じだ。自分でも最後に書いているが、批判していることのほとんどに自分が関係しているのだ。責任を痛感していると書いているが、その責任の取り方がこの本とでも言うのだろうか。彼には共産党を批判する資格がない。この後自分がどうするかが書いてあればまだ救われるのだが。

★★ オンリーワン 野口聡一
作者はさかんに自分のことを普通の人間だと言っているが、そんなことを言っても白々しく響くだけだ。彼はすごい人だ。最近、「オンリーワン」が言い訳に使われることが多いような気がするが、彼は正真正銘のオンリーワンだ。それを強く出してこの本を書くべきだったのではないか。もっと人を感動させるものが出来ただろう。
無重力状態では筋力が落ちる、などナルホドと思わされることが多々あった。

★★ ダ・ヴィンチ・コード・デコーデッド マーティン・ラン
完璧に理解するには知識と忍耐力が私には欠けていた。ダ・ヴィンチ・コードも以前に読んだので、記憶が霞んでいる。しかし、なかなか面白いことが書いてあった。キリスト教の歴史は当然のことなのだろうがドロドロとしたもののようだ。日本の天皇家と同じで、研究にはタブーが多いのだろう。キリストの生涯についての最新の研究結果を読んでみたい。

★★ あおぞら 星野夏
300ページ程、いっきに読めた。覗き趣味的な興味で惹き付ける。単純な文章で、活字の密度が薄いためもある。中身はというと、ほとんどが救いようのない話で、作者の意図どおり読んだ人に力や希望を与えるかは疑わしい。作者が何故立ち直ったのか、説得力に欠ける。

★★ 2000年間で最大の発明は何か ジョン・ブロックマン
タイトルどおりの本。様々な人たちが各自の考えを述べている。グーテンベルグの印刷術が一番支持を集めているようだった。以下、面白かった文章:
アダムとイブの楽園追放は、大規模農業のはじまりを意味するのではないか
人間のおもな欲望のうち、停電によって満たされるのはどうやら性欲だけらしい。
あなたははっきりと世界の一部なのだから、あなたのごく微小な行動も世界の現実に一役買っている。あなたの呼吸が大気を変化させる。他人との出会いが相手の生活の骨組みを変え、かれらと接する人びとの生活を変えるのだ
時計は、個人的体験であった時間を、知覚に左右されない現実へと転換した。
おそらく、いずれ自我は消滅するであろう。かつて出現したと同じように。・・・それは幻想であり、混乱の源泉であり、いわくありげで要領をえない妄想だとして嘲笑されるのだ。
知識を力に変える知識はいくらでももっている。われわれがいま必要としているのは、発明がもっている力にどう対処すべきかという知恵を、いままで以上につけることだ。
発明家は社会がかかえる問題を解決しようとする人間だ、という広くいきわたっている誤解に関連して、われわれはよく、必要は発明の母だ、という。ところが実際には、発明は必要の母なのだ――それまでわれわれが感じることのなかった必要性を生みだすことによって


★★★ 過去は死なない テッサ・モーリス‐スズキ
久し振りに難しい本を読んだ。初めの方は翻訳が下手というのが明らかな悪文だらけだが、自分の集中力が落ちていることも実感させられた。前に戻って読み返すことを何度も強いられた。が、結構面白くて、300ページの本を読み通すことが出来た。
マルチメディア時代において人びとの過去についての知識は、公式な歴史教育だけでなく、写真、映画、テレビジョン、インターネットなどの歴史表現によってもかたちづくられる
これがこの本のテーマであり、それぞれの分析が、特にインターネットについてが興味深い。
テレビジョンは「視聴者に熟考する時間をほとんど与えない。・・・雰囲気やムードをかもし出し、散漫な印象を与えるのに理想的なまでに適している。メディアだ、・・・複雑な物語の歴史を語るには使いにくく、抽象的な考えを描くにいたってはほとんど無能である。」
インターネットを利用しても、思考や意見のうず巻くこの海を航海するためのなんらかの感覚をもちあわせていなければ、そこに吹く風と波に方向を見失い、無気力に漂うだけにおわる危険もある。言い換えれば、幅広いさまざまな意見に揉まれて、一種の麻痺状態――いかなる明確な意見の形成も拒否してしまう精神状態――におちいるかもしれない。

その他、興味を引かれた所を下に。
鹿島建設、三菱重工をはじめとする、日本の戦後経済の奇跡の中心的アクターとなっていた企業も、その冨の一部は、太平洋戦争中に朝鮮や中国の人びとによる強制労働によって得たものである。この意味で、こうした企業の成功の恩恵を受けた人たちは、間接的に、歴史的暴力から得た富の受益者になる。
吉川英治の『宮本武蔵』。・・・日本の中国侵略と西欧との政治的緊張な高まりを背景に政府が一九三〇年代末に展開していた“精神動員”キャンペーンに即した寓話として仕立てた。(佐々木小次郎が西洋・テクノロジー・技を代表する一方、武蔵は禅の思想を基にした精神の力を代表する。巌流島に向かう武蔵の描写は、海南島への日本軍の侵略とノモンハンでの初の日ソ交戦を報道する朝日新聞の記事と同時にしかも並んで掲載された。)
日本の歴史小説に朝鮮が余り登場しないのは、イギリスの歴史小説にアイルランドが不在であるのとおなじである。

写真と映画は「時間に防腐処理をほどこし、当然の腐敗から救い出す」力をもっている。

★★ 絵本千の風になって 新井満
英語圏では誰でも知っている作者不詳の詩(日本でも以前話題になったようだ)に、それが書かれた状況を創作したお話し。まず、詩の内容から作者を予測する所からはじまる。なかなかうまく作られたちょっぴり感動のストーリーです。

★★★★ 少年とストライカーと約束 上井建治
多少の脚色はあるのだろうが、実話のようです。2002年の日韓共催ワールドカップの時のお話しで、インターネットで読み継がれ、今年になって本になりました。とても感動的なお話しです。デンマークという国が好きになりました。本屋で立ち読みできるぐらいの長さです。ハンカチを持って、是非!

★★★ 99・9%は仮説 竹内薫
おもしろい比喩や例えがたくさん出てくるが、一言でいうと、世の中は相対的なものである、ということを言っているのだと思う。難しい内容を平易に書こうという意図はある程度成功しているが、当然その分深みのない軽いものになっている。新書であれば仕方の無いことか。タイトルは最近流行の付け方にも見えるが、真っ当な付け方のようにも思える。
客観とは、世間のだれもが白に近いと認める仮説にしたがう、ということです。
主幹とは、世間とは関係なしに自分だけが白だと考える仮説にしたがう、ということです。
これは客観よりも主観のほうがいい、もしくは、主観よりも客観のほうがいい、ということではありません。

★★★★ ウェブ進化論 梅田望夫
コンピュータの進化はとどまる所を知らない。パソコンが出始めた頃から付き合っているが形容のしようがない。あのアクセス音の凄い8インチのフロッピーディスクが懐かしい。今はそのコンピュータを使ってのインターネットが恐ろしい進歩を遂げている。そしてこの本を読むと、その進歩が常人(私)の想像を超える範囲・深さで進んでいることがわかる。インターネットの「こちら側」と「あちら側」という表現が書いてあるが、私はやはりこちら側にいるようだ。↓の本の著者はあちら側にいて、「バーチャル経済圏」で稼いでいるのだろう。オープンソース・グーグル・ロングテール・ブログなどについて、もっと考えてみなければならないだろう。

★★ 1億稼ぐ!メールマガジン私の方法 石田健
精神論ではなく具体的なことを書く、とあるが結局は精神論になっている。というか、すべては中身である、ということだろう。色々なテクニックを身に付けてもそれはあくまで手段に過ぎない。
現代社会は物を生産しない仕事が増え過ぎた。このような世界でもパイは限られているから、過当競争なのではないか。この視点が抜けていて、やり方だけが注目されすぎている。
著者のメールマガジン「1日1分!英字新聞」を、配信部数が数千のころから読んでいて(今11万を越えている)、この人の生き方・考え方・今後に興味がある。メルマガを通して追跡しよう。

★★★ 国家の崩壊 佐藤優+聞き手宮崎学
「聞き手」と書いてあるので対談集かと思っていたが違っていた。宮崎学が主宰する研究会で佐藤優が語ったものを纏めたものだった。内容も、「国家の罠」「闇権力の執行人」と読んできた繋がりから勝手に予想していたものとは違っていた。
ソ連崩壊の裏面史と言ったらいいか。結構面白かった。顕教・密教、肯定神学・否定神学と言う対比で、ロシア・ロシア人の根底にあるものに言及している所は説得力がある。ただ、全般に個人の視点から見たもので、第三者の検証が必要だろう。例えに出しているルワンダのことは間違いではないか。(「生の民族対立より人工的民族対立もほうがずっと怖い」。アルメニア・アゼルバイジャン同様、ルワンダも人工的なもので、その他も程度の差こそあれ人工的なものが含まれているのでは。)
宮崎学のまとめも、ソ連崩壊・日本崩壊、ゴルバチョフ・小泉純一郎と繋いで、面白いことは面白いが、はたして妥当なのかどうか、これももっと論証が必要だ。

★★★ 姜尚中の政治学入門 姜尚中
読み応えのある本だった。逆に言うと、老化した脳みそには理解するのに難しい本だった。
7つのキーワード(アメリカ・暴力・主権・憲法・戦後民主主義・歴史認識・東北アジア)を使って、世界を見るという体裁だが、特に憲法、その中の政教分離、がおもしろかった。
本来、近代的な立憲主義に基づくならば、憲法は国家にかかわる何らかの実体的な価値(日本国の伝統や歴史、そのユニークな文化)を含むわけではなく、またそのあるべき趣旨からすれば、憲法の目的は国民の信託に基づいて権力を行使する国家機関を制約することにある。この点で憲法改正論議は、本末転倒しているのである。
朝鮮半島への視線はもちろん、アメリカのとらえ方も実にナルホドと思わせるものである。
ヨーロッパ諸国が植民地に対して行使した暴力を国内に向け、それが先住民の虐殺と奴隷制度を生みだした、というわけです。しかし、内側への帝国主義が飽和状態に達した十九世紀末に、アメリカはついに、国外への膨張を開始します。
もっと、この著者のものを読んでみよう。

★★★ 映画から見えてくるアジア 佐藤忠男
私の好きなイランの映画監督、キアロスタミ、マフマルバフのことが書かれているので、この本を読もうと思った。しかし、この本は期待以上のものだった。著者の、誰もしたことがないような貴重な経験が、嫌味なく語られている。アジアの国々の、一般の本には書かれていないようなこと・独特な物の見方が、多く書かれていてとても勉強になった。
クルド人問題はトルコでも大変なようで、それに対する映画人の取り組みが立派である。その他:
モンゴルには固有の民族的な文字があるのだが、ロシア革命の時期にロシアの指導の下で社会主義義かすると、まず文字はローマ字に変えることを強制され、次いでロシアで使われているキリル文字に変えさせられた。一九九〇年に社会主義が崩壊したあとにはモンゴル文字が復活し、子どもたちは学校でそれを学んでいるが、大人たちはもうわからない。
東南アジアで伝統文化とされているものの多くは、インドから来たものだったり、中国から来たものだったりする。日本もおなじである。日本人は中世のある時期に、それらを巧みに日本化することに成功したと主張し、その日本化の核ともいうべきいくつかの要素をこれこそ日本独自の文化だと主張してきたが、その独自性を過度に主張することが日本の排外的愛国主義のよりどころになった。
伝統は人々の生きる支えになるものである反面、人々を抑圧する力にもなっている。

★★★ 乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない 橋本治
久し振りの橋本ワールドです。彼の文章は独特の論理展開でとてもおもしろい。
従うべき理論が存在しなくなって、どう生きて行けばいいのかが分からなくなった日本人は、“勝ったか、負けたか”の結果で判断するしかなくなった
「朝廷」と「室町幕府と守護大名」と「戦国大名」の三重構造があった室町時代の「朝廷」に対応する現代の要素――それは、「日本の国民」なのです。主権者である国民は、権限を「幕府=政府」に委譲する。委譲しっぱなしで、何の力もない。
新しく登場した勝ち組に対して、“日本経済そのもの”が負け組みになった
「物や金が動く」という行為とは別に、そして、「物や金が動く」という行為と連動して、明らかになにかが回っているのです。それは、「生きることが幸福でありたい」という感情です。これこそが、経済という人間行為の本質を示すものではなかろうかと、私は思うのです。
世界経済は、もう「限界の中」で動いているのです。「必要」を超えた「欲望」だけが、これを動かせるのです
「問題があまりにも単純化されて、その結果、複雑なディテールが隠されてしまう」というのは、大問題です。でもしかし、「複雑なディテールを消去してしまうような単純化」という作業がないと、「問題解決の方法」が見えて来なかったりもします。

世襲というと、どうしても「家督相続」と話しがごっちゃになって、「長男(=嫡子)だけが家の財産を継ぐ」という話しの別側面のようにも思われてしまいますが、世襲には「子の教育」という大きな側面がありました。

★★ 人は見た目が9割 竹内一郎
最近は売らんが為に奇抜なタイトルをつける本が多い。「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」は許せたが、これはいけない。結局はノンバーバルコミュニケーションの本なのだから、そして自分の専門の演劇やマンガのことを多く書いているのだから、もっといいタイトルがあっただろうに。
マンガの背景に使うスクリーントーンは、日本独自に発展した画材である。今のマンガ家は、これなしにマンガを描くことはないだろう。人物の内面を背景で表現するのである。
この手法を映画で使ったものがあって、観客の失笑を買っていた。

★★ 闇権力の執行人 鈴木宗男
「国家の罠」を読んだあとだと、二番煎じという感は免れない。しかし、鈴木宗男は悪い奴だと思っていたが、そうでもないのではと考えてしまった。外務省がひどいのは間違いなさそうで、結局はどっちもどっちなのだろう。
献金してくれるのだから、断る理由もない。もちろん私のほうから頼んだことなど一度もない。あくまで先方の自発的な善意だった。
自発的な善意で献金をする奴なんている訳がない。
検察はマスコミを利用して世論を誘導したのは間違いないだろう。
ホリエモンの事件を見ていても、検察という組織は信頼できない。

★★ 超バカの壁 養老孟司
結局同じことを繰り返している。一昔前には書けなかったことが何故か最近は書けるようになって、ずばずば本音を、それも受け狙いで、書く本が増えている。良いことなのだろうか。
以下はナルホドと思ったこと。
臭覚と味覚は、入力の半分しか大脳新皮質に届かないわけです。残りの半分は、鼻や舌から辺縁系と言われる古い皮質に入ってくるのです。匂いと味について言葉が不足しているのはそのせいです。

★★★ マオ ユン・チアン/ジョン・ハリデイ
上562ページ/下557ページ!
上、読破。この内容が本当ならば、恐ろしいことだ。毛沢東は社会主義者ではなく、ただ単に権力者になりたかった俗物だ。中国は社会主義国ではなく独裁国家だったと言うことだ。今の北朝鮮よりも酷かったのではないか。当時は(今もか?)スパイだらけで、かなりのことをやったようだ。日本絡みのことでは、張作霖暗殺はスターリンの指令によって行われた、とか、37年の上海事変も(日本も蒋介石も望んでいなかった)全面戦争へのスターリンの巧妙な計画だった、ということのようだ。
この本では中国の固有名詞に、その右側に中国読みの振りガナ、左側に(定着したものがある場合)日本語読みの振りがながうってある。定着しているかどうかの判断もかなり恣意的である。盧溝橋は右側に「ろこうきょう」とある。相互主義というと聞いたことがあるが、日本では中国語を日本式に読み、中国では日本語を中国式に読むそうだ。これは止めた方が良い。その為には漢字表記を止めるべきだ。漢字があると我々はどうしても中国式には読めない。朝鮮語も同様。
下、やっと読破。最後に厖大なインタビューリストが掲げてある。他に多くの参考文献があるようだが本の軽量化を図るため、インターネットの方に掲載してある。と言うことは、この本の内容は本当だと言っているのだろう。毛沢東サイドの反論を聞いてみたい。結局思ったことは、スターリン、毛沢東、金日成は同じような人間だったと言うことだ。社会主義が独裁政権になったのは必然ではないと思うのだが。今北朝鮮がやっていることは毛沢東がやったことと同じだ。中国にとってよかったのは、毛沢東が自分中心で子供を可愛がらなかった事だろう。

★★ 団塊の世代「黄金の十年」が始まる 堺屋太一
この本の結論は、敢えて一言でいうと、70歳まで働けということだろう。そうすれば今心配されている問題は解決するということだ。しかし、それは「黄金の十年」とは言えないだろう。
著者は話しが上手い。
戦後日本の二つのコンセプト
 @日米同盟を機軸として自由主義陣営に属し、経済大国・軍事小国を目指す
 A官僚主導・業界協調体制によって規格大量生産の近代工業社会を形成する
以下のように、無理やり、受けがいいように3つにまとめる。
特殊戦後型日本の構造(1):官僚主導・業界協調体制、日本式経営、核家族と職縁社会
特殊戦後型日本の構造(2):没個性辛抱教育(規格化の精神)、東京一極集中(有機型地域構造)、供給者優先の思想
日本式経営の三要素:
 先行投資型財務体質(含み資産経営)、
 閉鎖的雇用慣行(終身雇用・年功賃金)、
 集団的意思決定方式(現場重視の下意上達)

この本を読んでいて一番気になったのが、名付け親の特権なのか、団塊の世代を決め付けている所だ。例えば、団塊世代は、そうした東京一極集中を「当然のこと」と考えるようになった世代です。このように考えている団塊世代は多くないだろう。 この辺り、第二章の終わり頃から第三章にかけての分析はこのような記述が一杯だ。我田引水、決め付けがあまりに酷すぎる。そもそも、団塊の世代という大きな集団を一つの言い方で纏める、これは無理だろう。少なくともここに1人、周りにはもっとたくさん、著者の定義に当て嵌まらないのがいる。145ページに、「団塊の女性は二十三から二十六歳で結婚するのが標準でしたが、団塊ジュニアは何歳が標準ということもありません。この結果、女性の平均結婚年齢が上昇したばかりか、四十歳代未婚者も増えています。とあるが、団塊ジュニアは70年から75年生まれと定義されているので、まだ40歳にもなっていない。また、次のような提言は真面目に言っているのだろうか。 ここは発想を大転換、教育や就職と出産の順をなくすべきです。つまり、高校生、大学生の出産を奨励し、若年出産者には一定年齢(例えば男女24歳)まで奨学資金を貸与するのです。また、各大学には託児所を設け、学生パパ、学生ママの子供を預かるようにします。
色々と面白い分析はあるが、この本のタイトルとはあっていない。

★★ バカにみえる日本語 誤字等日本語研究会
誤字等(ゴジラ)の館、というウェッブサイトの内容を本にしたもの。インターネット上の日本語の間違いを探し、その原因を考えるという、テレビなどでもやりそうなこと。ウィットやユーモアにとんだ分析や解説がなかなか面白い。私も間違えて思い込んでいたことが二つあった。
ギブス:骨折などの時患部を固定するもの、実は「ギプス」、
アボガド:緑色の果実、実は「アボカド」、が正しいようです。

★★ しのびよるネオ階級社会 林信吾
最近、この手の同工異曲の本が多い。この本はイギリスについて話しがほとんどで、そこはなかなか面白かった。但し、他の日本人の英国観を非難しながら、著者が自分の英国観に何の疑いも持っていないのはどうなのか。自分が見た英国という相対化が必要だと思う。
日本についての分析と結論には新しいものはない。

★★★ 江戸を歩く           写真・石山貴美子 田中優子
個々の分析も鋭いが、全体像も説得力のある面白いものだった。久し振りに地図を見ながら、江戸・東京の本を読んだ。やはり魅力的な都市である。まだ行ったことのない、向島、菊坂、面影橋から神楽坂へ行ってみたい。
日本が伝統を重んじる国であるなら、御霊の鎮魂と慰撫を大切にし続けただろう。敵を無視し味方の軍人だけを「英霊」と呼んで特別に祀ったりはしないであろう。そういう施設に、国の代表者が参拝に行ったりもしないだろう。
江戸は周到に秩序を作り上げていった都市である。大手門の位置をずらした城の設計、寛永寺と増上寺の対応、神田明神と山王社の対応・・・さらに外側には、吉原遊郭、品川の遊里があり、吉原で北を、品川で南を守っていたことになる。遊女はこの場合、観音菩薩である。同時に差別されてきた民である。被差別民といえば、浅草には弾左衛門という穢多頭がおり、車善七という非人頭がいた。そして品川には松右衛門というもうひとりの非人頭がいたのである。・・・そして吉原や新町の外側に千住小塚原があるように、品川遊里の外側に鈴が森があったのである。千住小塚原で絶たれた命は隅田川に解放されていくように感じたが、鈴が森で絶たれた命は太平洋に解放されていくのであろう。


★★★★ 国家の罠 佐藤優
面白い本でした。一気に読みました。内容の真偽の程は判りませんが、鈴木宗男が悪い人とは思えなくなりました。外交の舞台裏、政治の駆け引き、検察・裁判の世界、拘置所の様子、など知らない世界を覗くことが出来ました。著者が書いているように、26年後に公開される、このことに関する外交文書を見たいと思います、生きていれば、惚けていなければ。
そもそも外交の世界に純粋な人道支援など存在しない。どの国も人道支援の名の下で自国の国益を推進しているのである。 / 談合というのは日本の文化なんで、絶対になくならないんです。

★★ 古風堂々数学者 藤原正彦
↓の本と一緒に同僚から借用。同じようなことが書いてある。Vに数学者のことが書いてありなかなか面白かった。著者も言っているが、論理的な思考もある既定のことから出発する。私はその出発点に一歩か二歩の飛躍を感じる。だから、何か違うと感じてしまう。
数学者には、当たり前のことを記すのを何よりの恥とみなす性向があるから、内容が常に新鮮なのである。読者は、独断、偏見、そして鋭い考察を交互に愉しむことができる。
人間には「自分のことを棚に上げる」権利がある。この権利は人類発展の原動力でもある。本書ではこの権利を十二分に活用させていただいたことになる。


★★ 国家の品格 藤原正彦
日本人が英語下手なのは、小学校から教えないからでも、中高の英語教師のせいでもありません。主な原因は二つあり、一つは英語と日本語があまりに異なることです。アメリカ人にとって、日本語とアラビア語は最も難しい外国語とされています。日本人にとって英語が難しいわけです。もう一つは、日本に住む日本人は、日常生活で英語を何ら必要としないからです。母国語だけで済むというのは植民地にならなかったことの証で、むしろ名誉なことです。TOEFLのテストで日本がアジアでビリ、というのは先人の努力に感謝すべき、誇るべきことなのです。
社会主義国家が消滅したためか、最近右翼か左翼かわからない人間が増えてきたような感じがする。右とか左とか区別するのが無意味なのかもしれないが。上に引用した部分は当に両方の考えが入っている所だと思う。個人的には右翼的発想に胡散臭さを感じてしまうので、この本を読んでいてすごく共感できる部分があるけれども最終的に何か違うという違和感を覚える。

一時中断 天皇と東大 立花隆
上:782ページ、下:706ページ、オマケに活字が小さい。
大学学長の給料は東大・京大が高いというのは知っていたが、その下も見事な序列が出来ている。残りの旧帝大が次のランクなのだが、そこに筑波大だけが割り込んでいる。その次のランクが中四国地方では広大と岡大。その次が中四国では鳥取・山口・徳島・愛媛。その下にもう1ランクで、全部で5つ。
日露戦争の頃の日本は、それほど偏った国ではなかったようだ。ここに書かれている東大教授は異常であるが。ただ、日本には大学の自治というものは初めからなかった、東大は官吏養成所だった(今もその傾向充分あり)ということは紛れもない事実である。
2週間弱で上巻339ページ。返却期限なので、一時中断。

★★ 酒は風                    (写真)英伸三 (文)首藤和弘・英愛子
サブタイトル:亀の翁をつくる人々。写真集ではありませんが、かなりの部分が写真です。
60%を削り落とした米はとてもきれいです。
日本酒は、土地の米と水と人情と自然が醸す風。
酒を造るために、その原料である米と水を自らの手でつくる。自ら稲を植えて米をつくり、総出で裏の杉山の下草を刈り水を育て、その米と水で酒を醸す。

水もつくるのです!亀の翁、飲んでみなければなりません。

★★ 日本人の平均値 鳥羽賢
「まえがき」に次のように書いてある。
日本人はとかく「みんなと同じ」であることを好む傾向にある。島国で単一民族国家であるために、周囲と違う行動をすると社会から受け入れられなくなってしまうのではないか、という恐れもあるからだろう。いい意味でも悪い意味でも周囲と違いすぎないこととは、つまり平均的な位置にとどまっていることを意味する。日本人の多くは平均的であること、他人と同じであることに安心感を持って暮らしている、平均的な人生を送るためには、まず平均がどこにあるのか知らなくてはいけない。
まえがきにあるような目的に合致する統計は多くはない。どのような意味があるのか分からないものもあるし、分母・分子に疑問があったり、定義がハッキリしないもの(旅行に行く人の統計があったが旅行が何を指しているか説明なし)などがあってちょっと残念だった。以下は面白かったものの抜粋。
最終学歴が大学卒の割合:2000年で14.8%
犯罪の検挙率が下がり続けているのだが、交通違反の検挙率は下がっていない。交通違反は検挙しようと思えばいくらでもできるからであろう。
(交通違反の検挙率、分母は?運転している人全員では?)
かつては犯罪の数も今ほど多くなく、検挙率も80%以上あったのだが、バブル時代前後に犯罪検挙率は急激に落ちて50%程度になってしまった。2003年の犯罪検挙率:23.2%

★★ TETSUYA シドニーテイスト 和久田哲也
オーストラリアで成功した料理人、レストラン・TETSUYA’Sのオーナーシェフ、の写真集。左ページ、料理について、材料・レシピ・作り方。右ページ、その写真。この本の構成はほとんどがこのパターン。美味しそうなものが並んでいる。しかし、如何せん食べ物は実際口に入れてみないと何とも言えない。所々に料理人の歩んできた道や哲学が書いてある。この部分がもっとたくさんあれば良かったのだが。

★★ 下流社会 三浦展
まるで論文を読んでいるようだった。図表やグラフがやたらと出てきて、このような本がベストセラーになっていることが信じられなかった。そして、論文のような体裁をとりながら、「私の個人的な記憶だが」「当然だが」「必ずしも実証データに基づくものではないが」「これもサンプル数が少ないので参考値だが」といった表現が頻出する。挙句の果てに、あとがきには、次のような文章まである。「そもそも本書で紹介した私のアンケート調査は、サンプル数が少なく、統計学的有意性に乏しいことは認めざるを得ない。」
しかし、書いてある内容は結構面白い。本文中でも言及されているが、「希望格差社会」と同じ主張がなされている。日本は今悪い方へと向かっている、という分析は正しいのだろう。最後に幾つか提言がなされているが、とても変なものだ。
どうでもいいことだが、「自宅での映画鑑賞」なんて出来ない。
「下流」には何が足りないのか。それは意欲である。
たしかに、差別が撤廃されて男女平等が進めば進むほど男性との差別は無くなる。しかしそのかわり、女性であることの共同性は崩れ、ひとりひとりの女性が「個人」として、学歴、性格、容姿などのすべての要素によって評価され、選別され、差別される時代になったのだ。しかも、その学歴、性格、容姿などが、純粋に個人の能力と努力だけの産物というわけではない。それらは親の階層によっても大きく規定されてしまう可能性が高い。男女の差別、男女間の階層性ではなく、女性同士の差別、そして個々の女性の背景にある親の階層性による差別が、今、拡大しているのだ。

就職できたから勝ち組なのではなく、そもそも勝ち組だから就職できたのかも知れないのだ。
男女の給与格差はあった方が結婚しやすいし、結果、子供を産んで、生活満足感も高まるという傾向があることは否めない。なんでも男女平等にすることは政治的には正しいが、少なくとも現時点の日本人の率直な結婚感情にとっては必ずしも正しくないのかも知れない。
女性の社会進出によって、女性の生き方は多様化し、結果として夫婦のみ世帯の増加など、家族形態も多様化したが、必ずしも幸福の形が多様化したというところまではいっていない。
女性が類として差別されていたが故に平等だった時代には、もちろん男性も類として優遇されていたが故に、今よりは平等だった。また、男性と女性は、個人対個人ではなく、類対類として、要するにオスとメスとして相対することができたので、恋愛や結婚が今よりずっと簡単だった。


★★ 人を10分ひきつける話す力 斎藤孝
この手の本は普段あまり読まない。結局当たり前のことしか書いてないからだ。この本は、著者が気に入っていたので挑戦してみた。なんとか最後まで読めたが、読んでいる時間が楽しかったわけではなし、優れた理論が展開されていたわけでも無し、可もなし不可がちょっと、という所か。結局言いたいことは、訓練が必要で、大切なのは話す内容ということのようだ。やはり当たり前のことしか書かれていなかった。英会話でも同じで、会話をする内容を持っていなければ英語の訓練ばかりしても物にならない。

★★ さおだけ屋はなぜ潰れないのか 山田真哉
流石、ベストセラーだけあって面白い。タイトルにもなっている竿竹屋の話はちょっと肩透かし気味だったが、どのエピソードもそれなりに興味を引くものだった。特に、機会損失、キャッシュフロー、数字のセンスは何となく分かってはいるのだが、明確な言葉になって、スッキリしたという感じだった。内容とは関係ないが、新書にしては活字が大きい。
節約は「パーセンテージ」ではなく「絶対額」で考える

★★ プリズン・ガール 有村朋美
アメリカ女子刑務所での22か月、というサブタイトル。
著者が刑務所に入るに至る経緯は本当かどうかは、心の動きを含めて、疑問に思う点がなくはない。しかし、刑務所の中の話は覗き趣味的ではあるがとても面白い。著者も書いている通り、これもアメリカなのだ。資本主義的競争社会が行き着くところはこのような社会ではないか。日本もこのままだと間違いなく同じようになるだろう。


 2005年 65冊〈+マンガ23冊〉 (作品数ではなく実際の本の冊数です)

★★ 国語教科書の思想 石原千秋
この著者の本はすでに数冊読んだが、どれも異曲同音ではあるけれど結構面白い。大学入試国語からだんだん下がってきて今回は小中の教科書である。特に小学校の教科書の分析は面白かった。著者の魅力は左のような、でも右のような、訳の分からない所ではないか。
毛利衛のスペースシャトルによる宇宙飛行は(もちろん、彼以後の人々を含めて)、車を持てない人が隣の家の車に乗せてもらったようなものだから、「日本国民」としては恥ではあってもとうてい誇りとは思えない

★★★ 夏子の酒 尾瀬あきら
全12巻、昔の漫画です。酒造り・米作りを縦軸に、それにまつわる人情話を絡めた、ちょっと出来すぎたお話です。十分楽しめる、泣かせる作品です。主人公の夏子が持っているような鋭い味覚臭覚を備えている人間が実際にいるのでしょうか。もしいるとしたら、その人は不幸ではないでしょうか。
ともあれ、久須美酒造のお酒、飲んでみたいですね。


★★ 希望格差社会 山田昌弘
「パラサイトシングル」と言い出した人の作品。相変わらず分析は冴えている。
今の社会は「リスク」だらけだと言う。リスクと「不確実性」とは異なるもので、コロンブスの一回目の航海は不確実性で、二回目の航海がリスクだそうだ。うまい喩えだ。
だから、リスクとは「勇気を持って試みる」「何かを選択する時に、生起する可能性がある危険」と言うことになる。自由は常にリスクを伴う。「好きな人と結婚できる自由があったとしても、好きな人と結婚できる保証はない。」
処方箋に対しては物足りなさを感じる。本のタイトルからしてそうなのだが、人が持つ希望に格差が生じている、という主張がちょっとずれているのではないか。格差というと優劣が前提としてあるが、希望に違いがあっても優劣はない。ここに著者が持っている価値観が窺われる。希望とは、「苦労や大変さに耐える力」という定義も如何なものか。
若者が苦労に対する免疫を持っていないというのは確かにそうだと思うが、その原因をあまりに社会に求めすぎてはいないだろうか。フリーターをやっている人間は社会状況がそうさせている面はあるのだろうが、かなりの部分は本人の責任だろう。

マンガでわかる 統計学 高橋信
結局マンガとは言っても、難しいものは理解しがたい。正規分布まではいいがカイ二乗分布は解からん。相関比まではなんとかだがクラメールの相関係数は解からん。検定も理解できん。まあ、なにも困ることはないからいいかな。

★★★★ 語るに足る、ささやかな人生 駒沢敏器
タイトルがなにか二律背反で惹き付けるものを持っている。アメリカのスモールタウン礼賛の本かと思ったら、逆の面もちゃんと指摘してある読み応えのある内容だった。
特に興味を引かれたのは、ナマズの話だった。南部の綿花畑が今ナマズの養殖沼に変わっているそうだ。アメリカ人がナマズを食べるということが驚きだったが、南部では当たり前のことのようだ。代表的な料理は、ブラッケンド・キャットフィッシュというもので、衣をつけて揚げ香辛料などで味付けをしたものだ。低カロリーでダイエット食品として抜群だそうだ。
もう一つ、ルート66。なんと懐かしい名前でしょう。今はほとんど残ってないようですが、その名残を求めて旅をする人がたくさんいるようです。
インターステイトを走っていると、自分は自主的に生きる存在ではなく、大きな流れのなかの単なる貨幣なのではないかと思えてくる。その道は電子マネーを運ぶラインのようで、途中で気が変わってもUターンは許されないし、ひとたびその道に乗ったなら、少なくとも次の出口まで他の車と同じ速度で突っ走らなければならない。
しかしルート66を走ると、別にそこにこれといったものがなくても、考えることを与えてくれる。風景とひとつになれるし、小さな町を過ぎるときには、そこに住む人のことを想う。スーパーハイウェイという現代性とは違う文脈にある世界を、実際に感じ取ることが出来る。そういう意味では、ルート66をわざわざ走ることは、都市を避けてスモールタウンをめぐる旅にも似ている。
ルート66も数々のスモールタウンも、非力ながらその存在が重要なのは、そのような人間的な想像を与えてくれ、その想像がすべての人の心の中で物語として機能するということだ、それは効率性に対する物語性の対抗と言ってもいい。


★★ 夏子の酒読本 尾瀬あきら
漫画「夏子の酒」とお酒に関する本。この本の中に引用されている山頭火の言葉。
酔ふことは飲むことの結果であるが、いひかえれば、飲むことは酔ふことの原因であるが、酔ふことが飲むことの目的であってはならない。

★★ ドラゴン桜 三田紀房
これは漫画です。漫画だからリアリティが・・・と言ってはいけないのかもしれないが、ちょっと無理がある。その設定に目をつぶれば、結構楽しめる。書いてあることもまっとうないいことが多い。だから東大に受かるかというと当然ながら別問題である。10巻まで読了。

★★ セックスエリート 酒井あゆみ
サブタイトルが「年収1億円、伝説の風俗嬢をさがして」。風俗で働いていた著者が、風俗嬢をインタビューしたもの。女の究極を売る場所という表現が凄い。内容は想像の範囲内だが、覗き見的で結構面白かった。現在では人妻や熟女というジャンルが確立されたそうで、この本にも45歳の元ナンバーワンが登場している。この女性の話はなかなかだった。雄琴には一回十万円の超高級ソープランドがあり、会員制・完全予約制で、客も女性もハイレベル(?)だそうです。

★★ 東京奇譚集 村上春樹
「偶然の旅人」「ハナレイ・ベイ」「どこであれそれが見つかりそうな場所で」「日々移動する腎臓のかたちをした石」「品川猿」の五つの作品が収められている。どの作品もなかなかに面白い。彼はこれまで大作を書いた後、この様な軽い作品或いは随想を書いてきたように思うが、最近は重い作品がないような。「ねじまき鳥クロニクル」のような作品、というか、続編が読みたい。

★★ 世界一旨い日本酒 古川修
著者の言う日本酒復活のシナリオは有効か?
色々な種類のアルコール飲料があってそれぞれに愛飲家がいるように、日本酒にも様々な日本酒があってそれなりに需要があるのではないだろうか。
著者は燗こそが日本酒の一番の飲み方だという。私は燗酒がダメだ。「奥播磨」を幾つか異なった燗で飲んだが、室温の方が旨いと思った。
とはいえ、まだまだ飲んだことのない酒があるのだ。たくさん試してみよう。

★★ 告白 チャールズ・R・ジェンキンス
苛酷な人生を送った人だ、と改めて思いました。でも、その責任は自分にあるのでしょう。当時、北朝鮮についての情報が少なかったとはいえ、この本に書いてあることが本当ならば、彼の行動は無謀というか無知というか、常識的には考えられないことです。北朝鮮についての記述は、かなり内実が分かってきている今となってはそれほど衝撃的なものではありません。彼自身のことも含め、所々正直に書いていないと思われるところがあります。キム・ヒョンヒの「いま女として」の方が、遥かに面白い本でした。ジェンキンスさんは今後どのような人生を送るのでしょうか。今なお北朝鮮に残る拉致被害者の救済運動とどう関わるのでしょうか。そのあたりがよく見えませんでした。

★★ やりなおし教養講座 村上陽一郎
聞書きで読みやすい。話題が次々に広がっていくが実にスムースに繋がっていく。刺激を受ける内容ではあるが、少々鼻につくところもある。きっと完璧に拒否する人も多いと思う。若者のとらえ方が典型的な年寄りのものになっていて、間違い・誤解がある。携帯電話、服装など。最後に、「教養のためのしてはならない百箇か条」というのがあり、自家撞着に陥っている所はご愛嬌か。
「美しいもの」とそうでないものとをはっきり区別はするが、その判断を他人に強制しない。(していたのでは?)
自分とは違うものが、違うことが、あることを、忘れない。
(忘れないと認めないは同義語では?
本を書くということは、ある程度強制したり自分とは違うことを認めないことでしょう。そうじゃないと読んでもおもしろくありません。少々偽善的になってもいいと思います。
挙げれば挙げるほど、自分が「教養」と考えるものに逆らっていることになる

★★ ヒトは環境を壊す動物である 小田亮
生物学、サルを研究している人が書いた本。アプローチが違っていておもしろかった。
ヒトは身の丈サイズでしか物事をとらえることが出来ないそうです。集団の規模でいうと150人ぐらい。まずこのことを認識しないと、環境問題を含めて人間が抱えている問題は解決しない、と筆者は言っているようです。認識しても解決しないかもしれません。
ヒトの二足歩行は長距離の移動に適している、ちょっと!でした。確かに四足の方が早いですね。

★★ 日経新聞読みこなし隊 渋井真帆
経済とは人間の欲望を貨幣という単位で数値化したものです。
日経新聞の記事を「点」から「線」に、そして「面」に発展させてみましょう。

書いてあることは至極もっともなことで、かなりの人々が実践しているのではないかと思われます。で、読んでいて面白くないかと言うと、さにあらず、結構楽しめました。経済のお勉強にもなりました。西尾幹二が怪しからんと言っていたことで、日本がアメリカの国債をかなり持っているという事実が、サラッと書いてありました。中国をアメリカの国債をかなり買っているそうです。つまり、日本・アメリカ・中国は経済的に不可欠な関係が出来上がっているようです。

★★ 民族への責任 西尾幹二
食わず嫌いはいけないと思い、挑戦しました。所々共感できる所もあるのですが、捉え方にズレというか平行線を感じました。初めて知った事:過去に女性天皇はいたがその子は天皇になっていない。
歴史は過去の見方なのであるから、個人によっても、民族によっても、それぞれ異って当たり前である。
定説がなく論争が続いている今の日本の状況は、日本が全体主義国ではなく言論の自由を大切にしている国だということを証明している。


★★ バカの人 和田秀樹
所々おもしろいと思う所はあるが、全体的に見ると受け狙いの本という感じ。以下印象に残った所。
昔の流行パターンは富士山型だったのが、最近は茶筒型の傾向にあるということです。/知的謙虚さがない「井戸の中のバカ」と「うのみバカ」がセットになると、ひどいことになります。「バカな権威者とアホな国民で成り立つ日本」――。/マスコミも「うのみバカ」

メタ認知能力=メタ認知的知識+メタ認知的活動:
自分をよく知り、自己を改造する、これが現代の頭のいい条件、だそうだ。
現代は変化の激しい時代、と繰り返し、それを良いことのように捕らえているが(少なくとも悪いこととは看做していない)、これこそを考えなければならないのではないか。

★★ 京の和菓子 辻ミチ子
『はじめに』に、この本の前に読んだ「桃太郎と邪馬台国」にもあった『田道間守が常世国へ渡り、非時番菓(ときじくのかくのこのみ)を天皇に持ち帰った』ということが書いてあり、ビックリ。
正直に言って、この本しか読むものがない状況だったので、何とか読破できたが、相当にマニアックなものである。興味はあるがここまで深くとは思わない。知らない人に文字でお菓子を説明するのは至難の業だ。文字を減らし、写真を入れたら一般人も楽に読めるだろう。
お菓子司「源水」の「ときわ木」という銘菓、以前よく食べたもので、懐かしかった。
言葉の勉強にもなりました。例えば、点心=空心(すきばら)に小食を点す。

★★ 桃太郎と邪馬台国 前田晴人
「一寸法師」「桃太郎」「浦島太郎」というおとぎ話で古代史を論じようとする本。
応神天皇=仁徳天皇=一寸法師、鬼=穢れ=天皇に刃向うもの。吉備国は最後まで大和朝廷に従わなかった、犬猿雉は十二支で西方。丹後半島に浦島太郎の話と似ている嶋子伝承、官名に「シマコ」というものあり、中国へ旅する。興味を引く話ではあるが、本当かなと疑念が起こる書き方である。

★★ NPOという生き方 島田恒
最近NPOがよく話題になる。といっても、よくないニュースばかりが目に付くので、イメージが悪い。しかし、よく分からずに決め付けてはいけないと思っていたところにこの本に出くわした。読んでみて、そのようなイメージはかなり払拭できた。
それよりも、この本は現代社会・日本社会の分析に優れている。新たな視点があるわけではないが、上手くまとめてある。それを基にNPOの必要性を説く。企業と政府の隙間を埋めるもの、人間にとって根源的な必要に基づくもの、究極的に人間の自己実現や愛を目指している、と主張する。
確かにそのようなNPOが存在すること、存在すべきであることは分かった。しかし、悪人に付け込まれる隙だらけという感じがした。もう一つ、市場原理で動く社会では、NPOの存在意義は短期のものではないだろうか。

★★★★ 空海の歩いた道 頼冨本宏(文)永坂嘉光(写真)
空海の軌跡を、彼自身が書いたものと写真で辿る。写真は当然現代のものであるが、空海の文章と見事にマッチしている。脳天を突き刺す写真ばかりです。
波濤万万にして、雲山幾千ぞ。
来ること我が力に非ず、帰ること我が志に非ず。

具体性を持ちながら且普遍性を持つ言葉、心を打つ言葉が一杯です。

★★★ カオス 梁石日
この作家の作品は不思議な魅力を持っている。有りそうな無さそうな裏の世界を垣間見させてくれる。400ページ近いものを一気に読ませる。今回も、ニューハーフ、宗教、麻薬、舞台となっている歌舞伎町、等々盛り沢山だ。最後はちょっと収拾がつかなくなった感じだが、それなりに一つの終わり方ではあるだろう。
「血と骨」も面白い作品だった。普段は原作を読んだものが映画になっても見に行かないのだが、前評判も良かったのでつい行ってしまった。失敗、駄作でした。(何故か評論家にはうけがよかったようです!)そもそも映画化には向かないものだろう。
これも映画化には向かない。きっと映画になるだろうが、行かないぞ!

★★ 今週、妻が浮気をします GoAhead & Co.
2パラから出来た「電車男」、と同じような経緯で本になったようだ。読む気はなかったが、まだネットに残っているということで、覗いてみた。 ( http://okweb.jp/kotaeru.php3?q=763621&rev=1 )
はまってしまった。本当の話だったら失礼だが、結構楽しめました。本には、「まえがき」とか「あとがき」とかが付いているのかな。要確認。
本を入手。「まえがき」はなく、簡単なOKWebおよびこの掲示板の紹介。最期にGoAheadと管理人からのメッセージ。なぜ本にしたかの説得力のある説明なし。

★★ 高校生のための経済学入門 小塩隆士
今までに読んだこの手の本では一番だった。つまり、タイトルにも拘らず内容はレベルが高かった。もう少し現状分析を含んだハイレベルなものがあればいいのだが。
日本の所得再配分は年収500万以上がマイナスになっている(1999年)、というのには驚いた。
国債は、政府にとっては負債だが、国民にとっては資産である。ナルホド!程度の問題ではあるが。
現在世代と将来世代、若者と年寄り、課題はどこも同じなのか。

★★ 101歳、人生っていいもんだ。 ジョージ・ドーソン
98歳で読み書きを習い始めた、アメリカ黒人の自叙伝。実際は、彼を信奉するリチャード・グローブマンという小学校教師が、インタビューを元に書いたようだ。300頁を越える長さだが、ほとんど一気に読むことが出来た。それは彼の生き方が驚異的なものであるからだ。読み書きが出来なかった98年間も我々の先入観を打ち砕くものだし、その後の学校に行き始めてからの人生も素晴らしい。生まれながらに授かった強靭な肉体を大切にし、さらに鍛え、心は平穏を保つ、学ぶべし。

★★ ふしぎな図書館 村上春樹
羊男登場の、懐かしい村上ワールド。それもそのはず、最後のページに「図書館奇譚」(1982年)の改稿とある。絵本仕立てで再登場、1500円。文庫サイズの92ページ、ハードカバー・上質紙とはいえ高過ぎでは。調べてみると、「カンガルー日和」の中の一編でした。読んでないのかな、むむむ・・・

★★★ 靖国問題 高橋哲哉
靖国信仰から逃れるためには、必ずしも複雑な論理を必要としないことになる。一言でいえば、悲しいのに嬉しいといわないこと。それだけで十分なのだ。まずは家族の戦死を、最も自然な感情にしたがって悲しむだけ悲しむこと。
「A級戦犯」以外を問題にしないということは、靖国神社そのものを問題にしているのでもない、ということである。いやそれどころか、中国政府は(韓国政府も)「A級戦犯」合祀自体を問題にしているのではない、とさえ言えるだろう。繰り返して確認すれば、中国政府が批判を開始したのは、「戦後政治の総決算」を唱えて新国家主義を打ち出した中曾根首相が公式参拝したときであって、「A級戦犯」合祀が公けになったときではなかった。中国政府の批判は、日本の一宗教法人・靖国神社が「A級戦犯」を合祀したことこと自体にではなく、そうした戦犯が合祀されていることが明らかになっている靖国神社に、日本の首相が公然と参拝するという現在の政治行動に向けられている、と考えるべきであろう。
靖国神社は戦前・戦中のその「本来」の姿において、すでに「無宗教の国立戦没者追悼施設」であった。正確にいえば、「無宗教の国立戦没者追悼施設」を装う「宗教的な国立戦没者顕彰施設」であったのだ。
終わりの方ちょっと論がしつこくて雑な感じがするけれど、なかなか説得力のある本だった。小泉首相の反論を聞きたいが、論理的には不可能だと思います。得意の、目がちょっと宙に浮いた感じの、ハッタリ調しかないでしょう。

★★ 英語の味わい方 斎藤兆史
「高校修了程度の英語力を持った読者に英語の味読法を伝授するための教科書」とまえがきに書いてある。教科書と銘打ってあるにしては全体的な統一が取れていないように思われる。もっとも、200ページ程度の本では無理なことだろう。ただ、個々の内容は結構面白いものが多い。

★★ 大学のエスノグラフィティ 船曳建夫
これもドラゴン桜で言及されていた本。作者は東大教授で、昔売れた「知の技法」という本の編者。
教員はよく世間知らずだと言われるが、そう言われても仕方の無い様なことを臆面もなく書いてあって面白い。「よい学生が伸びるのをじゃましない、悪い学生がある日変身するのを待ってやる、これだけでも大変な仕事です。」大変な仕事かどうかは意見の分かれるところだろうが、教育とは結局こんなものかも知れません。エスノグラフィティは ethnography からの造語だそうです。

★★★ 野ブタ。をプロデュース 白岩玄
これは凄い作品です。(否定的な意見を持つ人も間違いなくいるとは思います。)
文章がうまい。流れがいい。発想がいきいきしている。天才です。と思います。
スラスラとあのような文を書いたにしても、実は結構苦労をして何度も何度も書きかえたにしても、どちらにしても素晴らしい才能です。次の作品を期待したいと思います。
何故か平野啓一郎を思い出しました。彼は如何しているのでしょう。調べてみるかな。

★★ 論理思考の鍛え方 小林公夫
ドラゴン桜で言及されていた本。小学校入試の問題も医学部の入試問題も同じような論理的な思考を要求しているという主張はなるほどと思わせるが、よくよく考えてみれば、当然といえば全く当然のことである。人間の思考力なんて高が知れているし、コンピュータの「0」「1」が高度に発達したものに過ぎない、のではないかな。とはいっても、ためになる本です。

★★ 映画で学ぶ国際関係 三上貴教 編
興味深い本だった。言うまでもなく、歴史や国際関係を学ぶために映画を見るのではないが、理解していればより映画を楽しめることは間違いない。良い映画を見逃していることにも気付かされた。

★★★ 半島を出よ 村上龍
面白かった。実に面白かった。とても楽しめる作品です。村上龍ってこんなに上手かったのか。構成がよく出来ている。はじめの登場人物一覧を見てビックリしたが、見る必要はありません。グングン読んで行けます。あら捜しをしようと思えばいくらでも出来るでしょう。でも、そんなことは止めましょう。久し振りに小説を読む楽しみを味わえました。
朝鮮人の将校が、「退廃」について悩んでいる所、考えさせられました。「退廃」とは?

★★ カマキリは大雪を知っていた 酒井與喜夫
著者は、40年カマキリを観察し、卵を産み付ける位置で積雪予測をしてきた。統計処理をし、予測の精度を上げ、博士号を取得。その後、カマキリをそうさせているのが木の微弱な震動、地中の震動だと推測し、天気予測にまで挑戦しているそうです。地震も予測できそうなこの研究、この後どうなるか興味津々。

★★ 蕎麦屋酒 古川修
蕎麦は本来庶民の食べ物だったはずなのに・・・
蕎麦屋で酒を飲むのも庶民の楽しみだったはずなのに・・・
「高橋さんの蕎麦がフェラーリ、ポルシェだとすれば、フォルクスワーゲンのような蕎麦を気楽に味わえる店にしたい」と言う蕎麦屋店主の言葉はどのように受け止めればいいのか。

中高一貫校に行かなくても東大に合格する本 伊藤悟
タイトルに「東大卒・開成主席OBが明かした」という形容がついている。
前半は開成の話。面白く書いてあるが、本当かな?信じ難いことが多すぎる。
後半はタイトルのこと。「素朴な疑問路線」、つまり、なぜ、どうして、を考えて勉強せよと言っている。結構みんなやっているが、だれにでも出来ることではないのでは?学校の教師を、特に中学校の教師を馬鹿にしすぎ。なぜか最後の方は英語の話ばかり。

★★ ニッポンの食卓の新・常識 齋藤隆
タイトルの前に【食のデータベース「食MAP」が明かす】という一行が付いている。
食MAPとは、関東の360世帯の家庭に6年間、1年365日の全ての食卓の内容を報告してもらったデータです。興味深いことが書いてありますが、視点がマーケッティングと言うことで、食べ物に対する愛情が感じられません。著者の傲慢さもちょっと鼻につきます。食習慣は地域差が大きいと思うが、この点についても考慮がなされていません。

★★ ことばの由来 堀井令以知
興味深いことがたくさん書いてあります。しかし、老化した頭にどれだけ残っているか。
以下に幾つか引用しておきます。
「休む」は「屋住む」からで、家にいて静かにしていることであった。
鴨南蛮の南蛮は南蛮渡来の南蛮で、かつてはネギも南蛮だったようだ。
無鉄砲は無点法で、点は漢文を読むときの訓点である。

★★ ねじとねじ回し ヴィトルト・リプチンスキ
この千年の間の最高の道具。確かにそうだろう。螺旋という概念は昔からあったようだ。
この本を読んで感心したのだが、今ある大抵の物が、紀元前からあったようだ。例えば、鋸、鉋、水準器。人はあまり進歩していないということか。
釦・釦穴は13世紀に出来たそうだ。因みに、中国にはねじがなかったようだ。

★★★ 在日 姜尚中
正直に心情を吐露している感じで共感できた。当然飾っていると思われる所もあるが、そんなに嫌味ではない。指紋押捺拒否、その後の押捺、分かるような気がした。どちらも勇気がいることだろう。何故マスコミで発言するのかについての説明はちょっと説得力に欠ける。
「知識人はつねにアマチュアである」(サイード)はいい言葉だ。
結論の「東北アジアとともに生きる」がスーと理解できない。

★★★ 奇跡を起こした村のはなし 吉岡忍
凄い村があると感嘆した。素晴らしい村長と彼に育てられた有能な人たち。最近、地位が人を作る、と感じることが多いので、興味深く読むことが出来た。そして、行ってみたいと思った。
ただし、これを推進した金が様々な補助金ということにちょっと引っかかった。こんなに色々な補助金があるとは驚きだ。
この黒川村は平成の大合併でもうすぐなくなるとのこと。どうなるのか?

★★ 脳と魂 養老孟司・玄侑宗久
啓発されることは多かったが、対談という形の醍醐味は感じられなかった。医者と坊主が対峙したら、もっと緊張感がなければおかしいと思う。
日本人にしかとれない姿勢、正座と蹲踞(そんきょ)。それぞれの姿勢が、日本人特有の体を作り、精神を鍛える。
植物の記憶、筋肉の記憶、これは興味深かった。体が覚える、とはどのようなことか?

★★★ 戦争の世紀を超えて 森達也・姜尚中
なかなかに面白い対談だった。ただ、あまりに二人の言うことが合いすぎて、どちらが喋っているのか分からなくなることが結構あった。二人の意見が対立し、そこから新たなものが生まれるというダイナミズムが、残念ながら感じられなかった
組織共同体に対抗できるのは、当然ながら個です。でも結局のところ、個は組織の中では徹底的に収奪される。一人称であるはずの主語が、「うち」とか「我々」とかの複数名詞になり、そうなると当然ながら述語は暴走する。
この様な趣旨の文章が何回か出てくる。なるほど、とは思うが、では何がその暴走を止めるのか。また最後の方で、戦争の世紀は超えることが出来ると姜が書いているが、その根拠が弱いように思われる。
が、イエドヴァブネのことを筆頭に考えさせられる興味深い内容だった。

★★★ 食のワンダーランド 小泉武夫
よく言われるように、美食は奇食に至る、と思った。幾つかレシピが書いてあり、「イワシの団子汁」はいつか作ろうと思った。最後のうんちく事典はためになった。

★★★ パラサイト社会のゆくえ 山田昌弘
今のパラサイトシングルは優雅ではなく、昔の優雅だったパラサイトシングルは今『不良債権化』している。パラサイトシングルの変質、つまり、社会の変質、確かにその通りだが、それに対する処方箋が、『「努力すれば必ず報われますよ」という道を示す』だけでは物足りない。まあ、簡単な解決策があるわけではないので、優れた分析を読めばいいのだろう。

★★★ ダ・ヴィンチ・コード ダン・ブラウン
久し振りにこの手の本を読んだ。「永遠の仔」以来かな。300ページを超える上下二巻。下巻の半分位まではよかったが、最後の方にちょっと力がなかったのが惜しい。

★★★ 雨と夢のあとに 柳美里
柳美里は好きな作家だ。というか、好きな劇作家だ。人は結局自分のことしか書けないというのは正しいと思う。だから日本的私小説も好きだ。しかし、ここ数年の彼女の作品は芸術作品に昇華していない。もう読むのを止めようかと思っていた。が、この作品を読んでしまった。ちょっと意外だった。こんな作品も書けるのだ。少し感動した。

★★★ 昭和歌謡大全集 村上龍
村上龍は好きな作家ではない。「限りなく透明に近いブルー」からである。とは言え作品は結構読んでいる。この本は「半島を出よ」絡みの書評で面白そうだと思った。実際に面白かった。次第に寓話っぽくなるのは仕方の無いことか。「希望の国のエクソダス」につながるところが感じられた。
表現が・比喩が素晴らしい。『下を向いてカ行変格活用を呟くような感じで笑い出し』ハ行ではないところがいいですね。

★★★ アマゾンの秘密 松本晃一
ずいぶん昔に読んだ、コカコーラやマクドナルドの日本上陸の話しを思い出した。時代が変わり、業種が違っているが、相通じるものを感じた。簡単に言ってしまうと、熱気、だろうか。
私はネットの可能性をすごく信じているのだけれど、物を買おうとはいまだに思っていない。物は自分の五感で直接感じないと買おうという気にならない。

★★★ 日本語のうまい人は英語もうまい 角行之
『だから、「日本語のうまい人は英語もうまい」と・・・・・』がやたら繰り返される。芸術作品ならばリフレインがよい効果をもたらすことはあるが、この様な本では、嫌味である。さらに、自慢話が多すぎる。ただし、内容はなかなかのものだ。以下は気に入った所。
三大要件は、勘と度胸と、ちょっとした教養だ。これらが欠けていると、言葉が空振りに終わったり、誤解の原因になる。/重要なことは、「しゃべる内容に絶対の自信を持つこと」である。/相手は、語り手の発信する内容を期待しているのである。/日本人は漢字という表意文字にどっぷり浸かった民族であるから、聞くより見て理解するのが得意だ。/専門領域が不明確な人は、少しばかり英語が話せても、まず役に立たない。
ユダヤの諺「しゃべる二倍を聞くために耳が二つある」

★★ 脳を鍛える大人の名作読本 7 川島隆太 監修
タイトルを見てどの様になっているのか気になって図書館で借りた。
鈴木三重吉「黒髪」芥川龍之介「杜子春」林芙美子「旅情の海」が収録されている。
大判で活字がでかいこと以外、他の本と変わることはない。
やはり林芙美子の文は私には合わない。

★★ 眉山 さだまさし
久し振りの小説、198ページ、活字は詰まっていないが、一気に読んだ。
精霊流し、解夏、を映画で見て、さだまさし、単なる喋くりフォーク歌手ではないと思ったが、小説家としてはどうか。ストーリーテラーの才能は、あの喋くりと同じで、素晴らしい。テレビドラマを見ているような感じだった。

★★ 感動する英語! 近江誠
朗読・暗唱に適した英文集。CD付。

★★ ググる 津田大介
とても役に立ったというほどではないが、いろいろなやり方があるということが分かった。検索も奥が深い。必要な所は復習しなければならないだろう。便利コムで調べることが出来るが、携帯電話の番号で会社が分かる仕組みが面白かった。

★★ 痛快!経済学2 中谷巌
時々経済についてもっと知りたいと思うことがある。しかし、門外漢には手頃な本がない。以前、「痛快!経済学」を読んだ時も物足りなさを感じた。この本も、うたい文句にもかかわらず、半分ぐらいは同じような感じを持った。だんだん面白くなってはきたが、最後は経済よりは政治になってきた。(社会主義は政治か経済か?)“民間貯蓄超過−財政赤字=貿易サービス収支の黒字”これはもっと考えてみなければならない。

★★ 今さら他人には聞けない疑問650
広島市立図書館が蔵書をインターネットで検索し予約が出来るようになった。非常に便利だ。この本は、何かに面白いと書いてあり、このインターネット方式で借りた。実際に本を手にすると、予想していたものとは違っていた。「今さら他人には聞けない」ことはない疑問である。ちょっとした雑学、クイズで役に立つ知識、といったところか。隙間時間の読書にはいいので少しずつ読んでいる。二週間でよめるか?
継続して借りた。結局一ヶ月かかった。
マラソンの半端な距離の由来、結構複雑だったのだ。
集団討議の危険性、面白い。集団で討議すると議論が単純化され威勢のいい意見が通ってしまう。集団の中でリーダーシップのある人は往々にしてリスキーな意見の持ち主が多い。責任の拡散が起こる。

★★★ 鏡の中の左利き 吉村浩一
何故鏡に映すと左右だけが逆転するのか。昔からの謎だということだけは分かっていたが、この本を読み問題が単に物理的なものだけではないということがよく分かった。この手の本にしては判り易い文章で、とても読みやすかった。

★★ あらすじで読む日本の名著No.2 小川義男 編著
まえがきにも書いてあるように、本来これから読書をする若者向けに書かれたものであろうが、昔読んだ本を懐かしく思い出す中年おじさんにもそこそこ面白い本である。ちょっと前に読んだ本のことを忘れるぐらいだから当たり前だが、名著といえどもその内容は忘れているものですね。

★★★★ 翻訳夜話 村上春樹・柴田元幸
図書館で見つけた本。村上春樹がすきなのと、タイトルに惹かれて読み始めた。
それは目で見るリズムなんです。目で追ってるリズム。言葉でしゃべっているときのリズムとスピードと、目で見るときのスピードとは違うんです。だから、目でリズムを読まないと、口に出していたら、いつまでたっても文章のリズムって身につかないような気がする。
創作と翻訳。作家と翻訳家。面白い対照的な二人でした。

★★ 人の値段 考え方と計算 西村肇
内容はタイトルとは少し違っていて、人の功績の値段についてである。ほとんどは青色発行ダイオードの中村修二についてで、多少煩雑な記述はあるが、まあ読ませるものだった。以前本人の書いたものを読んだことがあるので、次は逆の立場のものを読んでみよう。

使うための大学受験英語 井上一馬
受験英語が諸悪の根源で実用的ではない、という相変わらずの主張。全体の9割ぐらいが入試問題の引用で、そちらの勉強にはなりました。

★★★ マインドマップ読書術 松山真之助
これはやってみようという気になる。書いてあるように、色んなことに役立つだろう。但し、本を読んでいるという楽しみは半減するのではないだろうか。

★★ メルマガ起業1年目の成功術 平野友朗
当たり前だが、これを読んだからメルマガがうまく行くわけではない。書いてあることはごもっともなことばかりで、技術論というよりは、精神論である。
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